元PMCが転生したら、異世界の戦争が甘すぎた ― 異世界傭兵会社戦記:部隊編成から始める現代戦争 ―

羽蟲蛇 響太郎

プロローグ

戦争に、始まりはあっても、終わりはない。

少なくとも、俺の人生ではそうだった。


俺は民間軍事会社――PMCの請負兵だった。

国家でも正義でもなく、契約と報酬のために戦う人間。

砂漠、密林、瓦礫の都市。地図にも残らない紛争地で、数え切れない作戦に参加してきた。


英雄になったことはない。

生き残ったことはある。


その日も、いつもと同じだった。

情報は不完全、支援は限定的、撤退判断は遅い。

だが、それでも任務は遂行する。それが仕事だからだ。


爆発音。

通信断。

視界が白に染まる。


――ああ、やっぱりな。


最後に思ったのは後悔でも恐怖でもなく、

「撤退を五分早めていれば、全員生きて帰れた」という、ただの反省だった。


次に目を覚ました時、俺は草の上に倒れていた。


空はやけに青く、空気は不自然なほど澄んでいる。

耳に届くのは、銃声でも無線のノイズでもない、聞いたことのない言語の叫び声。


立ち上がり、周囲を見渡して、俺は理解した。


――戦争だ。


鎧姿の兵士たちが混乱し、統率のないまま突撃し、無駄に命を落としていく。

指揮系統は曖昧、連携は皆無、補給の概念すら怪しい。


その光景を見た瞬間、胸の奥で冷たい何かが静かに動いた。


甘い。

あまりにも、甘すぎる。


この世界にも戦争はある。

だが、戦争のやり方を誰も知らない。


俺は深く息を吸い、状況を整理する。

武器、人数、地形、指揮官の位置――

身体が勝手に、現代戦の思考へと切り替わっていく。


転生した?

異世界?

そんなことはどうでもいい。


戦場に立った以上、俺のやることは一つだけだ。


生き残り、勝ち、

そして――戦争を“仕事として”終わらせる。


これは、元PMCである俺が、

異世界に傭兵会社を作り、

戦争の常識そのものを書き換えていく物語だ。

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