『お父様はおこですよ。〜真実の愛とやらで、我が娘を捨てた王子の末路〜』

春秋花壇

『お父様はおこですよ。〜真実の愛とやらで、我が娘を捨てた王子の末路〜』

聖夜の終焉(おわりのしらべ)

シャンデリアの光が、粉々に砕けた。 愛という名の免罪符を掲げ 愚かな王子は、玉座の脚を自らへし折った。


「真実の愛を見つけた」と、彼は笑う。 「おめでとう」と、娘は微笑む。 その背後で、 この国の心臓を握る父が、静かにグラスを置いた。


カチャリ、と。 それは小さな、しかし確かな、 王家の命脈が断たれた音。


お父様は、おこですよ。


彼は声を荒らげない。 彼は剣を抜かない。 ただ、帳簿の数字を一つ書き換え ただ、物流の糸を一本手放す。


明日、あなたの朝食からパンが消える。 明後日、あなたの寝室から火が消える。 そしていつか、あなたの名から「王」の文字が消える。


愛さえあれば、何もいらないと言ったのはあなた。 ならば、その愛で空腹を満たし その愛で冷えた身体を温めるがいい。


お父様は、おこですよ。


世界はこれから、静かに、論理的に、 あなたを、なかったことにしていく。


一、断罪の夜

「真実」と 王子が捨てし その価値を 帳簿の上で 父が消しゆく


二、公爵の静寂

グラス置く その一音に 国沈む 父の怒りは 声にならねど


三、理性の暴力

愛という 羽より軽き 言葉にて 重き王冠 砂へと変えん


四、娘の心境

おめでとう 自由になれた 王子様 明日から愛を 食べて生きてね




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