第3話
「そう、私についてらっしゃいっ! キミならこれがやれるわ、私が保証してあげるっ……」
「そう、そうね……。今は苦手かもしれない。でも良いのよ良いわ――、もう少し頑張りましょうか。だって私はアナタを誰よりも理解してるのよ――」
たくさんの子供を弟子にした。そしてたくさんが逃げ出した。私のあだ名は多干渉生物、子供においての闇。筋肉師匠。心に這い寄る悪夢とあだ名され。
だがその後もメゲないし挫けない。むしろスパルタだという事と、そうして結果を出す事をセットにするべきだと認識。年齢ももう問わなかった。
「はいはい、そう……。そうだわ、先輩、でももう一回頑張ろうか――」
私はほとんど彼らとの時間に費やした。無理に優しくしたりすると疲れるから、だから選別する事を覚える。彼らが野盗に出会うまでの時間は有限だ、魔物の食料になるまでが勝負だ。そして考えれば考えるほど根暗の性格もが顔を出して、だが……。
「あぁ……あの、僕らも一緒して良いですか、僕ら本気で学びたいんです」「お願いします……っ 俺らこの田舎で終わりたくねぇ!」
一応弟子の枠は1つなのだけれど。
噂を聞きつけて支援を求められる事も多かった。しょうがないので面倒見ていたら大勢が私の元へ来た。
それで育てていくならもっとだ、もっとしっかりと自分が強くある事が必要と思う。
ダンジョンは非常に怖い、それは普通の生活の中でも学べたし、農作業が辛いことも。子供はどうやって飢え死ぬかも、それか貴族に踏みにじられるのかも。
このスキルのせいでよく似た人間が出来上がってしまう事も悩ませ「そう……、これは長所だけを伸ばすには最高に適した能力だけれども、実戦に対してやや不向きかしら」
剣には剣を、魔法には魔法だけ。それでは完全なパワー頼みになりやすい。汗を流す、時が過ぎて行く。
「なぁ……、やっぱあの師匠しかないか……」「あぁ、あの人はすごいよなぁ、かなり教え上手なんだよなぁ~……」「精霊法も剣も魔法もさぁ、あの人の元で教わると確実に強くなるし、何よりヤル気ださせるんだよ、しかもアレはあんな―――」
同年代でアレってさ。
でも貫禄って言うんだろ、それで可愛すぎて……。あぁ師匠だ、アレはもう師匠だよぉ……。
子供たちの声が聞こえる。正直、ちょうど良いポジションに座る位ならばもうしっかり大人扱いが良い。だって好機の目すらも超えていける。もう決して他人に左右されずに。
「そう……、とりあえず日課の方はして来たのかしら、アデマイア」「はいお姉さま」「ウソおっしゃい――」
ぺちん。「うぅぅ、なんで分かるんですかぁ、いつもいっつも、ゼッタイ分かる訳がないんですよぉ!」
「そう……、だけどね、私は師匠の星に生まれたから。だから弟子のやってる事は全てお見通しなのよ、30点よ」
貴族だろうが泣いても容赦しない。努力しないとレベルが上がらない、そんな当たり前の事を痛感させられるのだ。その嫌がる弟子の目を見つめる。
落ち着いた吐息で揺るがず、淡くとも根底がしっかりとしてる綺麗な声、大人びた目線。「じゃあ、良い。努力しないなら破門します。だってアナタはアナタの為に戦うから、夢よ……未来なのよ、この閉塞感の世界から抜け出すのはアナタ次第だからね――」
そう言うと、しっかりと仕事をしてきた。無駄にデカいそのおっぱいは何気に同性にも効くと認識したのもこの頃。かなり地味な筋力トレーニングの連続、それでもこなしただけは上がる。私が強くなるのだから間違いないのよ。
「そう……良いわ、すっごく良いのよ。この力が上がる瞬間が。私の師匠としての真価が示された気持ちになれるから」
だから愛おしい。だから大切にしたくなる。
「いかに効率的に強くするべきか、大事よね――」
ぶつぶつと言いながら他人の筋肉と人生のことを考え続ける、そんな日々を続ける。年齢を重ねていく。日曜学校にも通えるお金持ちの私は恵まれていると思う、器具を使えて。
「あら……師匠さ、いえ、青少年・育成部長さんごきげんよう……」
その言葉に清楚に返す私。ご学友にも師匠と呼ばれるのはさすがに変人過ぎるので友達からは部長と呼んでもらってるの。前はヒラに近かったし良い気持ちだ。
それでも取り立てたワケもなく小さな少年少女を引き連れているのは少し、妙な感じだったかもだけれど。
「そう……、今日はどうやって鍛えようかしら。あぁでもご両親がいない子よね……、懐かれててもヘンリーは私のスキル外で。あまり利益はないのだけれど、まぁでも……」良いかしら。
あともう一人は問題児だと、「才能はあるのに仕事をしないのよね。ただ突き放すのも……、この子は明らかに家の方が問題で」
「ねぇねぇねぇ、あのさ~っ、部長ってさ~、ずぅっと誰かの面倒見てるわよね、しんどくないのぉ?」「えぇ、楽しい。楽しいから」
「でもアナタかなり恵まれているのだから、だからもう少しは周りの男の子を見るべきよ」
「そうよそうよぉ。もうなんかキモイのよね……。何よアレ、同年代女子に踏まれたい~なんて、少し全員ねじ曲がって来てるわ」
アンタのせいでぇ……。
「うん――。そう、まぁ……ふふふ。私はあんまり男性とはね。ごめんなさい。だって今は充実してるから、たくさ」
干物、子沢山ババァ――。
シュババ―――――。
「ひ、ひぃいいいいいいい!?」
シュバっ、シュババババ―――。加速、加速、ひたすらご自慢のレアスキルで逃避!
筋肉筋肉、筋肉、怒りに燃えし筋肉のみぃ―――ッ!
ばきぃ!
はぁ……はぁ……、と いう訳でですわね、わたくしの師匠道は順調に推移しておりますわ。
そして運命――。
この世界で高校となるもの、王都への進学。それは選ばれし者だけの道で、だけどもただの通過点。
だがそうそれが運命になるだなんて――。
師匠たる私の……この2度目の人生を決める時が迫っていたから。
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