『万能漁師』スキルをもらってしまった俺、貞操逆転異世界に漂着したんだが~転生者は最強領地の主として快適なスローライフを送ろうとす~

りょうと かえ

1.異世界へ

 俺の名前は、水野祭みずの まつり


 どこにでもいる日本人だ。

 もう死んでしまったが。


 生まれてから身体も強くなく。

 通院続きで友達もいない。

 もちろん女性とも縁遠かった。


 ゲームやアニメが楽しみの人生。

 まぁ、エロい系統のである。

 だって男だもの。許してよ。


 最後は肺炎でぽっくり。

 34歳の短い人生を終えた。

 つまらないと言えばつまらない人生だったな。


 あれ。

 というか、俺は死んだはず。


 なんで意識があるんだ?


「新しい人生を歩みたいか?」


「えーと、あなたは?」


「神だ。君をスカウトしようと思ってね」


 姿は見えないが神々しい声。

 確かに神っぽいな。


「なぜ俺なんですか」


「エロいからだ」


「…………」


「ちょっとした危機で、女性ばかりの異世界があってね。

 男がいないわけじゃないんだが必要なんだ」


「貞操逆転世界ってやつですか」


 女性が男を求めてて、しかも女性のほうが多い世界。

 男が1人につき女性1万人とか。

 これはちょっと極端かもだが。

 夢のような世界だ。


「そうそう。当然だが、その世界では女は男に飢えている」


「ふむ…………ぜひ行きたいですね」


「ふふふ。君ならそう言ってくれると思ったよ」


 神様、そちも悪よのう。

 この神様とは気が合いそうだ。

 

「ついでに何か望みはあるかな。異世界に送るんだ。便宜を図ろう」


「えーと、めちゃくちゃ元気な身体とか」


 なにせ貞操逆転世界に行くんだから。

 体力的な問題はクリアしたい。


 一晩中、運動しても平気なように!

 徹夜もできると、なお良し。


 それに病弱だったから。

 異世界に行ってまで腹上死で死ぬとか嫌だ。


「君は病弱だったな。安心してくれ。絶倫だ。

 でないと困る場面もあるだろう」


「おー、さすが神様! 話がわかる!」


「他にはあるかな?」


「えーと、じゃあ…………」


 うーん。

 定番なら勇者とか王とか、だろうか。


 でも俺はそういうタイプの人間じゃない。

 歴史に名前を残すのは無理だ。


 もっと楽しそうで、生きている間にできなかったこと……。

 あ、ひとつあった。


「漁師をやりたいんですが」


「漁師。それはまたなぜ?」


「海鮮とか漁師とかのチャンネルをYouTubeでよく見てたんです。

 生きてる間は素潜りもできませんでしたけど……」


 それに健康の問題で寿司とかも制限されていた。


 まぐろ、食べたい。

 お腹がはちきれるぐらい、寿司食べたい。


 どうせなら異世界で漁師になって、浴びるほど海鮮を食べたい。


「ふむ……わかった。叶えよう」


「やった!」


「今、君に『万能漁師』のスキルを与えた」


 おおっ、デキる神様は速度が違う。


「ええと、それはどういう力なんでしょう?」


「釣り竿が欲しいと念じてみたまえ」


 言われた通りにすると右手に釣り竿がでてきた。

 最新式の高価な釣り竿。


 動画の広告で宣伝していたやつだ。

 テンションが上がってしまう。


「漁に使う道具を念じると、好きに出せる」


「なんでもですか?」


「そう、君のイメージ次第だ。

 邪魔な時は念じれば消える。出し入れ自由だ」


 念じてみる。

 釣り竿が消えた。


 もう一度、出したいと念じる。

 釣り竿が出てくる。


 これはとても便利だ。


「あとは溺れることがなくなる。

 水圧も無視できる」


「ほ、本当ですか?」


「あらゆる水は君に従い、君を傷つけることがない。

 水は常に君の味方だ」


「素晴らしい!」


「他に望みはあるかな?」


「ええと、もう大丈夫です。

 ありがとうございました」


「なんでもいいんだぞ。

 世界最強の力を振るってみたくはないか?

 魔術系はどうだ? 王とか勇者の力もあるぞ」


「ははは、俺は普通の日本人ですよ。

 そんな力を持っても使いこなせないです。

 無理のない範囲で異世界を生きますよ」


「…………」


「だからそういう世界を変えそうな力は、

 もっとふさわしい人にあげてください。

 俺はもうこれで十分すぎます」


「そうか。君を選んだのは、やはり間違いではなかった。

 よかろう。そろそろ君を異世界に送ろう」


「はい。ところで異世界に行ったらどうすれば?」


「特に任務というようなモノはない。

 向こうで君らしく生きてもらえれば良い」


 そうは言われても不安は残る。

 俺らしさと言えば、エロくらいしかない。


「不安そうだな。

 あえて言うなら、増えて満ちよだ」


 それってエロがオッケーということですか。

 ひゃっほう!


 空間全体に光が満ちる。

 全身が浮遊していくみたいだ。


 どうやら神様ともお別れのようだった。


「色々とありがとうございました。

 異世界で楽しく生きていきます」


「うむ、頑張るのだぞ」


「……また、あなたに会えますかね」


「相当、先のことになる」


 神様の声が遠ざかる。


「だが、心配はいらない。

 私は常にここにいる」


 全てが白い光に包まれ、消えた。



 目が覚めた時、俺がいたのは砂浜だった。


 穏やかな波の音。

 潮の匂い。


 白い砂浜とエメラルドグリーンの海。

 どこまでも広く、美しい。


 砂浜の後ろにはヤシの木が生えている。

 まさに南国。


 しばらく海を眺める。


 ……いいね。

 海はいい。


 そして、ぺたぺたと全身を触る。


 ……。


 アロハシャツにラフなズボン。

 動きやすい服装だった。

 これもサービスだろうか。


 そして息苦しくない。

 関節もどこも痛くない。


 健康そのもの。

 神様に感謝だ。


 スッと念じてみるともりが出てくる。

 魚に刺したりする漁師道具だ。


 重さを感じない。

 手に吸いついて、スイスイと動く。


 これならド素人の俺でも魚を捕まえられそうだ。


 とりあえずお腹が減った。

 早速、異世界の海に潜ってみよう。


 と、水中に映る自分の身体で気がついた。

 若返っている……!


 これは高校生、18歳くらいの俺だ。

 なんてこった。

 サービスが行き届きすぎている。


 再度、神様に感謝。


 さて、感謝を捧げていざ海へ。

 おっと、準備運動を忘れてはいけない。


 身体をほぐして、漁師生活スタートだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る