隣に引っ越してきたワケあり年下英国美少女のお悩み相談したらデレ甘になった件~普段はドライな彼女が俺の前でだけデレる訳~
むふ。
第1話
俺、
え?友達?友達は...まぁ、多い方ではない。クラスでのコミュニケーションの幅は狭いし、特別ユーモアがある訳でもない。
ただ、班分けとかグループ活動に困らないくらいに友人はいる。とだけ言っておこう。
「———?だり〜」
「もっと春休み長くていいのに...!」
学校に近づくにつれて、徐々に同じ制服に身を包んだ生徒が増えてきた。一人で歩いている虚しさの倍になるこの瞬間は、いつも心が苦しくなる。
本日のイベントは新入生の入学式。校門をくぐると、普段は先生たちの車が並ぶ駐車場が『新入生様駐車場』になっていた。何台かすでに車が止まっているのを確認して、校舎隣の体育館をみると、ぞろぞろとすでに登校した生徒たちが中へと吸い込まれていくのが見えた。
在校生は一足早く登校して会場設営をしなければならないからだろう。
突き当たりを右に曲がり、まだ春休みの名残を嘆く人の間を抜けて、去年から一つ隣にずれた靴棚で自分の名簿を探す。靴を脱いで顔をあげると、途端に校舎の木の香りがサッと鼻腔を駆けていく。
「お、彰夜。おはよ」
トントンと、肩を軽く叩かれて振り返ると赤茶髪のツンツン頭が目立つワイシャツの前ボタンを大きく開けた男性生徒がいた。
「おはよう
彼の名前は
俺みたいな陰キャと居ても面白いことなどないというのに、一年の時に同じクラスになってからというもの何かと俺を気にかけてくれるいい奴だ。
「今年もおんなじクラスでよかった〜。俺知ってる奴いないと友達作れねぇから不安だったんだよ」
「何言ってんだ。どうせお前はすぐ新しい友達作れんじゃん」
「それが案外難しいんだよ———って、そうだ!お前さっき見たか?」
「さっき?ここにくるまでなんかあったっけ?」
いきなりの橙里の質問の内容に、思わず俺は首を傾げた。ここにくるまでに見た物といえば、春休みの去る後ろ姿を嘆く生徒か『新入生駐車場』の看板くらい。特別目立つようなものは見当たらなかったはずだ。
「俺も聞いただけなんだけどさ、新一年生にくっそ可愛い子がいたらしいんだよ。ちょうどさっき上に行ったみたいだからお前見てないかな〜ってさ。なんか人だかりできるくらい人気だったみたいだぞ」
「人だかりができるくらい可愛い子?俺の審美眼がぶっ壊れてなけりゃそんな子は見なかったな…いや、そういえばなんか人だかりができてなかった気がしなくもないか」
橙里に言われて考えてみると、何だか人が数十人ほど不自然に固まっていたところがあったのを思い出してきた。妙に制服の着た在校生が多かったから、てっきり準備の一環かと特に気に留めていなかったがあれがそうだったのだろうか。
「にしても、人だかりができる新入生とかどんだけ可愛いんだよ…一年制なのは確かなのか?」
「それはたしかだぞ。四階に上がって行ったらしいし、在校生の一人に『新入生待合室はどこにありますか?』って聞いてたらしいから」
「じゃあ本当にウチの新入生なのか。ってか情報回るの早すぎだろ。なんで橙里はそんな詳細に知ってんだよ…」
「そこにいた大勢が一斉に噂広めたらそりゃあ伝わるのも早いわな。それこそ、もう教室でも噂になってんじゃね?」
「とりあえず俺らも準備行かないと。荷物おきに行こうぜ」
玄関での立ち話はここまでにして、俺たちも会場設営の手伝いにいかなくてはならない。期待の超絶美少女の新入生の話も気にはなるが、どうせ自分とは遠縁の存在なので別に橙里のようにソワソワもしない。
「ワンチャンうちのマネージャー来てくれたりしないかな!?」
「橙里が部員募集の広告をその子に渡しまくれば、部活見学に顔出しくらいはしてくれるんじゃね?あわよくばそのまま取り込んじまえば?」
「そう上手くマネさん確保はできないもんなんだよ。生徒会にはわからんだろうけどな」
「なら生徒会来たりしてな?」
「ぬかせ」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「冴島、愛斗」
「はいっ。」
「堺、沙良」
「はーい」
時は流れ、入学式本番。ちょうど先生がそれぞれの担任するクラスの生徒の名簿を読み上げている最中だった。俺はいつもより早い登校時間に合わせた、当然いつもより早い起床時間のせいで深い眠りに誘われていた。
本来は座り心地の悪いはずのパイプ椅子も、高級ベッドに思えるくらいの疲労感に眠気のダブルコンボは今の俺には効果抜群だった。自然と瞳が重くなって、何度か目を開けて抵抗するもあっさりと瞼を閉じてしまう。カクンカクンと首が上下して、もう完全に意識が飲まれ—————。
「
「……はいっ」
「!?————ぃあれ!?」
「おぉ————っゲェ!?」
「くっそか————」
「髪色——?」
(…?なんだ?やけに騒がしく—————)
意識が完全に飲まれる直前、先生がその生徒の名前を呼ぶと、ワッと周りが騒がしくなった。うつらうつらとしていた意識が眠気の狭間から一気に現実に引き戻され、重たかったまぶたをゆっくりと持ち上げる。
「...おわ、すんげぇ金髪。地毛...かな?」
遠くからでもはっきりと分かりすぎる、証明に照らされた金髪。眩しくて、艶がかっていて、染めたそれとはどこか一線を超えている。
周りのざわめきで何となく理解した。ちらりと橙里の方を見ると、「あの子だよ!あの子!」と言わんばかりに指を指して俺にアピールしてくる。
「生徒代表挨拶。霜凪冬花」
「はい。———— この度ご紹介に預かりました、霜凪冬花と申します。大変僭越ではございますが、新入生を代表して、ひと言ご挨拶申し上げます.....」
(すっげぇ美人さんだな。ハーフ、かな?)
彼女の存在感と周りの雑音に気を取られていると、いつの間にか点呼が終わり新入生代表挨拶に移っていた。
そしてそこで呼ばれた名前は、まるで当然のように金髪の女子生徒だったのだ。
俺たち一人一人に目を配り、緊張しているだろうに凛と声を張って丁寧に文章を読み上げていく。
彼女の碧羅の瞳に、整った容姿。一目見ただけで吸い込まれてしまいそうな彼女が纏うカリスマ性のあるオーラ。「いくら美人って言ってもねぇ?」なんて思っていた自分を殴りたくなるほど、彼女の容姿は万人が認める美少女だ。
(あの子、この後色んな学年クラスで噂になるんだろうな...)
なんて、的外れなことを考えていた俺も自然と彼女に惹かれて、次に夢から醒めた心地がした時にはもう入学式は閉会の挨拶にうつっていた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜
「ねぇねぇ!あの子めちゃくちゃ可愛くなかった!?」
「顔ちっちゃかった〜!ハーフかなハーフかな!?」
「生徒代表ってことは成績もいいってことでしょ?絶対モテるじゃん」
「おいあの子のアドレス貰いに行こうぜ..!」
「バカ!先輩がいきなり押しかけたら怖いだろうが!こういうのはゆっくり行くんだよ...」
「でもあんな美人、すぐに取られちまうぜ!?」
ザワザワザワザワ...
「まぁ、こうなるわな」
「お前の言ってた通りの美人さんだったわ。ありゃ人集りもできるのも納得」
「俺も人伝で聞いただけだから実物は初めて見たけどあれはモデル級だな」
俺の予想通り、教室中が美少女1年生の話題で持ち切りになっていた。早速彼女と繋がろうと必死に彼女のアカウントを探す男子、自分たちの部活に来てくれるかもしれないとキャッキャする女子。
「俺もワンチャン狙ってみようかな!?」
「ばーか。お
「ウソウソ。俺の一番はいつだって優亜だよ」
優亜、というのは橙里の彼女の名前。直接あったことがあるのは数回程度だが、あちら側が俺のことを随分気に入ってくれたようで、学校帰りのデートの待ち合わせにはだいたい連れていかれて優亜ちゃんと軽く話してから俺だけ別れるのが普通になってきている。
お互いに超がつくほどのバカップルっぷりで、見ている俺が胸焼けしそうになることが多々あるコイツが万が一にも浮気とかはしなさそうだが、念の為友人としてブレーキはかけておく。
「今日はこれで終わりだっけ?」
「だな。あと片付けは体育館使う部活がしてくれるらしいし。ご苦労さまって感じ?」
「それ俺らじゃねぇか。ちょっとは手伝えや生徒会ニート」
「うっせー。ちゃんとバイトしてるからニートじゃねぇし〜」
橙里は男子バスケ部に所属していて、今の三年生が引退してからはキャプテンとして日々部活を頑張っているようだ。俺はというと、特別やりたい部活が見つからなかった時ちょうど生徒会の勧誘に捕まって、そのまま成り行きで加わることになった。
活動は週2回、学園祭や体育祭といった学校行事以外は緩い部活で基本みんなでアンケートや議題をまとめたあとは、カードゲームをしたり雑談したりアニメを見たり。なんだかんだ一番自由な活動なのでないのだろうか。
「今日は生徒会は?」
「生徒会もバイトも休み」
「やっぱニートじゃねぇか」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
———ガチャ。
「っはぁ〜!疲れたぁ...午前だけとはいえやっぱ早起きするとその分寝みぃわ...」
学校は入学式のみの午前終了。徒歩数十分圏内のマンションで一人暮らしをしている俺は、帰宅後すぐにカバンを床に手放すとフカフカのウールソファに身を投げた。
「あー...これやべぇ、寝そう...」
溜まっていた疲れと眠気が一気に押し寄せてきて、身体がこれ以上動くことを拒絶する。夢の世界に呼ばれて、ウトウトと眠りに落ちかけた時不意に俺はあることを思い出した。
(そういや...今日....お隣さんが......ひっこ....)
「スゥ....スゥ.....」
今日、しばらく空き部屋だった俺の部屋の隣に、人が引っ越してくることを。
—————————
お疲れ様です。
試作でプロットの中にあった物の中で1番いいものを引っ張ってきてアレンジしました。もし伸びたら継続も視野に入れております
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