ある嘘つき猫の話
倉澤ちえ
ある嘘つき猫の話
そこにいる猫さんたちの心と毛並みは、とてもきれいでした。
何故なら、この世界で嘘をつくと自慢の美しい毛色が濁ると、誰もが知っているからです。
そのため猫さんたちは、正直に、素直に、真面目に生きることを何より大切にしていました。自分の毛並み、外見の美しさは、心の美しさを表すものであり、真っ直ぐに生きてきた自分の生き方の証だったからです。
当然その世界に毛色の濁った猫さんはほとんどおらず、誰かの毛色が少しでも濁っていると、他の猫さんは「ああ、あの子は嘘つきなのだ」と思われることが普通でした。
そんな世界に、たったひとり、酷く毛色の濁った猫さんがいました。
当然他の猫さんたちは、その毛色の濁った猫さんを敬遠し、見かけるたびに「また、こないだよりももっと濁っている」と嫌な顔をして囁き合い、近寄ろうとする大人の猫さんはいませんでした。
ただ、不思議と、その猫さんは幼い子どもの猫さんたちには好かれていました。
きっと子どもの猫さんたちは、嘘をつくと毛色が濁ることを知ってはいても、きちんと理解していないからでしょう。子猫さんは、道を歩くその猫さんを見かけると、駆け足で無邪気に飛びついたりすることも珍しくありませんでしたが、その子猫さんの親猫さんたちはいつもそれに気づくと無理矢理子猫さんを引っぱって家に連れ帰る、なんてこともよくありました。
そんな日々の、ある雨の日のことです。
まだ幼い子猫さんは、母猫さんから「濡れたら風邪をひくし、もし泥がはねたらせっかくのあなたのきれいな毛並みが汚れてしまうから、外に出てはダメよ」ときつく言われていました。
けれど好奇心旺盛な年頃だった子猫さんは、注意されることでかえって余計に外に出てみたくなってしまいました。そして、母猫さんに気づかれないように、こっそり家を抜け出して、人の少ない雨の外へ飛び出していきました。
子猫さんはしばらく、初めての雨の中を走り回りました。その日の雨はとても静かで、ともすれば恵みの優しさを感じさせるような柔らかなふり方だったので、子猫さんはどんどん楽しくなって、雨の中ではしゃいでいました。
けれど、やはり雨は冷たくて、子猫さんはくしゅんと小さくくしゃみをしました。
その瞬間です。子猫さんはつい足を滑らせて、泥だらけの水たまりの中にばしゃんと倒れて転んでしまいました。
水たまりのひんやりした感触と、驚きと、少しの怖さで、子猫さんの目には涙がいっぱいに溜まりましたが、雨なのでそれに気づく者もおりませんでした。
けれど、そんな中で、毛色の濁った猫さんは蹲って小さく泣いている子猫さんのそばを、たまたま通りかかりました。嫌われ者の毛色の濁った猫さんは、自分を見たら他の大人の猫さんが嫌な思いをするだろうと、誰もが家の中から出たがらない雨の日などに何かしらの用事を済ますことが多かったからでした。
その猫さんが近くに来るだけで大人の猫さんたちは眉をしかめたりするものですが、子猫さんはやはり逃げませんでした。
怖くなかったのです。
「大丈夫?」
優しくしゃがんで毛色の濁った猫さんが子猫さんに話しかけると、子猫さんは抱き着いて泣きながら言いました。
「ママに、お外には出てはダメって、ぼく言われてたの。でも、約束を破っちゃったから、きっとぼくの毛並みは汚れちゃったんだね。どうしよう、怒られるよね、ううん、もしかしてぼくママに嫌われちゃうかもしれない!」
そう吐露して大泣きする子猫さんの背中を、毛色の濁った猫さんは優しく撫でてから、抱き上げました。
「大丈夫、汚れは落ちるよ。こんな泥くらいで、きみは汚れてなんかないよ。よく正直にお話してくれたね」
毛色の濁った猫さんは、慈しむようなあたたかな声音でそう言いました。
「きれいになったら、きみのママにちゃんと、ごめんなさいできそう?」
「……する。しなきゃぼくの毛色は濁って、きっと、ママをもっと悲しませちゃうから。…………でも今日は、まだ、こわい……」
「そうだね。……うん。じゃあ今日は、ぼくが内緒にしておくよ」
そう笑顔で約束すると、毛色の濁った猫さんは、濡れて泥だらけの子猫さんを自分のおうちに一度連れて行き、温かいお湯で汚れを落とし、清潔なタオルで子猫さんの毛並みを拭いてきれいにしてあげました。
そして、また濡れないように、タオルにくるんだままもう一度子猫さんを抱っこして、子猫さんのおうちまで送ってくれました。
すると子猫さんのおうちの近くは、少し騒然としていました。
数名の大人の猫さんたちが、濡れるのも構わずきょろきょろと辺りを見回しながら、走り回っていたのです。
そしてその内のひとりが、子猫さんを抱いた毛色の濁った猫さんを見つけると、「いた!!!」と大きな声でふたりを指さして叫びました。
その声に気付いた大人の猫さんたちは、毛色の濁った猫さんを取り囲み、奪うように子猫さんをその腕から無理矢理引き離しました。
「おまえ! 嘘をつくだけじゃ飽き足らず、こんな小さい子を誘拐でもしようとしたのか!?」
「坊や! 大丈夫!? ママが来たからもう安心よ、ほら、こっちにおいで!」
そうして母猫さんの腕の中におさまった子猫さんは、「ちがう、ちがうよ! ぼくが……、」ととっさに言おうとしましたが、目の端で毛色の濁った猫さんが人差し指を口の前で立てて、しー、とジェスチャーしたのが目に留まりました。
そうして、毛色の濁った猫さんは何も言わず静かに頭を下げました。
けれど、大切な子どもをかどわかしたと思い込んでいる母猫さんは、強い口調で毛色の濁った猫さんに怒鳴りつけました。
「あなたがこの子を外に出るようそそのかしたのね!? あちらこちらで嘘をつくだけでは飽き足らず! こんなまだ善悪もわからないような幼い子を!!」
そう母猫さんに大声で罵られた毛色の濁った猫さんは、しかし一言も言い訳せず、ただ「はい。……すみませんでした。」と頭を下げたまま言いました。
その瞬間です。下げられた頭の左耳あたりが、少しだけまた濁りました。
それを見た大人の猫さんたちは、「また毛並みが汚くなった!」「けがらわしい!」「やっぱりおまえか!」と糾弾しました。
けれど毛色の濁った猫さんは、一言も言い訳することなく、深々と頭を下げしばらくしたのち、「迷惑をおかけしてごめんなさい」とだけ、言いました。同時に、今度はそのしっぽの先は濁りました。
それに気づかないままの母猫さんに抱きしめられている子猫さんは、何か言わなければと思いつつも、何と言ったらいいかもわからないで、その間に母猫さんにおうちの中へ連れて行かれました。
他の大人の猫さんたちも、がみがみと文句を言いながら、その場を離れていきました。
最後まで、毛色の濁った猫さんは頭を下げ続けていましたが、やがて誰もいなくなると、自分もその場を去りました。
それらを、少し遠くから一部始終見ていたとある青年の猫さんは、けれど何かがおかしいと感じていました。
その出来事はすぐに噂として広まりました。
「また嘘をついたらしい」
「毛色が濁るのを目の前で何人も見たそうだ」
「よく大勢の前でそんな恥知らずなことできるな」
「今度は子どもを誘拐しようとしたんだって」
「酷い話ね!」
「ほら見なさい、あの毛並みが証拠よ」
その影響で、幼い猫さんたちが毛色の濁った猫さんに近づこうとすると、大人の猫さんは慌てて子どもの腕を引き寄せたり、険しい顔で「やめなさい」と言い聞かせたりするようになりました。
それでも、幼い猫さんたちは諦めませんでした。
大人の目を盗んでは、そっと毛色の濁った猫さんの方へ歩き、無邪気に話しかけようとします。
「ねえ、また遊んでくれる?」
そう子どもの猫さんに訊かれるたび、毛色の濁った猫さんは、困ったように微笑みます。
大人の猫さんたちは、その様子を遠くから見て、ひそひそと囁き合いました。
「まったく……どうして子どもたちはあんなやつに懐くんだろう」
「きっと、あの汚れた毛並みが物珍しいんでしょ」
そうやって見る大人の猫さんたちの目は冷たく、けれど子どもたちが向ける視線だけは、どこまでもあたたかくまっすぐでした。
数日後、雨の中で毛色の濁った猫さんに助けられた子猫さんは、結局風邪をひいてしまいました。そしてベッドの中で、周囲の誤解を解くだけの体力もなく、また寝込んでいたために誤解が酷な噂として広まっていること自体も、ほとんど知らないままでした。
雨の中に紛れて自分の子どもが誘拐されかけたと思い込んでいる母猫さんは、心配で、ずっとつきっきりで子猫さんの看病をしていました。
夜中に子猫さんの咳が続くのが聞こえれば、飛び起きて暖かいミルクを用意したりと、自分の睡眠不足も厭わず本当に一生懸命、子猫さんの世話に明け暮れていました。
そして、そのおかげもあり子猫さんの熱もある程度さがった頃、お友達の猫さんや心配した近所の大人の猫さんたちが、お見舞いに集まっていました。
その中のひとりの猫さんが、子猫さんが高熱でうなされている間に、母親がどれだけ自分自身を顧みず朝から晩まで看病してくれていたかを雑談のついでに話しました。そうして、「もうこれ以上心配をかけちゃだめだぞ」、と言って、続けてだから例の毛色の濁った猫さんには近づかないように、と言おうとしました。
けれど、普段はどちらかというと厳しめの躾で我が子を育てていた母猫さんは、自分が誘拐されかけ高熱を出した子どもを前に右往左往していたことを話題にされたのが恥ずかしくて、その発言をした猫さんの足を思いきり踏んだため、その後の言葉は発される前に消えました。
しかし子猫さんは、いつも口うるさいと少々煩わしく思っていた母猫さんのあからさまな愛情にびっくりして、目を丸くして言葉がすぐには出ませんでした。
そして、「そろそろみんな帰ってくださいな! まだこの子の熱は下がりきってないのよ!!」と顔を赤くしながらも、まだ自分の心配をしてくれる母猫さんに、子猫さんはそれ以上黙っていることはできませんでした。
そもそもが、子猫さんは母親の言いつけを聞かず自分の意思で雨の中に遊びに出ていたのが悪いのだと、本人だけはわかっていたからです。
「ママ、一生懸命看病してくれてありがとう。でもぼくもう元気だよ! だからママも休んでよ!」
子猫さんは熱の下がっていない赤い顔で、出来る限り強がった言葉で少しでも母親を安心させようとぐっと片手で握りこぶしを作って言いました。
その瞬間です。
子猫さんの手首のあたりが、滲むように色を変え、濁ってしまいました。
その瞬間、部屋の空気が止まりました。
「……あれ?」
その声は、誰の声だったのでしょうか。それは誰にもわかりませんでした。何故なら、みんながそう、同じことを思ったからです。
「毛色が濁った……」
「嘘……をついたから……?」
「でもこの子は、母親を少しでも安心させたくて言っただけじゃないか」
「嘘は嘘で、……え? 今、この子が悪いことをしたっていうの?」
「……いや、ダメだ、嘘は悪いことって決まってる」
「そうよ、だから嘘をついたら毛色が濁るんだって……」
「でも、……ただ優しい言葉だったのに、」
「嘘に良い悪いなんて……あるの?」
「良い嘘なんて……だって今更認めたら、何が本当かわからなくなるじゃないか」
「そうだ、嘘は悪いんだ、だって嘘なんだから、そうじゃなきゃ、……おかしいだろう、」
場は静かでありながら重く低い声の議論で大荒れになりました。
そんな混乱の中で、自分の心配をしたために毛色を濁らせた我が子を抱きしめた母猫さんは、叫びました。
「この子は悪いことなんてひとつもしてません! この子は、この子は自分が苦しいのに私の心配をしてくれた優しい私の子よ! 悪く言わないで!!!」
誰もが困惑のあまり大きな声を出せず、戸惑いの渦中の独り言のような言い合いになっていたため、母猫さんのその心からの声に誰もが喉を詰まらせました。
その一瞬の静寂の中で、母親の腕の中の子猫さんだけが、少しまだかすれている声で言いました。
「ママ……ありがとう。それから、……ごめんなさい、あのね、雨の中に勝手に出て行ったのは、ぼくだったんだよ。ぼくの意思だったんだ。雨粒が、水たまりにはねて、水音がきれいで、楽しそうで、ついお外に出ちゃったの。でもね、ぼくママの言いつけを守らない悪い子だったから、泥水の中で転んじゃって……。汚れちゃったんだけど、そしたらいつも遊んでくれるあの優しい猫さんが、通りかかって、ぼくをきれいにしてくれて、おうちまで送ってくれたんだ。本当のこと、すぐ言えなくて、ごめんなさい。風邪をひいて、ママに迷惑かけた。きっとぼくが悪い子だったから、神様を怒らせちゃったんだ」
まだ若干荒い呼吸で、でも精一杯の勇気と声で、全部を打ち明けた子猫さんの毛色に、――――それ以上変化はありませんでした。
毛色の濁った猫さんは、町の隅とすら呼べないような、森の外れ近くの静かな場所に暮らしていました。
自分の毛並みを見るたび、他の猫さんが顔をしかめるのを知っていたからです。
そのため、必要なもの以外は自分で育て、釣りをして暮らしていました。
そしてどうしても手に入らないものだけ、雨の日や強風の日を選んで町へ向かうのでした。
けれどそんな生活がかえって子猫さんたちの好奇心をくすぐってしまいました。釣り、草の見分け方、自給自足。
その猫さんにとってはただの生活でも、子猫さんたちにとっては小さな冒険のようでした。
大人の猫さんたちの多くは、彼の住む場所を知りません。
子猫さんたちは黙っていたのです。
叱られたくなかったから。そして、邪魔されたくなかったから。
その日も、毛色の濁った猫さんは川辺で釣り糸を垂らし、日差しの中でうとうとしていました。
そんな時です。後ろから不意に声がかかりました。
「こんにちは、嘘つき猫さん。」
毛色の濁った猫さんがびっくりして釣り竿を片手に持ち替えて振り返ると、ある若い青年の猫さんがいつの間にか立っていました。
「……こんにちは。」
相手の意図が分からず、困惑気味に毛色の濁った猫さんが返します。
「あなたにひとつ、おうかがいしたいことがある」
「ぼくに答えられる範囲であれば」
「あなたが一番初めについた嘘は、何だったのですか? そこまで毛並みが色んな色でぐちゃぐちゃに濁る前、最初についた嘘を教えて頂きたい」
その猫さんは、例の雨の日、不可解な違和感に気付いた唯一の猫さんでした。また、彼はその雨のせいで風邪をひいた子猫さんのお見舞いにも同行していたひとりでした。
「……面白くないですよ」
「構いません」
「――――おなかを空かせていたんです、」
毛色の濁った猫さんは、ゆっくり目を閉じました。
「おなかが空いていたから、嘘をついて食べ物をもらったのですか?」
「いいえ。おなかを空かせていたのは――――ぼくが昔住んでいた長屋の、隣のおばあさんですよ」
「……そうですか、」
もう、その青年の猫さんは、真実に気付いていました。釣り竿を片手に持ったまま、そのことも毛色の濁った猫さんは察して、苦笑しました。
「ある年ね。冬が長引いて、食べるものがなかった。ぼくの家にも、その日はパンが一切れしかなかったけれど……ぼくは言ったんです。『今日はもう、ぼくはお腹いっぱいだから』って。本当は空っぽだったのにね。そうしたら、ぼくの右目のあたりの毛色が色を変えてしまって」
苦く笑いながらも淡々と、毛色の濁った猫さんは続けます。
「それを見たおばあさんには泣かれました。でも、なんだかぼくはその日、どうしてもそうしなきゃいけない気がして」
虫の知らせと言うのでしょうか。聞けば次の日、ちょうど娘さんが様子を見に来て、やせ細った母を見て驚いて、引き取られる形で大分遠い村に引っ越してしまわれましたが、と、毛色の濁った猫さんは結末までを簡素に語りました。
「……疑問が解決したなら、帰った方がいい。ぼくと一緒にいると、あなたも悪く思われますよ。まして、あなたの歳では子どもの悪戯だと赦してもらうのも難しいでしょう」
そこまで言って、釣り竿を両手に持ち直そうとしたその瞬間――――
「だから言ったでしょ!!!!!」
という子どもの甲高い声が上がり、木々の間からわらわらと子猫さんたちと、それに手を引かれるようにしてその親猫さんたちがばつの悪い顔で現れたので、毛色の濁った猫さんはそれはもう驚きました。
「この猫さん、一度だって自分のために嘘をついたことなんてないんだから!」
「なんで毛色が混ざってると悪いになるの?」
「こないだだって、階段から落ちかけた私の手をつかんで無理矢理引っ張り上げてくれて、代わりに階段から落ちて大きなこぶを作っといて、『全然痛くないから大丈夫』なんて見え見えの嘘をついて笑ってくれたのよ!」
「私も、みんなで少しでも恩返しがしたくてケーキを作ったけど、うまくいかなくて、全然おいしくない生焼けだったのに、『すごくおいしいよ!』って、食べてくれたんだよ!……次の日、お腹壊してたけど……」
今まで言いたくて言いたくて仕方なかったとばかりに、エネルギーに溢れた子猫さんたちがあれやこれやと、次々数えるのも面倒になるような“優しい嘘”を暴露しては主張します。
そして最初は目を白黒させていた毛色の濁った猫さんですが、深呼吸して少し落ち着きを取り戻すと、困ったように眉を下げて言いました。
「ありがとう。でもね、嘘は嘘に変わりないんだよ。そこを間違えてはいけない」
泣きながら、ありがとうともごめんなさいとも言わず、あるいは言えず、一切れのパンを食べてくれたおばあさん猫の大粒の涙が、一瞬その猫さんの脳裏を横切りました。
「でもあなたは――――誰より嘘つきかもしれないけど、誰より優しいんだ」
そう、ぽつりと病み上がりの子猫さんがつぶやくと、他の年若い猫さんはみんなで大きく頷きます。その背後で、大人の猫さんたちは気まずさと戸惑いを抱えたまま立ち尽くしていました。
その時、釣り竿が急にしなりました。
バシャッと水面が思いきり割れ、それはそれは大きな魚が跳ね上がりました。
太陽の光を受けた水しぶきが弾け、いろんな色で濁っていた毛並みは一瞬、あらゆる色を集めた宝石のような――――この世の何よりもきれいな虹色に見えました。
誰もしゃべりませんでした。
言葉で表現するのが野暮なほど、それは美しかったのです。
「――――やっぱりあなたは、全部“きれい”でできてるじゃない、」
ぽつりと、誰か少女の猫さんの声が響きました。
毛色の濁った猫さんは、大きく目を見開いて、水に濡れまだ若干光を放つ自分の毛並みに触れました。
けれど、誰より優しく、きれいで、でも嘘つきの猫さんは――――
「……嘘は、嘘のままですよ。」
と、そっと返しただけでした。
END
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