激レアシール

猫ララ

 激レアシール

 大人になっても、私にはどうしても忘れることが出来ない思い出があります。


 それは、私が小学四年生の時に体験した不思議な出来事です。


 今でも、その不思議な出来事が忘れられず、私の記憶の中に鮮明に残っているので、今回お話したいと思います。


 私のおじいちゃんは、農業をしています。


 収穫した野菜を市場に持って行くのですが、形のそろわない不格好な野菜は、食べられるので、安い価格で近所にある無人販売所に置いて行きます。


 でも、悪い人がいるらしく、お金を料金箱に入れずに野菜を全部持っていく人が現れたので、おじいちゃんが凄く怒ってしまいました。


 私はゆで卵を食べる時、白い卵と赤い卵のどちらを食べても、味は変わらないと思うのですが、どうしても赤い卵の方が高価に見えるのです。


 おじいちゃんは、よく近所の友人を自宅に招き、お酒を飲みながらお話をしています。


 ある日、近所にある電器屋さんのおじいさんと養鶏場を営むおじいさんが、私のおじいちゃんの家で、一緒にお酒を飲んで話し合いをしていました。


 私も近くで、お菓子を食べながら話を聞いていました。


「まったく、最近、金を払わず、野菜を全部持っていく泥棒が現れたので困っておるんだが、何か良い対策は無いかのー」


「それじゃあ、うちの商品に防犯カメラがあるから、それを使えば分かると思うぞ」


「そんな、大げさな事をすると、余計に高くつくわい。野菜一袋百円だぞ」


「それじゃあ、俺の家に古い卵が残っているから、そいつを野菜と一緒に無人販売所に並べておけば、それも一緒に持っていくだろうよ、かなり欲深い奴なんだろう。そいつを食べて腹を壊せば、さすがにりるだろうよ」


「おお、それは良いアイデアじゃのう。一つ試してみるか」


 私は、三人が酔っぱらって話をしているすぐそばで、クスクスと笑っていた。


 次の日、おじいちゃんがフルーツを入れるかごの中に、細かく刻んだわらを敷き詰め、その上に赤みがかった、例の古い卵を置いた。


「この卵がちゃんと高級品に見えるように、私が大事にしている激レアシールを貼ってあげる」


 私は、お菓子のおまけに付いてきた、ピカピカ光る激レアシールを籠の持ち手の部分にがれないように強く貼り付けた。


 そして、この泥棒をらしめる作戦は実行されたのです。


 ――作戦は大成功しました。


 おじいちゃん達が、泥棒が自分達の罠にまんまと引っかかったと喜んでいました。


 早速、この作戦の成功を祝して、自宅で宴会の準備をしている時、悪い知らせが届いたのです。


 何と、養鶏場のおじいさんの家に深夜、強盗が入ったという電話が、かかってきたのです。


 私とおじいちゃんは、電器屋さんのおじいさんと一緒に、急いで自動車に乗り、養鶏場に向かいました。


 養鶏場のおじいさんは、大きな被害が出なくて良かったと話してくれたので、私達三人は安心しました。


 その帰り道、安心した私は、お腹がいたのでラーメン屋さんに寄りたいとおじいちゃんにお願いをしました。


 三人がラーメンを注文して、待っている間、お店に置いてあるテレビを見ていると、ビックリするニュースが流れてきたのです。


 なんと、強盗犯がスピード逮捕されたのです。


 私達三人はラーメンを注文した事を忘れて、流れてくる映像に釘付けになりました。


 強盗犯が逮捕された場所は、そこから少し離れたレストランでした。


 驚いた事にそのレストランで食中毒が発生して、強盗犯がお腹を壊してしまい、救急車で病院に運ばれる際、証拠が見つかり、逮捕につながったとニュースで放送されたのです。


 この話は、マスコミに大きく取り上げられ、食中毒を起こした店内の様子が報道番組の特集で撮影され、その時の映像が詳しくテレビの画面に映りました。


 その時、テレビで放送された映像の中に見覚えのある籠を見つけたのです。


 籠にピカピカ光る激レアシールが貼ってあったので、私はすぐ気が付きました。


 その事件が無事解決した後、おじいちゃん達は宴会を開いて大騒ぎをしました。


 私もジュースを飲みながら、一緒に大騒ぎしました。


 ――お正月になり、おじいちゃんから、手渡されたお年玉の金額に私はビックリしました。


 何と、一万円札が三枚も入っていたのです。


 おじいちゃんが、私にお年玉を渡す時に言った言葉を今も、はっきりと覚えています。


「ひな子、お前が貼ってくれた、激レアシールが大活躍だったぞ」


 私はスーパーで卵を見かけたとき、当時の出来事を思い出して、笑ってしまう事があります。



 

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激レアシール 猫ララ @nekorara

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