転生したら第二王女の婚約者になってました。

@anzu-tao

第1話 病死。

白一色の病室に、命の音が響く。

「夜尋、死なないで…っ」

「頼む、死ぬな…」

『夜尋』と呼ばれた青年は死人のような顔色をして寝台ベッドの上で

 寝ていた。

 彼が寝ている横に座っている夫婦は彼が生きることを望んでいた。

 しかし、現実はそう簡単ではない。

 先程まで等間隔で鳴っていた音にどんどん間が空いていく。

「ッ先生、この子は本当に助からないんですか!?」

「…ええ、出来ることは尽くしました。抑々そもそも、彼が18歳まで生きられたのが奇跡なんですよ。」

 その男は、まるでもう奇跡は起こらないというようにそう言った。

「どうして、どうしてこんな弱い体で産んでしまったの…」

泣き崩れながら譫言うわごとのように謝り続ける女。

そして、同じようにボロボロと涙を溢しながら女の背中を擦り続ける男。

体の弱い自分のことを此処まで考えてくれる親の元に生まれて、彼は嘸かし(さぞかし)幸せだっただろう_医師はそう考えた。

実際、幸せだったと思う。彼が元気な時に遺書を見せてもらったことがあった。

当時の彼はまだ15歳だったが大人びていた。

「ちょっ、先生泣かないでくれよ!」

「でもよ、きっと此れを読んだら母さんたちは泣いちまうだろうけど。仕方ねぇよなぁ」

だって、自分がこんな体に生まれてしまったのだから。

彼はそう、覚悟を決めたような、諦めたような顔をして笑った。

彼はもう、全て分かっていたのだろうと思う。

「あぁ、夜尋、夜尋…」

ピ…ピ……と、どんどん感覚が空く。

――2025年12月28日18:43、急性冠症候群での病死だった。

奇しくも、その日は彼の誕生日でもあった。

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2026年1月18日 21:00

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