悪役貴族に転生した俺、どうせざまぁされるからと好きに生きてたらヒロインたちを全員攻略してた
破滅
第1話 顔だけ知ってる悪役貴族
「ユーリ・ベルモット! お前が積み重ねて来た傍若無人な悪行の数々、そのツケを払う時だ!」
原作全く見たことないアニメの世界に転生して早一年。
明らかに主人公然としたイケメンに剣突を向けられ、ざまぁの宣言をされた。
初めて知ってるシーンが来た。「ネットのコラ画像でよく見たやつ」と微かな感動を覚えると同時に、今日が破滅の日なんだと悟る。
こいつの言う通り、俺はそれはもう好き勝手に生きてきた。
転生して、鏡に映るユーリの顔を一目見た瞬間から悲惨な末路は覚悟していたし、前世で一度死んだ身だ。今更悔いはない。
「愛無き婚約で縛り付けている姫様を解放し、お前はこの学園を去れ! さもなくば――」
「学園を去るのは貴方の方です。この無礼者」
恐らく、原作にもあったであろうセリフを言った主人公。
しかし、ヒロインであり俺の婚約者でもあるティアラ王女の返答は本来とは違うものになっていた。
「ユーリ様はこの一年で様々な功績を残してきた上に、お父様や私の身の回りの人たちからの覚えも大変良いです。一方で、貴方は要注意人物として警戒されています。大方王族の地位を狙った結果なんでしょうが、愛する婚約者までも侮辱されたら、もう容赦することは出来ません」
「「は?」」
予想外の事態に、俺と主人公くんの声が重なった。
ど、どういうこと?
フリーズした脳みそは、ここ一年の出来事を走馬灯のように思い返し始めていた。
◇
「おはようございます、ユーリ様」
まるでアニメの萌えキャラみたいな声に起こされる。
目を開くと、高級感溢れるふかふかのベッドの上で、萌え声の主はメイド服を着ていた。まるで中世ヨーロッパの貴族になったみたいだ。
「ここは天国なのか、それとも異世界にでも転生したのか? どちらにせよ、俺は死んだみたいだな」
俺は、日本に住む大学生で末期癌を患っていた。余命半年を宣言されてから一年以上生きたけど、そうか……とうとう死んでしまったのか。
「死んだ? どういうことですか?」
「ああ、いや、夢の中の話だ」
メイドの疑問を、適当に躱す。
戸惑う様子を見るに、ここは天国ではないしこのメイドさんも天使とかではないのだろう。天使みたいな可愛い容姿ではあるけど。
上体を起こし、ベッドから降りる。
最近は身体を少し動かすだけで激痛だったし、一日の殆どを寝て過ごす感じだったのに、今は嘘みたいに身体が軽い。ちょっとジャンプしてみる。痛くない! 胸いっぱいに空気を吸い込んでみる。苦しくもない。
どうやら俺は転生したらしい。健康な肉体を持つ、西洋貴族風の男に。
「ユーリ様? なんだか今日は機嫌が良さげですね?」
「ああ。健康って良いなって思ってな」
「そうですね。ユーリ様が体調を崩されますと、ベルモット家の跡取りで問題が起こってしまいます」
いや、そういう話ではなかったんだが。
メイドは、俺より少し小柄なくらい。黒髪、そばかす、蒼い瞳。顔立ちはややあどけなさこそ残るが、第二次性徴は終えてそうだ。
逆にそれより背の高い俺も、子供ではないのだろう。
まあ20年ちょい生きた意識がそのままに赤ん坊からやり直すってのは色々キツそうだし、こっちの方が嬉しいけど。
「あ、そうだ! 顔見たい。俺、イケメンかな?」
「いけめん? それはどういう意味ですか?」
「イケてるメンズ。格好良い男って意味なんだけど。そんなことより鏡ってある?」
「ええ、そうですね。ユーリ様はお父様譲りの端正な容姿をしてらして、とても格好良い殿方だと思います。鏡はそちらにあります」
そう言ってメイドは部屋の右側を指す。普通にあった。
鏡に映る容姿を見る。金髪に碧眼で、年齢は15歳くらい。顔立ちはショタっぽくてクソ生意気そうな雰囲気のあるイケメン……いやあれ? この顔どっかで見たことあるぞ。なんだっけ?
数秒考えて、思い出した。
あ、これネットでよく見るやつだ。
清々しいほどのゲス発言と外道ムーブが面白がられていて、そのシーンの切り抜きとかコラで良く貼られてるキャラ。
名前は確かユーリ・ベルモットとか言ったはず。
奇しくも今の俺はベルモットさん家のユーリ君らしいけど。
いや待って。俺、あのユーリ・ベルモットに転生したの?
このキャラは外道ムーブと同時に盛大なざまぁをされることでも有名なキャラだ。原作を読んでないので経緯はわからないけど、脚にロープを括りつけられて馬に引きずり回されてる時の顔芸は面白かったので印象に残っている。
……えっ。俺も、そうなるってこと?
回避したい。そんな運命。
しかし俺は、このユーリ・ベルモットが登場する作品を全く履修していない。
アニメも漫画も、見たことがない。故に、有名なシーンの一部を知ってるだけで、この人がどういう理由でゲスムーブや外道を働いて、どういう経緯でざまぁされたのかとか全く知らない。
これ、回避できる?
悪名高いムーブの数々は、意識が俺のものになった以上はしないと思う。
言動を改めるだけで馬に引きずられる末路を回避できるなら全然良いけど、もっと物語の根幹に関わるような深い部分に原因があったら……。
例えば黒幕に精神を操られるとか、やむにやまれぬ事情があるとか。
理由を知らないから対策が出来ず、対策がなければ回避は至難だ。
こんなことになるならアニメだけでも見とくんだった。
けどまさか自分がユーリ・ベルモットになるなんて思わない。
過ぎたことを悔いても仕方ないし、どうしようもないことにくよくよしても仕方がない。
どうせ一度死んでるんだ。健康な身体でもうちょっと生きる時間を手に入れられたと考えれば最早望外の幸運だとさえ思えてくる。
そうだな。どうせざまぁされるなら、それまで好きなように生きよう。
「ねえ。朝飯食ったら、俺とデートしようぜ」
「……私ですか?」
「そりゃそうでしょ……あ、もしかして嫌?」
まあユーリくんクソ生意気そうな顔してるしな。嫌だと言うなら、他のメイドさんを誘うつもりだ。
「嫌、じゃないですけど。その、良いのですか?」
「なにが?」
「いえ……なんでもありません。ユーリ様がお望みとあらば」
メイドさんは何か含みのある様子だけど、別に嫌がってる雰囲気ではなさそうなので普通にデートが決定する。
まあデートと言いつつこの世界がどんなのか気になるから近場を案内して欲しいってだけなんだけど。うら若き男女が横並びで歩けばそれはもうデートと言ってもいいだろう。
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