第3話 魔王からのバトンタッチ
「絶対、絶対納得できねえ」
俺は暗闇の中、魔界の地獄行きの船を待たされていた。
だが、さっきの閻魔大王の判決に俺は苛立っていた。
生きてる間に地獄を味わった俺に死んでも地獄に行けというのか。
何が閻魔大王だ。
死んだ後ぐらい俺に天国の花園を見せてくれてもいいじゃないか。
「絶対、おかしい。何で俺がこんな目に…」
「うんうん、分かるよ。君の悔しさは当然だよね」
「そうだろ? 俺が地獄行きなんて間違っているよな?」
「うんうん、あれだけいじめられても自殺しなかったのに事故で死んで地獄行きなんて納得できないよね。しかも原因はその同級生の一人でしょ?」
「そうなんだよ。右藤って男で……って、うわあ! お前誰だ!?」
俺はいつの間にか自分と会話していた人物に気付き驚く。
人の気配なんかしなかったはずなのにそいつは俺の横に立っていた。
見た目は10歳くらいの少年に見える。
「俺の名前はカイヤ。これでも地獄で魔王をやってる」
「魔王……?」
こんな子供が魔王?
「それより君の人生ってホントに救いがないよね。それで同級生はのうのうと生きていて君は地獄行きなんて閻魔大王も酷いよね」
「え? ああ、そうなんだ。俺が死んだのだって右藤のせいなのに」
「うんうん。君は同級生に復讐するべきだよ」
「復讐?」
「復讐したくないの?」
カイヤに言われて俺は初めて気づく。
そうだ。同級生に復讐してやらなきゃこの気持ちは収まらない。
だが死んだ俺がどうやって復讐するんだ?
幽霊になって同級生の奴らのところに現れてやるのか?
あいつらは幽霊の俺を見たところでビビるような神経の持ち主じゃないぞ。
そんなか弱い神経だったら俺にあんな陰湿ないじめができるわけないからな。
「復讐したくてもどうやればいいか…俺は特別な力なんて無いし」
「それなら心配ない。君が復讐終了するまで君が魔王になればいい」
「は? 俺が魔王に?」
「魔王になれば特殊な力が使えるようになる。それで奴らに復讐すればいい」
カイヤはニコリと笑う。
笑顔は魔王というより天使みたいだ。
「はい! バトンタッチ! 今日から君が魔王ね」
俺は暗闇の中、自分は魔王だと名乗ったカイヤからバトンタッチされた。
「じゃあ。後は側近のノアに話を聞いてね」
少年の姿が暗闇に消える。
俺はしばらくカイヤからバトンタッチされた自分の右手を呆然と見つめていた。
そこにスーツを着た猫が現れる。
猫なのに二本足で歩いている。
「初めまして。魔王様。私、こういう者です」
げっ! しゃべった!
その猫は名刺を俺に渡す。
「魔王付き秘書? ノア?」
名刺にはそう書いてあった。
「はい。私、カイヤ様の秘書をしてうん千年のノアと申します。今回一時的とはいえ幸人様が魔王様になられたということでご挨拶に参りました」
「いや。魔王って言われても何も変わってない気がするんだが」
「まあ。自覚はないかもしれませんがカイヤ様からバトンタッチされましたので幸人様が魔王様に間違いありません」
「はあ……」
「それより魔王様。魔王様は同級生に復讐をされるとか」
「ああ、そうだった。俺を地獄に落とした同級生の奴らに俺よりも地獄を見せてやりたい。いや、どうせなら皆殺しにしたいくらいだ」
「なるほど。では復讐される同級生の方々はこの方たちですね」
ノアは一枚のリストを俺に見せる。
そのリストには俺が思い出したくもない同級生の名前が書いてある。
「ではまず魔王様が人間界でできることをご説明します」
「魔王はなんでもできるんじゃねえのか?」
「基本的にはできますが魔王様の力は強大なので人間界での使い方を覚えてくださらないと大混乱になってしまいます」
チッ、面倒くさいな。
だがここはこいつの言うことを聞いておくか。
俺はノアの説明を聞きながら復讐の炎を燃え上がらせていた。
絶対に楽して殺さねえ。
首を洗って待ってろよ。あいつらめ!
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