短歌連作「本日も晴天なり」

森野きさ

本日も晴天なり

本カバーかける手際のよさをみる支払い後の束の間の感心


あかるくて深追いしない夫まね 実父母の眉をひそませている


したしみをこめてかたらう姉だけど墓までもてる心もあって


繕った喉より紫煙漏れ遠くランドマークタワーは明滅


雷鳴は浪のしたまで轟いて 竜宮城にも春は来ますか


一族の期待に応えぬ娘とはかくもうらなきもののあつかい


田舎家の離れの庭に影ゆらす百合の白さのみ語りあった日


山迫る漁村でドールこしらえた大叔母の形見はティファニーでした


ゆきのした 生まれなければよかったと云わずに今日もごまかしており



—————————————

末尾注:

最終首は、吉田隼人『忘却のための試論』所収作品との対話を意識して制作した。

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短歌連作「本日も晴天なり」 森野きさ @kisamorino

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