視線
くちびる
本文
なぜ、私を見ているのだろうか?
有象無象の雑踏に紛れた存在にも拘わらず、
なぜ、私にだけ視線をぶつけているんだ?
彼らは、正面から嘲笑するように。
すれ違いざまに横目でギロッと。
そして……後ろから噂するように。
私の一挙手一投足に呼応し、たくさんの目が私を捕らえて離さない。
視線が痛い。
息が苦しい。
早く逃げないと。
視線は、いつでもそばに。
怖い。
怖い。
どうして。
どうして私なんだ。
そんなに、面白いか?
そんなに、私は奇怪か?
心の底では、きっと俺のことをあざ笑ってるんだ。
あぁそうか、やっとわかった。
毎日すれ違うあいつも。
欠かさず挨拶してる近所のあいつも。
職場のあいつも。
俺に関係する全員。
俺が無抵抗なのをいいことに。
全身めった刺しだ。
数えきれないほどの見えない傷が、心を蝕む。
もうやめろ。
限界だ。
誰も、味方してくれないんだな。
誰も、俺の中身を見てくれないんだな。
誰か、俺の体を引き裂いて、中身をぶちまけれくれ。
それできっと、俺が正しいってことがわかる。
視線はもう、十分だ。
おい、そこのお前。
お前は……どっちだ?
視線 くちびる @Deckbrush0408
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