ホムンクルス
滝上 龍成
第1話 魔法と創造
「──不合格ッ!!」
静かな一室に轟く怒号。
ポカンと目を点にしながら頭を四枚羽を生やした小さな蝙蝠の魔物に
少年の名は"アダム・クローレン"。
アカデミー卒業試験最中に落ちた事を目の前で担任の教師であり、試験官に知らされた。
──出来事は一五分前のこと。
自身が最も得意とする魔法を試験官に見せ、良しとされる出来栄えであれば合格。
出来が悪ければ言わずもがな不合格となる。
そんなアカデミーの卒業試験でアダムは召喚師として自身が使役する契約魔物を召喚。
しかし召喚した魔物は言う事を聞かない所か、術者に襲いかかり今の有様という事だ。
「アダム君…… 何度不合格になれば気が済むんですか?」
「俺だって好きで不合格になってる訳じゃねぇよ! ──てか、痛ぇな!!」
手で魔物を追い払い立ち上がるとズボンに付いた汚れを払った。
自宅に帰ると以前父が使っていた研究室に籠り、一冊の本を手にする。
ページ一枚一枚にはそれぞれの魔物に関する事が書き記してあり。
また違う本には今まで父が行ってきたのであろう、合成の録が書かれている。
アダムは今度こそはと意気込み、野生に住み着く魔物と契約し使役するのではなく。
自身の手で新たな魔物を作りだし、使役しようと試みる。
自身が合成の為に捕まえ使役している2種類の魔物。
毛並みが整えられ口からは鋭い歯が覗き、ピンと立つ耳と尻尾をもつ狼の魔物"ウルフェス"。
影が実体となりモヤのように上半身だけが立つ影の魔物"シャドー"。
この2体の魔物を解体、魔物の動力源であり人間で言う所の心臓にあたる
古びた大鍋にコアと解体した魔物の一部を入れ、じっくりと煮込み混ぜる。
契約者となる自身の血液と魔力を注ぎ込む。
しばらくすると大鍋が震えだし、中の液体が形を成していく。
「──出来たっ!」
先程の毛色は漆黒に染まり眼は黄色一色。
鋭い牙にピンと立つ耳と尻尾を残した黒狼の魔物"ブラックハウンド"。
「上手いこと躾さえ出来れば合格まったなしだろ。シャドーと同じランク二の魔物が手に入って良かったわ。あいつ捕まえるの苦労したもんな」
やれやれ、と首を振りながらも取り敢えず道具箱からゴムボールを持ち出し。
ブラックハウンドに向かって転がした。
ゴムボールにじゃれているのを他所に、何が出来るのかを考えると同時に。
今回の魔物はきちんと言う事を聞くのか否か。
これを知らなければまたも不合格になってしまう。
召喚師も一筋縄ではないなと、思う。
契約出来たからといって言う事を聞くのとは話は別。
契約した後が大変だったりする魔物もいるのだから。
特にランクの高い魔物はそうだし、強制契約した魔物なんかもそうだ。
どうしようか、と一人考え込む。
考えていると不意に肩をつつく感触を感じ、そちらを向く。
するとそこには黒く細い物がつついていた事を知り。
その黒いものはブラックハウンドの足元から伸びているものだと分かった。
「お前もしかして自分の影をコントロール出来るのか!」
思わず叫ぶと咥えていたゴムボールが床に落ち、尻尾を振りながらこちらに向かって返事をするかの様に軽く吠えた。
これなら!とブラックハウンドに抱きつき撫でくりまわしながら合格への光を見出す。
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