愛する貴方と、いつか無くなるかもしれない私
@nemurihime8621
序章
私には同い年のお嫁ちゃんがいる。
少し天然で、おっちょこちょいで、いつも笑っている。いつも私を笑顔にしてくれる、大好きで、愛している人だ。
ただ、最近、どこか様子がおかしい。
ぼーっとしている時間が増えたり、何を言おうとしていたのかを途中で忘れたりする。お嫁ちゃんのことだから、と最初は思った。少し違和感はあったけれど、「まぁこんなもんか」と、私はそのまま流していた。
けれどある日、冷蔵庫を開けて、言葉を失った。
同じ食材が、いくつも並んでいる。
お嫁ちゃんには、言いにくい。
それでも病院に、連れて行った方がいいのかもしれない。
お嫁ちゃんにそれとなく話すと、「大丈夫だよ」「気にしすぎ」と、いつもの笑顔で笑われた。
納得していないのは、声の調子でわかった。
それでも私は、何度も言った。
責めるつもりなんてないこと、心配しているだけだということ。
最初は不機嫌そうに目を逸らしていたお嫁ちゃんも、最後には「そんなに言うなら……」と、小さくため息をついた。
病院の待合室は、静かだった。
お嫁ちゃんは落ち着かない様子で、指先をもぞもぞと動かしている。私は隣に座り、何も言わず、その手を握った。
診察室で、医者の口から出た言葉は、思っていたよりもはっきりしていた。
「若年性アルツハイマーです。」
一瞬、意味が理解できなかった。
お嫁ちゃんは「え?」とだけ言って、きょとんとした顔をしたまま固まっていた。
私にはただ、その笑顔が、少し震えて見えた。
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