むぎちゃんと猫の集会

縦縞ヨリ

だいすきなあなたへ

 小学校に入って、ちょっとお姉さんになったむぎちゃんは、パパとママと、三びきのネコちゃんとくらしています。

 ある日、むぎちゃんがしゅくだいをしていると、ふかふかまっ白のプリンちゃんが、のしのし歩いてきて言いました。

「むぎ! お前もそろそろ大きくなったから、夜のしゅう会に行こう!」

 プリンちゃんは大体まっ白ですが、頭のてっぺんだけ黒くて、ぼうしみたいになっています。

 おでこの形がふじ山みたいでかわいいです。

 お外でくらしていたからか、ちょっとらんぼうですが、もの知りでたよりになります。

「しゅう会? お家の外に行ったことあるの?」

「あるさ! 毎日だって行くさ!」

「プリンちゃんはお外出ないでしょ?」

 ぷん!とはなを鳴らして、むぐっとした顔で、むぎちゃんのおなかにグリグリと頭をこすりつけました。

「パトロールは今だってちゃんと行ってる! 今おまじないをしたから、むぎも行こう!」

「むぎパトロールにいくの?」

 パトロールと言われてむぎちゃんはワクワクしました。おまわりさんみたいでかっこいいと思ったからです。

 でも、プリンちゃんは首をふりました。

「むぎにパトロールはまだ早い。よそのネコとケンカしなきゃならんから、あぶない」

「そうなんだ……むぎちゃんあぶないのはいやだな」

 ちょっとざんねんに思いましたが、プリンちゃんはまた、ぷん!とはなを鳴らしてうなずきます。

「しゅう会ならあぶなくない! モコとアンコも行くしな」

 モコちゃんとアンコちゃんは、手のひらくらいの時に家に来た兄弟ネコです。茶色と黒のシマシマがモコちゃん、黒いのがアンコちゃんです。

「みんなで行くならこわくないね」

 むぎちゃんはほっとしました。なかよしのみんなで行くなら大丈夫だと思いました。

 プリンちゃんははなをプスプス鳴らして、うなずきます。

「夜はなるべく頭を空っぽにして、体をネコみたいに丸めてねるんだ。そうしたらいっしょに行ける」


 夜、むぎちゃんはねる時間になりました。パパとママはまだおきているみたいです。

 おふとんに行くと、パパのおふとんで、ネコちゃんがねていました。

 プリンちゃんとモコちゃんとアンコちゃんは、みんなでおだんごになるみたいに、くっついてきもちよさそうにねむっています。

 むぎちゃんはふわふわモコモコのおだんごにそっとちかづくと、そのまん中にもふっと顔をうめて、とってもしあわせな気もちになりました。

 みんな、いつものことなので気にせずねています。

 むぎちゃんは自分のおふとんに入って、言われたとおりネコちゃんみたいに体を丸めて、頭をなるべく空っぽにします。そうしたら直ぐにねむってしまいました。

 

「むぎ、おきろ!」

 むぎちゃんがハッと目をさまし、きょろきょろあたりを見回すと、ママはとなりでねていて、パパはネコちゃんのおだんごをよけるように、せまそうにねています。

 むぎちゃんはびっくりしました。

「本当にむぎも行くの? ぼくたちは見えるからいいけど、お外はまっくらだよ?」

 アンコちゃんが、むぎちゃんのうでにスリスリしながら言いました。まっ黒の毛なみは、ツヤツヤでとってもキレイです。

「アンコちゃんはまじめだなあ。モコちゃんもいっしょだからへいきだよ」

 そう言って、シマシマのモコちゃんが、むぎちゃんのはなに、自分のはなをチュッとくっつけました。なかよしのあいさつです。

 むぎちゃんはまだびっくりしていました。

 ネコちゃんはみんなむぎちゃんのところにいるのに、パパのふとんにもねているネコちゃんがいるからです。

「あっちでねてるのに、何でおきてるの?」

 アンコちゃんは何でもないみたいに言います。

「体はねてるけど、心はおきてるんだ。ムギもそうだ」

「ええ? うわあ!」

 ふりかえると、後ろにねているむぎちゃんがいました。

「さあ行くぞ! ちこくしたらほかのネコにわらわれちゃうぞ!」

 プリンちゃんは、とじているまどをぴょんとすりぬけました。モコちゃんもそれにつづきます。

 アンコちゃんはむぎちゃんのよこについて、足にスリスリしてくれました。

「ぼくといっしょに行こう。だいじょうぶ。ちゃんととおれるよ」

 ムギちゃんはアンコちゃんをぎゅっとだきしめました。そして、ゆう気を出して、まどにとびこみました!

 

 お外はまっくらでした。ほんのちょっとだけのこったさくらが、新しい黄みどりのはっぱといっしょに、がいとうにてらされてキレイです。

 でも、やっぱりこわいです。

 くらい道のおくのおくは、何にも見えないまっくらがつづいていました。

「どこまで行くの?」

「かどっこ公園さ!」

 むぎちゃんは少しほっとしました。

 かどっこ公園はおうちのすぐ近くで、いつもあそんでいるところです。

 まっくらな道はこわかったけれど、ネコちゃんたちがぴったりくっついて歩いてくれたので、むぎちゃんは、なんとかすすむことができました。

 

 公園には、たくさんのネコちゃんがあつまっていました。十ぴきくらいでしょうか。ブチの子、ミケの子、しっぽがみじかい子、色々です。

 その中で一番大きい黒い子が言いました。

 アンコちゃんも黒ネコですが、アンコちゃんよりもっと大きい、どっしりした黒ネコです。

「おう、来たか! そっちはプリンの言ってた新入りか!」

「そうだ、サトウの家のネコで名前はむぎだ!」

 プリンちゃんがこたえました。

「むぎ、じこしょうかいをして」

 アンコちゃんに言われて、むぎちゃんはピシッとせすじをのばします。じこしょうかいは小学校でもこの前やったやつです。

「さとうつむぎです!」

 とっても大きいこえで言えました。いっぱいネコちゃんがいて、こわくなくなったからです。

「よし! こころえた! オレの名前はタイショウだ!」

 大きな黒ネコちゃんはタイショウちゃんと言うそうです。

「よし! 新入りも来たことだし、はじめるとするか!」


 公園のまん中で、しゅう会ははじまりました。

 タイショウちゃんがまん中で、みんなでまわりにあつまります。

 人のいないくらい公園は、お昼とぜんぜんちがって見えます。でも、ネコちゃんがいっぱいいるのでちっともこわくありませんでした。

「本日のぎだいは一つ! じんじゃにすんでるミーコが子どもを生んだんだ!」

 タイショウちゃんが言います。

「そいつはおめでたい!」

「いったい何びきだい!?」

 ほかのネコちゃんも口ぐちに言いました。アンコちゃんは、プリンちゃんの顔をペロペロなめてあげています。

「この、かどっこ公園しゅう会からも、ミーコに何かおいわいをおくりたいと思っている!」

 むぎちゃんは、プリンちゃんがうつむいているのに気がつきました。なぐさめるように、モコちゃんも耳の後ろをなめてあげています。何かつらいことがあったんでしょうか。むぎちゃんは心ぱいになりました。

 プリンちゃんが、ぱっと顔を上げました。モコちゃんはビクッとしましたが、アンコちゃんはすずしいお顔です。

「タイショウのダンナ、そのおいわい、サトウのいえのネコにまかせてくれやせんか! なあ、むぎ!」

 むぎちゃんはびっくりしましたが、タイショウちゃんに聞いてみました。

「えっと、何をあげたらよろこんでくれますか?」

「そうだな、ミーコはじんじゃの人にごはんをもらってるから、食べるものじゃない方がいいだろう」

 うーん。むぎちゃんは考えましたが、思いつきません。

 モコちゃんがにっこりわらって、むぎちゃんにスリスリしながら言います。

「みんなで考えて、つぎのしゅうかいにもってくるよ」

「よし、じゃあサトウのネコでたのんだぞ! では、今日はかいさん!」


 目がさめました。気がついたら、さっき通ったまどから、朝日がさしこんでいました。

 お父さんとお母さんは、もうおきているようです。

「むぎ、おはよう。きのうはおつかれさま」

 足元にいたアンコちゃんが、一番に言います。モコちゃんもあくびをしながら言いました。

「おいわい、どうしよっか?」

 プリンちゃんは、うつむいていましたが、やがてぷん!とはなを鳴らしながら顔を上げました。

「ミーコはオレの大じな友だちだ! 何か、子どものやくに立つものをおくりたいんだ!」

「プリンはミーコが大すきだもんねえ」

 そう言ったモコちゃんの頭を、プリンちゃんは丸いお手てでポンと叩きました。

「あいて!」

「ツメは出してない! みんなミーコに何をあげたらいいと思う? オレは……うーん、何にも思いつかない」

 プリンちゃんはくやしそうです。むぎちゃんはプリンちゃんといっしょにがんばってあげたいと思いました。

 モコちゃんが言います。

「小さい子があそべるおもちゃはどう? モコちゃんたちが小さいころあそんでたやつをあげたら?」

 モコちゃんとアンコちゃんはうんと小さい時からいるので、すずの入ったボールや、けりけりしてあそべるぬいぐるみものこっています。

「とりあえず、むぎが学校から帰ったらまたそうだんしよう」

 アンコちゃんが言ったすぐ後に、お母さんがむぎちゃんをよびに来ました。


 学校にいる間、むぎちゃんの頭は、きのうのしゅう会と、おくりもののことでいっぱいでした。

 ランドセルをしょって、分れ道でお友だちとバイバイしても、ずっと考えています。

 風がピュー! っとふいて、ぶるっとふるえます。四月ですが、まだまだ風はつめたいです。

 むぎちゃんはそこで、ふとひらめきました。

「あったかいおふとんがいいかもしれない!」

 

 家に帰ってくると、ネコちゃんたちは引っぱり出してきたおもちゃをかこんで、むずかしい顔をしていました。

 モコちゃんはシマシマの前足ですずの入ったボールをちょいちょいしています。

「やっぱりぼろっちいかな、お下がりであげてもいいかもだけど、おいわいはちょっとちがうかんじ」

「ぬいぐるみもワタが出てる。このままじゃあげられない」

 アンコちゃんはぬいぐるみをくわえて、ざんねんそうに首をかしげました。

 むぎちゃんに気がついたプリンちゃんが、しょげた顔で言いました。

「むぎ、おかえり」

「ただいま! あのね、むぎちゃんはおふとんをあげたらいいと思うんだ!」

 三びきはびっくりして顔を見合わせました。

「おふとん?」

「おうちにあるのをもってくのはちょっとムリじゃない?」

「むぎ、せつめいしてくれ!」

 むぎちゃんは、めいあんがありました。

 ようちえんのとき、ゆびあみでマフラーを作ったことがあるのです。

「毛糸で、あむんだよ! ゆびあみのマフラーをほどいて、子ネコちゃんのおふとんを作ろう!」


「ママ! あのね、むぎちゃん、ゆびあみをしたいの!」

「ゆびあみ? なつかしいね。何を作りたいの?」

「えっと……」

 しゅうかいのことはナイショ、とアンコちゃんに言われています。でも、ウソをつくこともできません。

「むぎちゃん、あの、おいわいをあげたいの」

 ママはちょっと首をかしげましたが、にっこりわらってうなずいてくれました。

「作り目を教えてあげるから、後はあそびながられんしゅうしてごらん」


 ママはむぎちゃんと一緒にマフラーをほどいて、くるくるまいて、毛糸の玉をつくってくれました。むぎちゃんの親ゆびくらいの太さの、ふわふわの毛糸です。

「その糸がおふとんになるのか?」

 プリンちゃんは毛糸玉を見てうずうずしながら言いました。

「おもちゃにしちゃだめだよ、とりあえずやってみよう」

 ネコちゃん三びきがまん丸な目で見まもる中、むぎちゃんはママに教えてもらったゆびあみをはじめました。

 ……が、みんなすぐに気がつきました。

「とってもほそいね。むぎちゃんのマフラーには出来そうだけど」

「……ちょっとふとんってかんじじゃないね、むぎちゃん、りょうほうの手をぜんぶつかって作ってみたらどうかな」

 アンコちゃんがそう言いましたが、りょうほうの手に糸があると、糸をすくうゆびがありません。

「りょうほうはむりかなあ、うーんどうしよう……」

 むぎちゃんもこまってしまって、一ど毛糸をほどきます。ちょっとしになっていたのが直ぐに毛糸にもどって、むぎちゃんたちはこまってしまいました。

 しばらくみんなで頭をかかえていましたが、やがてプリンちゃんがひらめいた! とばかりにぷん! と顔を上げました。

「みんなの前足をつかえば、もっと大きくできるかもしれない!」

 みんなびっくりしました。でもそれなら六本もゆび……いや前足がふえます。モコちゃんがとび上がりました!

「やろう!」

「ぜんぶとどくように、むぎがまん中がいい」

 アンコちゃんは、どういうふうにあみはじめるかをしんけんに考えています。

「おすわりしてるとぼくたちがくたびれちゃって上手くいかないかも知れない……よし! スフィンクスさくせんで行こう!」

 アンコちゃんは、高らかに言いました。

 さて、スフィンクスさくせんとは一体どんなさくせんなんでしょうか?

 

 むぎちゃんたちは、一人と三びきがぎゅうぎゅうにならんで、おなかをゆかにつけて、手を前に出しました。スフィンクスのポーズです。

 スフィンクスと言うのは、さばくの国にある大きなネコの石ぞうで、みんなでテレビで見たことがありました。

 むぎちゃんだけは、こしがつかれそうだったので、ぺたっとゆかにうつぶせになる形になりました。

 ちょっとくるしいかな?と思いましたが、ゆかには毛足の長いラグがしいてあったので、いたくはありませんでした。

 左から、モコちゃん、プリンちゃん、むぎちゃん、そしてアンコちゃんのじゅんばんです。

「よし、じゃあみんな、はじめるぞ! いきを合わせて、心を一つにしてやろう!」

 プリンちゃんのしんけんな声にみんなうなずきました。

 まずはモコちゃんの左の前足から、キツくまきついていたくないように、ていねいに毛糸をかけていきます。

「いたかったらすぐに言うんだよ!」

「うん!」

 モコちゃんもしんけんです。モコちゃん、プリンちゃんと毛糸をかけて、むぎちゃんのゆびは小さくて細いので、なるべくゆるく糸をかけて、さいごにアンコちゃんの左前足、右前足。そこからははんたいにすすんで、毛糸をあんでいきます。

「モコちゃんねむくなっちゃいそう……」

「ねたらダメだ! むぎががんばってくれてるんだから!」

 プリンちゃんがモコちゃんをしかるのを聞きながら、むぎちゃんは一生けんめい、太い毛糸をあみつづけました。

 

 どれくらい時間がたったでしょうか。

 うとうとしていたアンコちゃんは、右の前足がかるくなったことに気がつきました。そして、左の前足も。

「むぎ、おわり?」

「もうちょっとだよ」

 見ると、毛糸玉はほとんど糸がのこっていません。

「さいごはここにとおして、こっちにかぶせるの。マフラーといっしょだよ」

 アンコちゃんにとって、むぎちゃんのやっていることはまほうみたいでした。

 むぎちゃんの左の手からも糸がなくなり、プリンちゃん、モコちゃん。モコちゃんの左前足からさいごの糸がきえた時、モコちゃんはとび上がってかけ回りました!

「やっとおわった! すっきりした! このまま前足がかたまっちゃうかと思った!」

 プリンちゃんもつかれてしまったのか、ぺちょっとゆかにふせて、手をなめています。

「むぎ、がんばったね。どう? できた?」

 アンコちゃんが心ぱいそうに見ると、むぎちゃんはできたおふとんを、左右にひっぱって形をキレイにしました。

「見て、ちゃんと子ネコちゃんがねむれそう!」

 ネコちゃんたちはそれを見て、むねの中がいっぱいになってしまいました。

「すごい……!」

「まほうみたいだ!」

 プリンちゃんは、できた上がった小さなおふとんに、いとおしそうにひたいをすりつけました。太い毛糸なので、あつみがあって、とてもあたたかそうです。

「ミーコもきっとよろこんでくれる」

 むぎちゃんはママに教わって、その小さなおふとんを水であらって、ひらたく形をととのえて、お日さまの当たるところでほしました。

 かわくと、はしっこが丸まっていたのもきちんとまっすぐになって、かわいい四角い、ピンクのふわふわのおふとんができました。

 むぎちゃんはその小さなおふとんを、しゅうかいの前の日に、おにわのすみにかくしておきました。


 水曜日、しゅう会の日になりました。むぎちゃんは体を丸めてねむり、目がさめると、三びきのネコちゃんといっしょにまどから外に出ます。

 そして、おにわのすみにかくしていた小さなおふとんを、大切にかかえました。

 公園のしゅう会には、先週と同じネコちゃんが、みんなワクワクした顔で、むぎちゃんたちをまっていました。

「おう! サトウのいえのネコよ! えおいわいは見つかったかい?」

 タイショウくんが大きな声で言います。むぎちゃんたちはうなずいて、小さなおふとんを広げて見せました。

「みんなで、子ネコちゃんにおふとんを作りました!」

 おおー! っと角っこ公園はかんせいにつつまれました。

「すばらしい!」

「なんてあったかそうなんだ!」

 タイショウくんも、かん心したようにうなずきました。

「さいこうのおいわいだ! きっとよろこぶだろう! よし、ミーコには言ってあるから、サトウのネコで今からとどけてやってくれるかい?」

「うん! おいら、ミーコにわたしてくる!」

 プリンちゃんは、力強く言いました。むぎちゃんたちもうなずきます。

「むぎ、じんじゃまでの道はくらいよ? むぎだけまっててもいいんだよ?」

 アンコちゃんはそう言ってくれましたが、むぎちゃんは、いっしょに行くことにしました。


 じんじゃまでの道はくらくて、でもむぎちゃんは、ちっともこわくありませんでした。大すきなネコちゃんといっしょなら、どこへだって行けると思いました。

 長い石のかいだんは、ざわざわ木がおおいかぶさって、今にもおばけが出そうです。でも、前にはプリンちゃんがはずむように走っていて、よこにはモコちゃんとアンコちゃんがいてくれました。

 やっとじんじゃにつくと、赤いとりいの前に、クリーム色のネコちゃんがいました。

「ミーコ!」

「プリン、来てくれたのね」

 プリンちゃんはミーコちゃんにコツンとひたいをぶつけて、はなをくっつけました。

「ぶじに子どもを生んだおいわいだ、みんなでつくったんだ」

 むぎちゃんは、ミーコちゃんにピンクのふわふわのおふとんを見せました。

「まあ! なんてかわいいおふとん! 子どもたちもよろこぶわ、あったかそうだもの」

 プリンちゃんは少しうつむいて、ぷん! とはなを鳴らして顔を上げて、言いました。

「ミーコはオレの大切な友だちだ! かぜひかないように、元気でいてくれ!」

「ありがとう、わたしの大切なプリン」

 ミーコちゃんはプリンちゃんの顔を、ペロペロなめました。むぎちゃんは、それを見て、なんだかむねがいっぱいになってしまいました。


 ふと、むぎちゃんが目をさますと、プリンちゃんが顔のよこにくっついていました。

「むぎ、ありがとう」

 そう言ったプリンちゃんのふわふわの白い毛をなでて、むぎちゃんはまた、朝までねむってしまいました。


 日曜日、ママとむぎちゃんはじんじゃに行きました。なんでも、子ネコが生まれたから見おいでと、さそわれたそうです。

 むぎちゃんは子ネコのことを知っていましたが、見てはいなかったので、よろこんでついて行きました。

 もちろん、夜にじんじゃに行ったことはヒミツです。

 ミーコちゃんは、むぎちゃんに気がつくと、ニコッとわらいました。むぎちゃんも小さく手をふります。

 ころんとねころんだミーコちゃんのおなかで、むぎちゃんの手のひらくらいの小さな子ネコちゃんが四ひき、ふみふみと前足でおしながら、いっしょうけんめいおっぱいをのんでいます。

「子ネコちゃん、かわいいねぇ」

「あら?」

 ママは、ミーコちゃんと子ネコちゃんの下に、ピンク色のおふとんを見つけました。

 みんなであんだ、あのおふとんです。

 ママはやさしくわらいました。

「むぎちゃんのお友だちは、ミーコちゃんだったのね」

「うん!」

 むぎちゃんは元気にうなずきました。むぎちゃんたちから、ミーコちゃんへのおくりものです。

 でも、ネコちゃんたちとみんなであんだのは、ママにはナイショですよ。


おしまい

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むぎちゃんと猫の集会 縦縞ヨリ @sayoritatejima

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