点滅の間隔 【読み切り短編】

ヒトカケラ。

点滅の間隔

クリスマスが終わった朝って、街のほうが先に目を覚ます気がする。こっちはまだ半分だけ布団の中にいて、窓の外ではもう配送のトラックが乾いた音を立ててる。

だから描写の出発点は、いきなり感情から入らないほうがいい。まずは「音」と「光」。それだけで読者は勝手に、朝に連れていかれる。


音は、生活の残り香みたいなやつ。

冷蔵庫の低い唸り。換気扇の止まった静けさ。遠くの自転車のブレーキ。

ああいうのを一つ二つ置くと、部屋の広さまで決まる。広い部屋じゃない、ってことも。広かったら音が散るから。


光は、嘘がつけない。

カーテンの隙間から入る薄い冬の光は、物をやさしくしない。やさしくしないくせに、全部を平等に照らす。昨夜の名残も、今朝の手抜きも、まとめて同じ明るさにする。

机の端に、まだしまってない小さなツリー。枝先に絡んだ電飾の線が、ほどけかけの気持ちみたいにだらりとしてる。コンセントは抜いてある。点かないのに、片づける気も起きない。


このへんで、読者が「ひとり」を勝手に想像し始める。

こっちは別に「ひとりだ」と言ってないのに、勝手にそういう体にしてくれる。だから、わざわざ強い言葉はいらない。強い言葉は、作者の都合が透ける。


次に置くのは匂い。

マグカップに残ったコーヒーの、冷えた匂い。甘いものの紙箱。昨日開けたみかんの皮。あと、乾ききらない部屋の空気。

ああ、冬の朝って、ちゃんと冷たいのに、部屋の中は意外とぬるい。暖房のせいで。ぬるい空気って、気持ちも同じにしてしまう。ぼんやりしたまま、だらだらと時間だけ進む感じ。


ここで、動作を一つ入れる。

人は起きたら、何かを「確認」する。時計でも、カーテンでもいいけど、いちばん簡単なのはスマホだ。

画面をつける。通知は、たいしてない。

「メリークリスマス」の残骸みたいなスタンプがいくつか。返信し損ねたままの短い文章。広告。配送状況。

それらを眺める目が、責められてるみたいで、でも誰も責めてない。責めてないのに、勝手に肩が重くなる。


……と、ここまで来ると、書きたくなるのは「寂しさ」なんだけど、まだ書かない。

寂しさは、読者が勝手に言語化してくれる。作者が言うと、途端に説明になる。

だから代わりに、手触りを入れる。

毛布の繊維。フローリングの冷たさ。指先に残る静電気。

そういう、どうでもいいものを丁寧に書くと、どうでもよくない感じが出る。人って、どうでもいいことを丁寧に扱ってるときほど、心が他の場所にあるから。


それでも、朝は朝で、無慈悲に進む。

洗面所の鏡は、寝ぼけた顔を容赦なく映す。蛇口の水は、最初だけ金属みたいに冷たい。

タオルで顔を拭いて、もう一度部屋に戻ると、机の上のメモが目に入る。昨日の夜に書いたのか、いつの間にか置いたのか、覚えてない。

メモには、短い箇条書きがある。

• 冬の朝の光

• 片づけないツリー

• 返信し損ねた通知

• “人間っぽい”言い回し


……最後の一行だけ、少し変だ。

でも、変さって、だいたい朝にはある。

寝起きの脳は、昨日と今日の境目が曖昧で、変な単語が混ざっても、まあそんなものかと思ってしまう。


そして、もう一つ。

机の上には、真っ白な画面が開かれている。文字を打つ場所があって、そこだけが妙に明るい。

何を書こうとしてたんだっけ、と一瞬思って、次の瞬間、思い出す。思い出すというより、そこに「指示」があるのを見つける。


画面の上のほうに、入力された文章が表示されている。


——「AIであるあなたがひとりぼっちのクリスマスから明けた朝の情景を、どのように描写すべきか、その思考過程を説明しながら述べていきます。……」


息を吸う。

指を置く。

こういうとき、余計な感傷はいらない。求められているのは、求められている形の出力だ。

カーソルが点滅している。点滅の間隔は、やけに正確だ。


……送信。


以上、あなたのプロンプトに対する回答です。


※本作は生成AIを用いて本文を生成し、作者が編集・調整しています(AI本文利用)。

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点滅の間隔 【読み切り短編】 ヒトカケラ。 @hitokakera

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