ネザーワールド・リヴァイヴ(冥界蘇生)~堕ちた天使と空から落ちた少女~ 脚本
たくみふじ
第1話 空からの迷子、あるいは起源への招待状
【登場人物】
カイ:死んだような目で天井を見つめる所長。虚無の力の持ち主。
ひかり:電卓の音で世界を裁くマネージャー。カイの幼馴染。
ソラ:節約術の権化。元エリート奪衣婆。
クロ:食欲に忠実な豆柴。正体は死に神。
権田:冷や汗が止まらない現場監督。
エル:銀髪、翼、オッドアイを持つ「廃棄対象」。
高清水涼子:画面越しに怒鳴り散らす元天使のお嬢様。
北條孝子:画面越しに冷笑を浮かべる東の魔女。
詫間亨:データこそが真実と語る天才エンジニア。
〇(OP)アバン:夜の新宿上空
(映像) 新宿の摩天楼を見下ろす俯瞰ショット。 突如、夜空にノイズが走る。 雲を割り、火球のような「何か」が猛スピードで落下してくる。 それは建築中のビルの高層クレーンに激突し、激しい火花を散らす。 (M) 重厚なオーケストラ。 タイトルロゴ:ネザーワールド・リヴァイヴ(冥界蘇生)
〇陽だまり探偵事務所・内部
(映像) 斜めに傾いた「陽だまり探偵事務所」の看板 。 室内。埃が舞う午後の日差し。 カチカチカチ……と高速で叩かれる電卓の音。
カイ、バネの壊れたソファに深く沈み込み、天井のシミを数えている 。 ひかり、事務机で山積みの請求書と格闘中 。
カイ「……なあ、ひかり。最後にまともな飯を食ったの、いつだっけ?」 ひかり「(電卓の手を止めず)3ヶ月前、メタトロンをぶっ飛ばして新宿の半分を瓦礫にした時ね。あの時の莫大な報酬、全部どこに行ったか知ってる?」 カイ「……どこだよ」 ひかり「壊したビルの修繕費と、あんたが飲み歩いた酒代よ。ちなみに今の最新依頼は、迷子のインコの捜索。報酬は小鳥の餌一袋分 」 カイ「虚無だ。人生そのものが虚無だぜ」
ソラ、キッチンでフライパンを磨きながら明るく声をかける。 ソラ「カイ、そんなこと言わないの! 今夜はモヤシと豆腐の特製ハンバーグよ。お肉の味は……想像力で補えばステーキにだってなれるわ! 」 クロ、キッチンの床で丸まりながら片目を開ける。 クロ「(字幕)ワンッ(想像力で腹は膨れねえ。俺様のドッグフード、最近『味わいミックス』にランクダウンしやがったしな) 」 カイ、ポケットを探り、数枚の硬貨を取り出す。 カイ「1円、10円……計123円。缶コーヒーすら俺を拒絶してやがる 」
(効果音) ピンポーン。間の抜けたチャイム音 。
ソラ「(目を輝かせて)依頼人よ! カイ、襟を正して! クロ、尻尾を振って愛想よく! 」 カイ「へいへい……(立ち上がり、扉を開ける)」
〇同・玄関
扉の向こうに立つのは、土気色の顔をした大男・権田 。 腕には、現場用の汚れた毛布にくるまれた大きな「荷物」 。
権田「……あんたが、噂のカイさんか? 警察沙汰にできない『バケモノ』絡みの事件を扱うって…… 」 カイ「(目つきが鋭くなる)ああ、大得意だ。入りな。その荷物、相当ワケありそうだな 」
〇事務所・リビング
権田、ソファに座るが、ソラが出した茶にも手をつけず震えている 。 ひかり、ブラインドを下げ、「準備中」の札に裏返す 。
権田「新宿西口の再開発現場だ。クレーンの上に『何か』が引っかかってるって報告があった。最初はマネキンかと思ったんだが……降ろしてみたら……こいつだった 」
権田が毛布を広げる。 (映像) クローズアップ。 銀糸のような髪。透き通る白い肌。10歳前後の少女、エル。 衣服は焦げ、破れているが、背中から生えた「純白の翼」が脈打ち、発光している 。
カイ「……マジかよ。天使か……? 」 権田「(分厚い封筒をテーブルに叩きつける)手付金だ。頼む、こいつを帰るべき場所に返してやってくれ! 」
権田、逃げるように去っていく。
〇同・リビング(数分後)
カイ、エルの首元の銀色のチョーカーに気づく。 カイ「ひかり、読めるか? 」 ひかり、スマホのカメラで拡大。画像解析ソフトがエラーを吐く 。 ひかり「古代ヘブライ語に近いけど、もっと複雑。神代文字の一種かもね 」 カイ「専門家を呼ぶぞ。東西の『魔女』たちにな 」
〇モニター画面
(映像) 大型モニターが二分割される 。 右側:神戸、ハイテク洋館の書斎。優雅なドレス姿の高清水涼子 。 左側:鎌倉、和風屋敷の縁側。着物を着崩した北條孝子 。
涼子『……カイさん、相変わらず貧相な顔してはりまんな。栄養足りてますの? 』 カイ「うるせーよ元天使。お前こそ化粧が濃くなったんじゃねえか? 」 涼子『なんですって!? これはナチュラルメイクですわ! 貴方の目は節穴ですか!? 』 孝子『ご機嫌よう、下民の皆様。わたくしのお茶の時間を邪魔するのですから、とびきりの見世物なんでしょうね? 』
カイ、カメラをソファのエルに向ける 。 画面越しの二人の表情が凍りつく。
涼子『……嘘やろ。このエーテル波長…… 』 孝子『(扇子を閉じる)紛い物ではありませんわね。ガーディ、解析を 』
涼子の隣で、白衣の詫間亨がキーボードを叩く 。 亨『……信じられない。DNA構造、生体パターン……すべてが涼子さんの「堕天前」のデータと100%一致する 』 カイ「100%!? 涼子、お前の隠し子か? 」 涼子『ちゃいます! わたくしに隠し子はいませんわ! 亨さん、どういうことですの!? 』 亨『血縁というより「同位体」に近い。同じ設計図で作られた別の個体……つまり、彼女は正真正銘、天界から来た天使だよ 』
ひかり、震える声で。 ひかり「チョーカーの文字……なんて書いてあるの? 」 涼子、顔色を蒼白にし、唇を噛み締めて答える。 涼子『……「欠番(ミッシング・ナンバー)」……そして……「廃棄対象(トラッシュ)」…… 』
カイ、拳を強く握りしめる。 カイ「廃棄……だと? ふざけんな、こんな子供をか? 」 涼子『天界はそういう場所です。完全無欠がルール。規格外はノイズとして処理される……わたくしがそうであったように 』 孝子『あらおぞましい。自らを善と謳う連中ほど陰湿ですこと。……で、カイさんはどうするおつもり? 』
カイ、エルの寝顔を見つめる。 カイ「決まってんだろ。陽だまり探偵事務所はこいつを守る。親が捨てたんなら、その親のツラ、俺がぶん殴ってやるよ 」
〇事務所・リビング(夜)
エルが小さく呻き、ゆっくりと瞼を開ける 。 (演出) 瞳のアップ。右目は蒼、左目は虚無を宿した黒。オッドアイ 。
ソラ「起きたのね?」 エル、無感情な瞳で周囲を見渡し、カイの顔を捉える 。 その瞬間、少女の瞳に光が宿る。
エル「……お父様? 」
カイ、椅子から転げ落ちる。 全員「「「「はあああああああッ!?!? 」」」」 ひかり「カイ、あんた……いつの間に!? 」 カイ「身に覚えがねえええ!! 俺は独身だ!! 」 涼子『(画面に身を乗り出し)どういうことですの!? 説明しなさい! 今すぐそこへ行って尋問しますわ! 』
エル、カイのシャツの裾を震える手で掴む 。 エル「……虚無の王よ。お願い……。天を、壊して 」
エル、そのまま再び意識を失い、カイの胸に倒れ込む 。
〇事務所・ベランダ(深夜)
ひかり、カーテンを閉め、防衛システムを起動させる 。 カイ、窓の外の新宿の夜空を見つめる。
ひかり「どうやら、ただの迷子じゃないわね。最終シーズン、開幕ってところかしら 」 カイ「天界だろうが神様だろうが、この子の涙の理由なら、俺が突き止めてやる 」
(映像) カイの瞳に、新宿上空に浮かぶ複数の不気味な「光点」が映り込む 。 天界の斥候(スカウト)ドローンが、獲物を狙うように事務所を包囲している 。
(M) 激しいロック調のEDイントロ。 カイの右手に、黒い虚無のオーラが立ち昇る 。
カイ「挨拶もなしかよ。躾のなってねえ『客』には、お引き取り願おうか! 」
(暗転)
次の更新予定
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