羅刹

すずりはさくらの本棚

羅刹

羅生門には人影はない。居ても一人二人。


下人の姿はまだない。


寒くなったなー……


丸で下人が費やした時間を大義名分のごとく慕う。


茹で上がったばかりの海老。


脳みそは忙しそうだ。


そこへ下人がやってきた。


聳え立つ羅生門。寒々しく健気だ。


下人は欠伸を一つした。色艶の良い袴。


おそらくは、五つ色の一人。


何だよ金無しかよ……。


金はあろうが頬に紅も塗れぬ。


無に帰すとはこのことか。


所詮は前座なんだよ。


刀傷のある下人。おそらく切られたのだろう。


婆がのぞいている。


ゴリアテが婆の首を狙い撃ちしている。


地球とはそういうものなのだろう。


下人はそう想像するといたたまれなかった。


下人が消えた先は心の闇。


婆を見、獣を見た先が、罪だというなればそうなのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

羅刹 すずりはさくらの本棚 @meikyu-0521

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る