クリエイトの卵

石田空

インタビューの編集の際には連絡お願いします。

「和風ウフマヨネーズ。絶品でした。まさかこれだけシンプルな材料でこんなにおいしいものになるとは思いませんでした」

「元々ウフマヨネーズ自体、フレンチの中でも有名料理です。ただ、そのままだとあんまり満腹になりませんし、日本人の好みよりもあっさりしがちなんですよね。ワインに合わせるにはそれなりなんですけど、ビールにはちょっと合わせにくいので、もうちょっと和風の味付けにしてみました」

「結構なお点前で。しかし、先生の料理って基本的に卵料理が多いですね」

「そうですねえ。卵を食べれば日本人の必要なタンパク質は取れますから。最近は物価も上がってしまいましたから、どうしても安い炭水化物ばかりになってしまいますよね? それだけだったらお腹は満たされてもどこかで体を崩しますから、なんとか簡単につくれて安くつく卵料理を流行らせたいというのがひとつ」

「ひとつ……ですか」

「あとひとつは、私の好きな人が卵料理が好きっていうので……そこからその人が好きそうな卵料理を研究するようになったんです」

「ああ……先生の好きな人というのは?」

「先日会えなくなってしまいましたから……」

「すみません、言葉が足りなくて」

「……この辺りって、インタビューは雑誌に出ますか?」

「ああ、あんまりにまずいものとかプライベートの話とかはカットしますから、好きに話してくれていいいですよ。カットや編集のことはあとで相談しますから」

「そうですか、ありがとうございます……なら。私の推し、この間サ終したソシャゲのキャラなんですよね」

「……………はあ? ええっと、サシュウ? ソシャゲ????」

「ああ、すみません。このあたりはスマホゲームで遊んでないとわかりにくいですよね。サ終……サービス終了です。ソーシャルネットゲーム略してソシャゲがサ終しましたので、もう新規シナリオもキャラ設定も練ることができないんですよ」

「はあ……解説ありがとうございます。でも、その推しのキャラが好きな卵料理だけで、そこまでレパートリーを増やせたんですか?」

「これはオタク特有かもしれませんが。ひとつのテキストに書かれたことを延々とこねくり回すのがオタクですから。そのキャラは調査行く度に卵料理の話をするので、最初は彼が食べたと言っているものをつくるところからはじめたんですよ。エッグベネディクト、オムレツ、卵サンド……最初は卵料理なんて、目玉焼きや卵焼きくらいしか知らなかったんですけど、つくればつくるほど、世界中にはいろんな卵料理があるなと気付きまして、それでどんどんつくっていったら、次はそのキャラが好きなお酒と合わせられる料理をつくりたくなって、研究するようになったんですよね……ああ、すみません、すみません。オタトーク長くなってしまって」

「いえ……でも推し活っていうと、最近ですとグッズを集めてからの祭壇をつくるものかとばかり思っていましたので、こんなタイプの推し活もあるんだなと思いました」

「私の推し方がいにしえ過ぎるんだと思います。一緒にソシャゲしている友達は、サ終が悲し過ぎるあまりに100万字小説書いていたら、その間に賞を三つほど獲りまして、来年本を三冊くらい出すことになりましたから」

「激しいですね? 推し方って激しいですね?」

「話がどんどん脱線していっていますね……話を戻しますと、好きを突き詰めると、新しい扉を開くんだと思います。クリエイティブの萌芽と言いますか、クリエイトの卵と言いますか。推し活って本来はそういうものだったと思います」

「新進気鋭の料理研究家のおしゃれな感じのインタビューだったはずなのに。推し活トークになるとは思わなかったからな……でも推し過ぎるあまりに賞を三つ獲った作家なんて面白過ぎるネタ、使わないのももったいないしなあ……」


<了>

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