*108回の死亡者は、『!』『?』に推されている
おしゃかしゃまま
第1話 108回の死亡
107/108
命が失われる。
もう数秒だけしか残っていない。
それがはっきりとわかる。
悔しい。
あと少しだったはずだ。
でも、ここまでだ。
そして、これが最後だ。
107/108
これの意味すること。
108回までのコンテニュー。
それが終わる。
ここで終わる。
108/108
なった。
変わった。
世界が白く、いや、黒く、青かもしれない、赤かもしれない。
緑、黄色、わからない。ただ、終わりなのだとはっきりとわかる。
『おめでとう』
祝福の声だ。
『よくやった。108回の再試行。無駄の多い指導解説。再誕することで得る価値のない英雄譚。でも多少は成長しただろう。この声が聞こえる程度には、だが』
そして、嫌味な声だ。
人を、見下している。
『事実だからな。だからこそこんな退屈で……傲慢な試練ができるわけだ』
でも、気になる声だ。
知らない声だが、聞いたことがあるような声。
『どこかでお会いしたことが、ありますか?』
質問に、顔も姿も見えない声の主は、なぜか笑ったような気がした。
『終わりだ。108回の再試行。多少の成長は、しかしヒトの中では逸脱したモノになる。それは、ギフトであり、奇跡と呼ばれるモノだ。さて、何を選ぶ?』
視界の色が決まっていく。
世界が戻る。
久しぶりの『現実』だと感覚でわかる。
『……『*』なるほど。よほど気に入ったようだ……変態が』
だからこそ、この108回の夢は、ここで終わりだ。
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一週間後に、死ぬ。
PR7年4月27日。
感譚 果菜(カンタン ハテナ)、高校2年生。
彼女が朝目覚めたと同時に確信したことが、ソレだった。
(終わった……いや、多分始まった)
もう、どれほどの時間が経過したかわからないが、しかし『昨夜』の夢で、ハテナは108回の死を経験した。
恐ろしい夢だった。
現実感のある夢で、そして、全く現実ではない夢で、だが、おそらくは現実になる夢の話。
一週間後、とある場所で、いや、世界で、ハテナは無惨に殺される。
殴り殺されるのか、斬り殺されるのか、絞め殺されるのか、食い殺されるのか……それはわからないが、しかし、様々な死因で、ハテナは死ぬのだ。
(死にたく……ない!)
ハテナは布団から起きる。
このまま、引きこもり、死にたくないと嘆くだけの行為はすでに試している。
試して、死んでいる。
だから、ハテナは動くしかなかった。
108回の死の試行。
その中で導き出した結論に、ハテナは自分を委ねるしかなかった。
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