異世界転生したら説明が多すぎた件
うえすぎ
第1話『転生者、説明されすぎる』
登場人物(3人)
• ユウ:異世界転生者。半年経過。空気を読みすぎる
• エル:神官。丁寧すぎる説明係
• ガルド:衛兵。正義感が強く、説明を補足したがる
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シーン
村の小さな詰所。
木の机と椅子。特に事件は起きていない。
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本編
エル「では改めて、ユウ様。
本日は転生者向け生活説明のお時間です」
ユウ「……あの、これってもう三回目ですよね」
エル「はい。
“理解しているか不安そうだったので”」
ユウ「そんな顔してました?」
ガルド「してました」
ユウ「即答なんですね」
(間)
エル「まず、こちらがステータス画面です」
(エル、空中を指差す)
ユウ「あ、出ました」
エル「表示されましたか?」
ユウ「はい、でもその…
毎回“閉じ方”が分からなくて」
エル「閉じなくて大丈夫です」
ユウ「え?」
エル「この世界では
常に出しっぱなしが基本です」
ユウ「それ、結構恥ずかしくないですか?」
ガルド「何がですか?」
ユウ「HPとか…
人に見られるの」
(間)
エル「では次にスキルについて」
ユウ「はい」
エル「ユウ様は
“言い出せない”というスキルをお持ちです」
ユウ「……それ、スキルなんですか」
ガルド「強力です」
ユウ「どの辺が」
ガルド「争いが起きません」
ユウ「代わりに、僕がモヤっとします」
(間)
エル「続いて勇者様の呼び方ですが」
ユウ「あ、それ、できれば…」
エル「“様”は必須です」
ユウ「そうなんですね」
ガルド「敬意です」
ユウ「じゃあ、“ユウ”だけは…」
エル「ダメです」
ユウ「即ダメ」
(間)
エル「では最後に
この世界でやってはいけないことを」
ユウ「それは聞きたいです」
エル「一つ目。
“元の世界の話をしすぎない”」
ユウ「……あ」
ガルド「昨日、しました」
ユウ「一言だけですよ」
ガルド「“コンビニ”」
ユウ「それだけでアウトなんですか」
エル「二つ目。
“説明を途中で止めない”」
ユウ「それ、今言うんですか?」
エル「はい」
(間)
ユウ「……あの」
エル「はい」
ユウ「これって、
いつまで続くんですか?」
エル「説明ですか?」
ユウ「この世界での」
(少し考える)
エル「基本的には
慣れるまでです」
ユウ「……慣れてます」
ガルド「慣れてません」
ユウ「なんで分かるんですか」
ガルド「顔です」
(間)
ユウ「じゃあ最後に一つだけ」
エル「はい」
ユウ「僕、ちゃんと転生者として
役に立ってますか?」
(少し沈黙)
エル「……はい」
ユウ「間が気になります」
ガルド「十分です」
ユウ「ほんとに?」
エル「説明を
三回も受けているのは
ユウ様だけです」
ユウ「……それ、役に立ってるんですか」
(間)
エル「では本日の説明は以上です」
ユウ「ありがとうございました」
(2人、立ち上がる)
ユウ「あ、あの」
エル「はい?」
ユウ「次の説明は…」
エル「明日です」
ユウ「何の説明ですか?」
エル「“説明が多い理由”について」
(間)
ユウ「……分かりました」
エル「ご理解が早いですね」
ユウ「いえ」
(少し間を置いて)
ユウ「……慣れてきただけです」
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