不登校だった私が恋に勤しむ物語
びびp
1話
「あー、もう嫌」 モリ スミカ
ゲームのスコア表が映る画面の前、森 澄香こと私はそう呟き、そのままパソコンの電源を切る。
深夜3時、時計を見て小声で決心する。
「よし、行こう」
私はメガネを外し寝間着を脱ぎ捨て、Tシャツ、ジーパンを履き上着を2枚着る。
メガネを付け直し、机の上にあるスマホと自転車の鍵を取り上着のポケットに入れて、部屋からこっそりと出る。
廊下の端にあるダボダボなリュックを取り靴を履き横開きの扉をから出る。
ゆっくりと扉を閉め自転車に駆け寄る。
リュックを前のかごに置きスマホで前に検索した場所をナビで開き、一週間前に着けたスマホスタンドにスマホを着ける。
鍵をポケットから取り出すと共にイヤホンのケースが出てきた。
「ここにあったのか…」
そう呟きながらケースからイヤホンを取り出し耳に付ける。
リュックの着を開けてフリスクを取り出しポケットに入れて、イヤホンのケースを投げ入れる。
自転車の後輪錠に鍵を差して、慣れた足さばきでスタンドを外し、駐車場に自転車を出す。
私は自転車に乗りフリスクを口に入れ出発した。
[およそ20m先、左方向です]
私はイヤホンから聞こえる機械音の通りに曲がり、よく知った家を一目見て思い出す。
「あの子、今何してるのかな〜」
小学生の頃、私には好きな子が居た。
その子は私より背は高く、何より顔が良かった。
(キリッとした顔に長くサラサラな髪はもう反則だよね〜)
その子とは1年生の頃から友達だったが、4年生になってから疎遠になってしまった。
「ん〜、確か名前は結月ちゃん、だったよね。会えないかな〜」
(いや会えてどうするんだよ。今のお前を見ても幻滅してどっか行くだろ!しねしねしねしねしね)
私が負の感情に押しつぶされていた時イヤホンから声が聞こえた。
[この先200メートル道なりです]
「えー」
私は正面の坂を見て少し気が遠くなる。
一度深呼吸をして私は足に力を入れ呟く。
「頑張りますか〜」
「ずがれだー」
出発して1時間30分、私は目的地に登るための山を目の前にして、道路の端に自転車を停め、自転車の隣に座り込んでいる。
「この卵がうまいんですわ〜」
私は高い声で呟き、スマホ片手に道中で買った卵サンドにもう一度かぶりつく。
そんな事をしていると後から何かの甲高い鳴き声が聞こえると同時に背中に何かが擦れた。
「ニャー」
「わっ」
私は体をピクリと浮かし後ろを振り向いた。
(ネコ〜!しかも黒)
私は急いでリュックからクッキーを取り出し、手で割ってその猫の眼前に落とした。
猫はその割れたクッキーを食べている。
私は卵サンド最後の一欠片を口にして猫の体を撫でる。
「この旅に出るとなぜか毎回道中に黒猫に会うんだよな〜」
私はそんな事を呟き慣れた手つきで写真を撮る。
猫がクッキーの半分を食べ終わった頃、私は旅を再開した。
「うひゃー」
帰り道私は行きで頑張って登った坂道を活き良いよく降りながら抑えた声で叫んでいる。
※ちゃんと片方のブレーキをかけて減速させています。
坂を終え、先の信号が赤になったことを見て自転車を停める。
私は知っている道を見てナビを消してイヤホンを外す。
(時間は5時45分か)
時間を確認してスマホの電源を消した時、後ろの方から何かが聞こえた気がした。
(?)
私は少しの間眉間に指を置き悩み、旅の2つ目の目的を思い出す。
(忘れるな!旅の目的は今の私からの脱却!死んでもいいから何かとの出会い!よし、行くぞ)
私は道の端に自転車を止めて、何かが聞こえた方に歩き出した。
何かが聞こえた先、10歩くらい進むと裏路地があった。
(行くか)
私は得意技(足音殺し)と(耳澄まし)を発動させて路地裏を進む。
私は入って気付き後悔する、路地に響くぴちゃぴちゃという音に。
続けて私は後悔した。
「んっ」
私はその何かを押さえている声に後悔しながらも好奇心から足を進める。
私が物陰から靴が見えた時甲高い声が路地に響いた。
「んっんんん、んっはぁ」
私は何か申し訳ない気持になりながら、体を物陰の方に向けて大きく一歩踏み出して声を出す。
「やぁ、あ」
私の目に飛び込んできたのは予想通りの光景だった。
髪が胸元まで伸びた女性が息を荒げ、膝を立て片手を下半身に伸ばしている。
途端、目の前の女性がいきなり立ち上がった。
と思ったらその場で足から崩れ落ち呟く。
「足がぁ」
私はその女性が出す震えた可愛らしい声に鼓動が先程より早くる。
瞬間、女性が顔を上げ私を睨んできた。
私の鼓動はさらに早くなり、その女性の顔を見つめてしまう。
月に照らされ煌びやかに輝く黒い髪、その隙間から見える今直ぐにでも噛み付いてきそうな目つき、なのに目に浮かばせた涙で脆そうに見えてしまう。
「やめてくれない?」
瞬間、腕に弱めな衝撃を受けると同時に、私の意識が現実に戻る。
いつの間にか私は屈み込みその人の頬に手を添えていた。
私は立ち上り咄嗟に手を引っ込め手を後ろに回す。
「すすす、すみません」
そう言って私はもう一度女性の顔見つめる。
(綺麗。だけど見たことがある気がする…)
そんな事を考えていると女性は立ち上がり服を整えこちらを睨んできた。
その鋭い目つきに後ずさってしまうが、それと同時に綺麗な顔が見えて冷えた肌に熱が籠る。
そんな私を見てかその女性は一度ため息を吐き、冷たい声で言葉を投げつけてきた。
「学校で広めたら殺すから。澄香さん」
「えっ?」
その人は長い髪をふわりと舞ませ、私が来た方へ去っていった。
(私の名前を知っている?)
その人の姿が見えなくなるまで、私はその場から動こうとはしなかった。
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