ゲーム世界転生メンテナンス中

ちびまるフォイ

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「こ、ここはいったい……」


「ここは転生待合室。あなたは過度な労働で命を落としました」


「親の顔よりみた展開ですね!」


「そんな不憫な人生を歩んだあなたに女神の私から贈り物です。

 大人気ゲーム"404 the World"に転生させてあげましょう」


「本当ですか!! もちろんオプションつくんですよね!?」


「はい。あなたは異世界でモテモテのつよつよ。

 何不自由無い暮らしが約束されている王子として転生し、

 毎日ぶいぶい言わせながらドヤ顔で第二の人生を歩めるでしょう」


「ああ女神様、なんとお礼を伝えればいいか」


「ではいきます。ビビデバビてんせーーい!!」


女神が魔法のステッキをゴルフのようにスイングすると、

羽のついたステッキから魔法が解き放たれて自分はゲームの世界に転生した。


「やった! ここがゲームの世界……じゃない!?」


周囲はブルーなスクリーンに包まれていた。

鏡文字でなにか空に見える。



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「た……だいま、め、メンテナンス中!?」



憧れていたゲームの中への転生を果たしたが、

それはメンテ状態のゲームであった。


ファンタジーな町並みも、素敵なエルフも。

チュートリアルのごとく現れる悪い魔物もいない。


あるのは途方もなく広がり地平線しか見えない青い世界。

これがメンテナンスの世界。


「これはまずいぞ。あのメンテテキスト的に終わりが見えてない。

 ってことはいつまでもこの世界に閉じ込められちまう!」


こんな無機質な世界にいつまでもいたら心が壊れる。

必死に空に向かって声をあげたり、魔法を放ったりしてみる。

もちろん効果はない。


「おおーーい!! おおーーい!! 早くメンテをあけてくれ!!」


どんなチートを持ってしても、メンテを終了させることはできない。

ゲームの世界へ転生した以上、ゲームの理には抗えない。


「ダメか……。今までこんな長時間メンテはなかった。

 もしかしてサービス終了とかじゃないよな……」


嫌な考えが浮かぶ。

もしもゲームがサービス終了だとしたら自分はどうなるのか。

永久にメンテ画面に閉じ込められたままになる。


ゾッとする自分の未来を想像したとき、自分の走馬灯の上映がはじまった。

そこにはヒントも隠されていた。


「待てよ……。ここがゲームの世界なら、メンテ解除ボタンがあるはず!」


一般的なオンラインゲームやソーシャルゲームにおいて、

メンテの解除はサーバー側の制御で行うことが多い。


サーバー側でのメンテ解除スイッチをONにすることで、

ユーザーがアクセスできるようになる仕組み。


もちろんバグやらアップデートやらアプリストアへの浸透。


それらを待ってからメンテ解除するのが通常ではあるが、

メンテ画面に閉じ込められた人間がそれを待つ猶予などない。


「こんなときにゲームのデバッグバイトの経験が活きるなんて……」


メンテナンス中のゲームを裏側からあちらこちらまさぐる。

現れたのはゲームを制御するための管理ツール。


「やっぱりだ! ちゃんとゲームの中に仕込んでいた!」


管理ツールにはMaintenanceと書かれた項目がある。

メンテナンスの解除ボタンを押した。


みるみる青い画面が剥がれてテクスチャが呼び出されていく。


「おお……!! ついに念願のゲームの世界だ!!」


美しい水、生い茂る緑。

ワクワクするようなタイトル画面のBGM。


これから始まる素敵な第二の人生への期待値が高まる。


「さあ、メンテナンスは終了だ! 転生人生を満喫するぞーー!!」


憧れていたゲーム世界への転生がはじまる。

ゲームの世界に飛び込む。


はずが、巨大なモノリスにぶつかって頭を強打した。


ゲームの世界に入る前の門番のようにそれは鎮座している。

どこまでも伸びる高さに終わりが見えない。


「あ……ああ……。お、お前は……」


いかなるチートでも突破できない。

ゲーム世界への転生前に現れたそれには見覚えが合った。


立ちふさがる巨大なモノリスは告げた。




『アップデートにより利用規約が更新されました。


 3830万6971文字の利用規約を読みきって同意を押してください』

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