第4話 死神現る
日が落ちかけていた。部屋の隅は三方を壁と床に囲まれ、特にも暗さを増していた。そして、よく見るとその闇の中に一際真っ黒な影が浮かび上がっている。ボロボロの浴衣を纏い、痩せこけて血色がなく汚げな爺さんがぼんやりと立っていた。
「マシロ〜。迎えにきてやったべ。予定よりだいぶ遅れたが、やっとあの世へ案内できる〜」
赤く血走った目で、薄笑いを浮かべて立っている。
「あんた·····死神?」
「そうじゃ、他の幽霊の世話をしていて、すっかり遅れてしまった。さあ、行くとするか!」
なんてことを、ここから出る気なんて、これっぽっちもないのに。
「いやよ。あんたみたいなジジイとあの世だなんて!」
「失礼じゃのぉ〜。わしゃ、現役だぞ」
「絶っ対、いや!」
「困ったの〜。連れて帰らんと、閻魔様に怒られる。何かほうほうは〜」
何か裏技的なものがあるのか。あるなら教えろ。死神には妙な間があった。
「なんか、あの世に行かなくてもいい方法があるなら、教えて欲しいの〜」
少しばかり甘えた声を出してみる。うまくいくか?ん!案外効いてる⁉︎死神の様子が少し嬉しそうだ。もう一押しか!
「お・ね・が・い!」
「そうじゃのぉ〜。例えば、誰かがお前さんをとて必要としているとか、だったら連れて帰れない理由になるがのぉ〜」
そこに丁度よく、和也が帰ってきた。いつものように疲れ切った感じで、よろよろと部屋に入ってきた。見知らぬ汚い老人をじっと凝視している。
「マシロ、この人誰?」
「死神!この人、私をあの世へ連れて行くっていうの。それは困るよね、和也!」
「そりゃ、ねがっ·····いってー!」
あぶねっ、こいつ。願ったり叶ったりって言う気だ。慌てて、和也の足を思いっきり踏みつけて、部屋の隅に和也を引っ張っていった。
「お願いだから、あの人には、私が絶対必要だって言って。私は、記憶が戻って、未練を断ち切ってから成仏したいの。お願い!なんでも言うこと聞くから、ねっ」
和也は何か思案顔でしばらく天井を仰いでいたが、つかつかと死神に近づくと真剣な顔で言った。
「·····マシロが居ないと寂しいので連れて行かないでください。いずれは、僕が責任持って成仏させますので。お願いします」
「そうか、それならば、仕方がないのぉ〜」
死神はしょんぼりと俯いてしまった。ほんとにがっかりしているようでなんだか影が薄くなっているように感じた。いや、向こう側が透けて見えるので実際薄くなっている。
「また、しばらくしたら、様子を見にくるわい」
そういって死神は消えた。
「やったー。ありがとう和也。嬉しい、私が居ないと和也も寂しいのか。そうかぁ。私は必要とされている女なのね。私にどうして欲しいの和也!ねっねっ·····」
うれしくてつい暴れたくなるのをグッと堪えて部屋中を飛び回ったり、壁を叩くくらいで我慢した。ほんとは一晩中でもそうしたいのだったが、和也がしばらくしてイラついた顔をしているのに気がついてやめた。
「マシロ、その辺にしとけ。死神に売っぱらうぞ」
和也ならやりかねない。
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