高校デビューにて、姉嫌いな妹が王子様属性を獲得した。

心晴

第一話 高校デビューにて

先日妹の春野牡丹はるのぼたんが高校入学を果たした。今まで牡丹は私とは違う中学に通っていて、私は中学受験に無事合格したけど牡丹まで上手くいくとはいかず牡丹は惜しくも断念。その影響と極度の姉嫌いが相まって私の学校へ執着を続け、中学時代に猛勉強をした結果今年から私と同じ高等部に編入という形で入学することとなった。そのせいか今までにないほど牡丹が張りきって学校へ行っている。


ここまで聞いたらただの妹の微笑まエピくらいにしかならないのだけど、問題はそこではない、真の問題は牡丹の高校デビューにある。妹の高校デビューにどうこう言うつもりはないし、むしろ中学時代とは相反して自分を大切にする牡丹に安心感すら感じた。


ならなんで?って?それはね……牡丹が高校デビューで王子様属性を獲得したことである。牡丹が王子様になって、そっち路線でいくんだ!って気持ちとか、何故か私の好みにドストレートで刺さる容姿とか…妹を妹として見れていなくて最近近寄り難いとことか…姉として色々思う所があるのです…。


噂をしていれば牡丹を見つけた。入学後心配で時々こうして牡丹の様子を陰から観察しているけど、多くの人に囲まれ昔なんて忘れさせるほど明るい笑顔にこう…姉として安心感を覚えているけど…なんだろ、妹を見ている気分にはなれない、例えるなら推しアイドルとか推しキャラを見て表情筋が崩壊するのと同じ感覚。


「……桃、奇遇だね、こんな所で何をしているのかな」

「あ……牡丹」


陰から見守る予定が……まぁ、でもバレてしまったものは仕方がない。そして相変わらずの桃呼びいつになったら姉として呼んでくれるのやら。


しかも陰からしゃがみながら見守っていたせいか少し変な目で見られている気がする、恥ずい……。


さりげなく手を差し伸べ王子らしい仕草を見せる牡丹、それに私は戸惑いながらも手を受け取り立ち上がる、すると周りが私のストーカー疑惑にあれやこれや疑問を問いかける。


まぁ、無理もないか、ストーカー仕草をしていた女と手を差し伸べる王子、彼女たちも牡丹にストーカーを近寄らせまいと必死なんだろう。


「私と桃はね家族ぐるみの関係でね、昔から仲が良いんだ、ほら」


私との関係を自慢するみたいに私を抱きしめ、首筋に手を回す。私は咄嗟の出来事に姉妹関係を忘れほてった体を何とか落ち着かせる。そしてそこでやっと牡丹の発した言葉に気がつく。


ん?てか家族ぐるみの関係って何?は?意味わかんないんだけど、私は生まれてこの方あんたの姉であったことしかないのに。捉え方を変えればその言い方でも間違いはないけど、私のことそんなに姉として紹介したくない?私そこまで嫌われてる??


「ふふ、そういうことだから、みんなごめん、少しだけ二人きりで話させてもらってもいいかな?」


周りの子達は皆私たちの関係を察した感じで顔を赤くしてその場を離れた。私はその子達に助けを求めるよう目配せをしたが返されたのは赤面のみ。


みんなもっと牡丹にガチ恋してよ!何離れちゃってるの!この牡丹の顔見てよ!すこしこわい!ひとりにしないで!!


皆が離れたのを確認して牡丹は再度こちらに目を向ける。監視してたこと怒ってるのか、はたまた別のことを考えているのか、王子となった牡丹の考えを読むのは難しい。


「……気にしないで、ただの厄介払いだから」

「……厄介払いって……じ、じゃあ私が監視してたことは?どう思ってる?」

「別に桃が私を近頃監視しているのは知っていたから気にしていないよ、どうせ私が心配とかそういうのだろう?」

「……じ、じゃあなんで厄介払いなんて?せっかく王子になったんだし、モテ期満喫したらいいのに」

「私はモテたくて王子なんかしてる訳じゃない、ああやって女子に囲まれるのが私は好きって訳じゃないんだ、でも良かったね、私と恋人って噂、桃はよく告られて迷惑してたし、桃と私って傍から見たらお似合いらしいし、周からの株も上がると思うよ」


確かにメリットだらけに聞こえる、私がガチ恋に殺されるリスクを除いたらな!最悪お互いのガチ恋がバトって構内が混沌とする可能性もあるのに…ほんとうちの妹はなにやってんだか…。


「だったらなんで王子なんてやってるの?」

「……そうだね、事前に言った方がいいか」

「?」

「桃私はあんたを王子として恋に堕とす、桃の学校での地位も名誉も姉としての立場も全部私に恋した暁にはないものと考えることだ」

「え、は、え?」

「言いたいことは言えたから私は失礼するよ」

「え、ちょ、え!???」


教室へ戻る牡丹を背に色々と考えを巡らせた。牡丹の対抗心、私たちの関係、姉としての立場。どの考えにもまとまった答えが見つからなかった。ただ中学時代の目標一直線の姿に比べたらいい傾向と捉えれるし、だからと言って私に対してそんな風に接するのも姉として止めるべきだと思うし…あぁもう、なんかいろいろめちゃくちゃだ!


そんな気持ちのまま授業をまともに受けられるはずもなく、だらだらと気持ちの整理を続け授業を過ごしていく私であった。

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