4時まで耐えれたならば

30XX年、私たちは大嫌いな大人の所為で2つのグループに分断された。ここまでは知ってますよね？

私はそのせいで弟と離別してしまった。

似たような被害にあった人たちで互いを慰めあう事もあった。

2年生宛に金、1年生宛に毒が与えられた。

廊下を見渡せばゴミかのようにちらほら落ちている。

理科室に生徒が駆け込んでくればこの解毒剤を処方する。

ここまでかなり説明口調になったけど分かりますかね、先生？因みにこれが解毒薬です。

調合の仕方はパソコンのバックアップにあるかと。

はい、私も、弟を含めた数人を地獄へたたき落としました。逆に落とされそうになったことも百を超えていますが。

お互い、初めは抵抗があったんですけど、今はもう義務感で殺しあってしまってるみたいで。

まぁ実績によってボーナスも出るから一部の人は熱心らしいですが。

あ、援軍の要請が来たので少し失礼しますね。

ええ死ぬようなヘマはしませんよ。

先生、…いつもの、ください。

えぇ、後ろから刺されてしまいまして。ありがとうございます。痛み？そんなのはあまり、無いですよ。それより睡魔に負けそうになる方が強いです。もう4時ですか？これで今日は戦闘終了ですね。これは全学年共通なのでもう大丈夫です。…先生、この薬っていつもの苦いやつですか？そうですか…、ありがとうございます。

先生、この鉄の羽根みたいなやつ見てください。朝起きたらついてたんですよ。困りますよね。隠密にも向いていないし寝返りもろくにうてないし…。まぁ、夏は冷たくて心地いいんですけど、動かしにくいからあまり使えないんですよね。先生、どうにかできませんか？…そうですよね、また何か分かったら教えてください。私は今日から一年を奇襲するので、それでは。

先生！私一人で、学級1つ崩壊させたんですよ。凄くないですか？…罪悪感、は無い訳では無いですけど。この世界は躊躇ってたら刺されるんですよ。これから暇なので一緒にお昼でもどうですか？ふふっ、ありがとうございます。

唐揚げと卵焼き交換しませんか？

君は料理下手？確かに、料理は下手だけど今日は上手くできたんですよ。ふむふむ、先生の卵焼き美味しいですね。

先生、解毒薬２つください。友達が後10分近くでもう…！！

え？薬、後1個しかない…？私？私も喰らいましたが友達に投与するのでください。迷ってないで、早く。

…はぁ…。

…先生、なんで私に飲ませたの。私、友達に投与したいって言ったよね！？？

…何で、私は目の前の人すら救えないの…。いつも笑ってた彼は、もう見れないの？先生は、なんでも出来るんじゃないかった、？嗚呼、そっか。先生も所詮人間ですもんね。

4時です、帰ります。ありがとうございました。

人間、いつ死ぬか分からない。

そんな世界なんて、クソだ。

私がもし幽霊になるなら呪ってしまうかもしれない。

先生。無駄話はいいので、ください。

は？弟に未練残ってないか、って？

馬鹿ですね残ってるに決まってるじゃん。

わざわざ聞かないで。気持ち悪い。

無理やり目を合わせようとしないで。そう言うとこだろ。

薬だけはありがとうございます。

先生も私もこんな学校早く去れるといいね。

それが死別だったとしても私は嬉しい。

先生もそう思ってくれるんだね。

･･･こういう時くらい、否定してくれたっていいのに。

いつまでこんな苦しい想いをしなきゃ行けないんだろう。

視界に靄がかかって顔も見えない。

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今日も変わらず毒を投与された人達がやってくる。あまり見てて心地いいものでも快いものでも無いが、それでもここに留まるのは彼女を死なせたくない一心だろう。

ん？死んだ人が出た？今日は誰？

…え。声が出ない。運ばれてきたのは他でもない、彼女だったから。死因は、窒息死、か…。いつかの彼女は『毒なんかで死ぬくらいなら窒息したい』と語っていたな。

無力感に乾いた笑いを漏らす。彼女は綺麗な顔で目をつぶっていた。羽根にそっと触れると、裏面に何やら文字が書いてあるのが見えた。くるりと裏返すと、そこには過去に僕が言った台詞や僕との思い出がびっしりと書いていた。そのひとつに、先生の馬鹿、嫌い。でも好きだよ、と書かれていたのを見る。勝手に脳内で彼女の声が再生される。

この羽根は、彼女の心を…。

思わず彼女に垂れかかり、抱き締める。視界が滲み、涙が頬を伝う。こんな結果で想いを知りたくなかった。最後くらいしっかり顔を見たかった。

彼女の口に自分の口を重ねる。だが彼女は物語のように息を吹き返さないし、恥ずかしいと怒りもしない。ただ冷たさだけがそこに残っていた。

もうこんなバカみたいな国の事情で出来た学校なんて終わらせよう。過去に見た被害者たちも加害者達も全員焼き払ってしまおう。

一瞬、これでいいのか？と問いが聞こえた。…無視をして火をつける。不思議なことに罪を犯すというのに手は震えなかった。

先生、薬なんかもう要りませんよ。

出来るなら指輪とかどうですか？