ひかりさす
成城諄亮
第1話
「そっか。よかったな」俺はいった。
「なんで他人事なの。
汐恩は俺の目を見て、確かにそういった。
「俺と、汐恩の……、こども……?」
「そうだよね、驚いちゃう……よね」
俺も、汐恩も、少しばかり黙ってしまった。
「あのさ……汐恩って……男、だよな……?」
「……」
「なぁ、男なんだろ?」
「……男、だよ」
「じゃあ何で男の汐恩が妊娠なんか――」
「産まれたときは、女だった、から」
「……は、なにそれ。汐恩は男だろ。女なわけ……」
「これ見ても、そういえる?」
汐恩は、俺に向かって一枚の写真を見せてきた。フリルが付いた服を着た子どもが、不機嫌な顔で写っている。「汐恩、1歳おめでとう」という文字とともに。
「は、なに。なんの冗談?」
「倫ちゃんと出会ったときは、治療初めて一年が経過してたから。信じられない気持ちも、分かるよ」
「じゃあ、なんで子宮残してんだよ」
「好きな人との子ども、欲しいと思ってたから」
頬を紅潮させた汐恩は、やっぱり俺の知っている汐恩だ。なのに。
「騙してたのかよ、ずっと」
「騙したんじゃないって。いつか、本当のこと話さなきゃって、思ってた」
「それが今かよ。ふざけんな。意味わかんねえよ、まじで」
「倫ちゃん……」
「ごめん、先寝る」
「……そっか」
寂しげな空気を遮るように、俺は寝室のドアをばたりと閉めた。
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