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アリスが好きである。そりゃもうアリスグッズは幾らあっても良い。幸せになれる。それぐらい好きである。が、だからと言って、傾くには限度があると思っている。


私は自分の机に座り、じっと自分の卓上を眺めていた。机左側に溢れて居るのはアリスのグッズである。主に白うさぎのお着物二台、スノードーム二台、ポスカ入りポーチ一個、何処を見ても、白うさぎ、白うさぎ、白うさぎ、白うさぎである。頭おかしくなるぐらい白うさぎである。

私はそろそろ発狂してもいい良いのでは無かろうか?

「んぎーっ!!」

「おい!! うるせぇぞ!!」

ドアが突然開いたかと思えば、眉間に皺を寄せた瑠衣が入って来た。どうやら相当な爆音で叫んでいたらしく、何時もより皺が濃い。

瑠衣は私と目の前の卓上を見て、全てを察した様に頭を抱えた。それからぽつりと一言。

「遂に発狂したか……。お前、江戸川乱歩の鏡地獄になる前に、距離を置けよ」

「あ、そうではなく」

そう。そうではないのである。私が言いたいのはその世界に取り込まれてしまったという訳ではない。寧ろその逆。激しい違和感を覚えたからこその強烈な発狂である。

何処を見ても白うさぎ。視線ズラしても白うさぎ。はい。白うさぎ。頑張って正面向いて、漸くアリスと赤の女王に垣間見える。

「アリスの世界観が崩落してるんだよ。白うさぎに侵食されて」

アリスと言えば、アリス、白うさぎ、帽子屋、三月兎、ヤマネ、チェシャ猫、赤の女王、ハンプティダンプティ、トウィードルズ、等々数多のキャラが登場する。しかし今広がっているのは白うさぎの群れ。複数のカオスを構成する成分が明らかに欠落している。

「白うさぎに犯されて、アリスがほぼいない。帽子屋もいない。チェシャ猫も丘を超えなきゃいない。其れが何より気に入らない」

せめて、この間見掛けた白うさぎの置き台ぐらいは、帽子屋仲間であれよ。写真立てぐらいチェシャ猫使えよ。何故白うさぎ塗れなのか。

「白うさぎグッズ買うの辞めるかぁ……」

「なんだ潮時か」

「いんや? 滅茶苦茶お茶会の場面とかあれば手が伸びるね」

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