第10話 基本に戻る、みたいな感じでゴブリンに戻るとは……



「では、このくらいの小さな壺で考えましょうか」

「なるほど、そういう感じでいいんですね」


 あの小さな壺で金貨1枚とか、ありがたい。

 ぼったくられてる可能性もあるけど、少なくともカイラッドさんはそれ以上で売れると考えてるって話だ。


 そもそもカイラッドさんはすごくいい人だったし、ぼったくられてない可能性もある。


 ボクが言いたいことを察してくれたというか……ジャイアントビーのハチミツの取引について一緒に考えてくれた。


 正直なところ、ボクには相場とかそういうものは全然分からないので、やってることに対してこのくらいもうかってるというのが納得できればそれでいい。


 ……従業員というか、労働者は全部テイムしたモンスターがやってるし。元手はそんなにかかってないから。


 いずれハチミツでカイラッドさんがすごくもうけたとして。

 その時にはボクが売る値段を少しアップさせればいいんじゃないかって思ってる。


「……それにしても、すごいですね。フクロフクロウというのは」

「ああ、ボクとしてもありがたい従魔ですよ」


 ハチミツの取引を決めた後で、フクロフクロウを呼んだ。

 ジャイアントビーに呼びに行かせたというか。


 とりあえず首輪も付けたし、従魔として登録されてると思っていいはず。


 そしてこのフクロフクロウは、ミカゲによると空間魔法を使ってるらしい。

 とにかく、自分のお腹の袋に何かを入れておくことができるというフクロウの魔物なのだ。


 今回はハチミツの入った木皿を入れてるフクロフクロウを呼んだ。

 ハチミツを売るためだから。


 無限という訳じゃないけど、その袋にはかなりたくさんのものが入る。

 それに……そのまま飛べるという部分が、可能性に満ちてる。


 ……テンプレ的にボクがアイテムボックス持ちだったら簡単だったけど、このフクロフクロウのお陰で他の方法も考えられるからな。


 いつかはやりたい、フクロフクロウ便での流通革命。


「……確かにエニシ殿が言うような……魔物使いの新たな可能性というものが見えた気がしますよ」

「それは……よかったです」

「しかし……命がけの努力、か……エニシ殿以外の魔物使いを雇ったとして、フクロフクロウを従魔にできるところまで努力できる者がいるかどうか……」


 うん。

 たぶん、いないと思う。


 でも、それは言わない。


「……ボクが可能性を見せることで、やってみようと思う魔物使いの方が現れることを願うばかりです」


 いい人であるカイラッドさんには綺麗ごとを伝えておく。


 本音の部分では、ボクが目立ちまくってあの国の連中が悔しがればそれでいい。

 でも、魔物使いの地位向上については……そうなるんなら、なった方がいい、くらいには思ってる。


 やっぱり見下されるっていうのは腹が立つ。

 ボクの場合はブラックベアーのキンタがいるから、怖がられるくらいだけど。


 普通はゴブリンとかスライムっていうんなら……うーん。

 ラノベ的視点からだとスライムで清掃作業っぽい活躍くらいしか思いつかない。


 そういうのも……少しずつ考えていくべきかもしれない。

 将来的には、魔物使いギルドとか、うまくいけばアリだけど……今の状況だとそこまでは期待できないから。


 でも、カイラッドさんは新たなアイデアもくれた。

 どうやらグリーンウルフにも新たな可能性はあるらしい。


「それじゃあ、グリーンウルフの毛を集めるようにしますけど……それを糸にしたり、布にしたりって部分は本当にお任せでいいんですね?」


「ええ。本当は皮ごと欲しいところですが、さすがに生きたまま皮を剥ぐなんてことはできませんからね。抜け毛だけでも、染色せずとも緑の糸や緑の布になるので、いい商売ができると思いますよ。特別感もありますし」


 羊毛ならぬ、狼毛での繊維産業、か。


 カイラッド氏は分かってないけど……ボク、森の中で200匹以上のグリーンウルフを放し飼いしてるから。


 本気で抜け毛を集めたらすごいことになるんだよな。


 でも、ブラッシングして抜け毛の回収をしないとダメか……。

 ホーンラビットとか、ブラックベアーとかじゃできない作業だな。


 そうなると……オークとか、ゴブリンとかもテイムした方がいいかもしれない。

 武器が操れるくらいなら、ブラッシングで抜け毛を回収するくらいの作業はできるだろうし。


 ……一周回ってゴブリンのテイムが必要になるとは予想してなかった。






「それではこちらが冒険者証になります。それとこのタグをネックレスとかブレスレットとかにして身につけておいてください」

「ありがとうございます」


 翌日、ボクは冒険者ギルドにやってきた。


 特にボクが絡まれたりすることもなく、普通に窓口で冒険者証とタグを受け取って終わりだ。


 なんか不思議な古代の魔法でできたカードとかじゃなくて、表彰状みたいな感じの証文が冒険者証。ラノベのイメージとは違ってて残念ではある。

 タグは金属製で……たぶん銅製だけど、ボクの名前が書かれてるっていうか、彫られてる。


 昨日の門番のところで登録書類を書いて、今日すぐにタグができてるってすごいかもしれない。

 そういう彫師を冒険者ギルドで抱えてる可能性もある。


 ボクのランクはGで、一番下だ。一番上はAランクで……残念ながらラノベ的Sランクとか、SSランクとかはないみたい。


(……ご主人さま。この後は森へ戻るのじゃな?)


 小声で耳に囁くミカゲに小さくうなずきを返す。

 相変わらずバックハグでの大しゅきホールド状態だ。おんぶしてるともいう。足を絡めてかかとで股間にイタズラしてくるけど。


 昨夜はいっぱい抱きしめた。

 初めて人を殺したって部分もあったのかもしれない。そういうのを全部まとめてスッキリさせる感じで……いつもと違ってボクの方が積極的に頑張った。


 必死に声を我慢するミカゲが可愛かったというのもある。もちろん、声を出すミカゲもいいんだけど、カイラッドさんのところだったし。


 やっぱりミカゲがいなかったらボクはとっくに壊れてたんじゃないかと思う。


 出入り口付近の掲示板で、依頼票も確認してみる。

 テンプレのいざこざは起きない。ラノベみたいな粗暴さはここのギルドだと感じない。こういうものなのかもしれない。


 町中の依頼なんかもあるけど、基本的には外の依頼が多い。

 カイラッドさんも冒険者ギルドで護衛依頼を出していたって話だった。


 あとは……常設の討伐依頼。

 ゴブリンとかオークとかの鼻を持ち帰ればいいらしい。オーガはツノ。


 オークはできれば丸ごと持ち帰ってほしいみたいな感じ。狙いはたぶん肉だな。


 オーク肉については……すごく雑だけど、ブラックベアーが馬鹿力で解体して肉にしてる。ナイフとかは当然使わずに、自前の爪でやってる。


 こういうのもゴブリンにさせるようにした方が器用な気もしてきた。


 なんか、魔物使いは最弱のゴブリンしかテイムできない、みたいなことを言われすぎて……ゴブリンに偏見があったような気がする。


 ボク自身がもっとものの見方を変えていかないとダメだな。


 でも流石に、オークにオークの解体をさせるようなマネはしたくない。

 あと、オークを繁殖させてオーク牧場みたいなのもちょっと嫌だけど……。これに関してはやっても仕方がないかもしれない。


 やはりそこはゴブリンか。戦闘だと弱いけど、道具が使える器用さで活躍させるならアリだよな。


 とにかく、森の奥に戻って……動物王国にゴブリン作業空間を用意しよう。





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