「象徴を模す影」
人一
「象徴を模す影」
「フォフォフォ、ワシはサンタじゃ。今宵も良い子のところに行くぞい。」
リストを確認して現場へ向かう。
ベランダの扉を難なく開けて部屋に入った。
男性がぐっすりと寝る、枕元にプレゼントボックスをそっと置く。
――ガサガサガサ
「フォフォフォ、じゃあ次じゃ。」
次の現場に到着した。
だが次の部屋はまだ窓から光が漏れている。
その上、まだ騒いでいる声も聞こえた。
「う~む……これじゃ仕事ができんわい。」
少し悩んだ後に、とりあえず後回しにすることにして次の現場へ向かった。
次の現場は明かりは消えており、静かだからまあ寝てるだろう。
窓から部屋に体を滑り込ませる。
ベッドでは女性がすやすや眠っている。
枕元にそっとプレゼントボックスを置いた。
――ガサガサ
「……ん。……なに……?」
まずいっ!
息と気配を殺して冷蔵庫の影に隠れた。
――ペタ、ペタ、ペタ……
「ふぁああ、気のせいだったのかな。」
女性はすぐ目の前まできたが、終ぞ気づかず自分の布団で寝始めた。
仕事を早足で片付け立ち去った。
「次の1人はここか。」
新築っぽい外観に警備を、するりと通り抜け部屋に入った。
寝ている女性の枕元にプレゼントボックスを置いて、仕事に取り掛かる。
――ガタン!
「あっやべ。」
「んぅ……」
起こしてしまった女性と完全に……目があった。
「?……!、きゃあああーーモガガ」
口と目を手で覆う。
「これは夢、夢だよ~夢じゃよ~」
そう言いながらゆっくりと寝かせる。
幸いそのまま眠ってくれた。
「ふう……危機一髪だ。もうさっさと終わらせて次へ行くか。」
並べたものを袋に詰め込み立ち去った。
『こんにちは。
12月26日、お昼のニュースです。
警察によりますと、昨日25日の未明、複数の住宅に侵入し、金品を盗むなどの犯行を繰り返したとして、26日朝、住所不定・職業不詳の男性を住居侵入および窃盗の疑いで逮捕したと発表しました。
男性は取り調べに対し、「ワシはサンタじゃ」と話しているということです。
警察は、余罪があるとみて詳しく調べています。
続いてのニュースです。』
「象徴を模す影」 人一 @hitoHito93
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます