第7話 効き目があるかどうかも分からない壮大な嫌がらせ
「森の奥の山脈での野営生活なのに割と快適だな」
「宿屋のベッドの方が快適ではあるのじゃが、ご主人さまとむつみ合えるここでの暮らしも悪くないのじゃ。くふふふふ……」
基本的にはボクとミカゲのテント性活だ。いや、正しくはテント生活だけど。
ミカゲみたいな言葉を話せる魔物のテイムはできてないけど、動物・昆虫の混成軍団をボクは形成していた。
お目当てのフクロフクロウもすでに数羽は確保できてる。
食事はホーンラビットの肉とジャイアントビーのハチミツが基本で、あとはロングテールモンキーが採ってくる果物なんかもいい感じ。
今は軍団を分割して編成した上で、いろいろと王都に向かって嫌がらせをしてる。
ブラックベアー3頭をリーダーとしてそこにグリーンウルフを9匹とジャイアントビーを6匹というグループをいくつか作る。
基本単位はブラックベアー1、グリーンウルフ3、ジャイアントビー2、だ。それを3つ分でひとつのグループにしてる。
今のところ第12グループまでは編成済みだ。
それぞれのグループは広大な森の中で、まず王都に近い森の浅いところに残ってしまったホーンラビットを狩っていった。
ボクの匂いが届かなかった範囲のホーンラビットだな。
これでボクがいる山脈に近い森の奥地にしかホーンラビットはいない。
王都の近くにいたとしても、ごくわずかだ。
だからまず、王都の庶民の食卓から安くて美味しい肉がなくなっていくはず。
グリーンウルフも食べられなくはないけど、ミカゲに言わせればわざわざ食べるような肉ではないそうだ。
ちなみにグリーンウルフも王都付近の森にはほとんどいないと思う。
ホーンラビットを王都周辺から狩り尽くしてしまった後は、ホーンラビットがいなくなって空いたところにゴブリンを追いやった。
もちろんゴブリンの肉はグリーンウルフ以上に食べたくないような肉だ。
森の中に点在していたゴブリンの集落を攻撃させて、ゴブリンは殺さずに森の浅いところへと追い込んでいく。
これはボクのところにゴブリンを近づけさせないって意味もあるけど、もちろん王都の近くにゴブリンを増やすという嫌がらせでもある。
ゴブリンは人を襲うから、森の浅いところに戦闘力が低い者は近づけなくなるはずで、そうすると森の恵みが手に入りにくくなる。
「まあ、あいつらは小麦とかの穀物メインで食べるから関係ないかもしれないけど」
「そうでもないのじゃ。やはり肉は好まれるのじゃ。それに薬草集めなどの初歩の森仕事が難しくなったのも地味に暮らしへ影響を与えるのじゃ」
「ミカゲが噂を流してくれたし、庶民の不満もたまってるみたいだから面白いよな」
ミカゲは透明化できるので、声だけで流言を広めることができる。
どこかで耳にした話だけど……って感じになるのだ。
ある意味で情報戦ならミカゲは最強かもしれない。
そんな感じでゴブリンを森の浅いところに追いやってからは……軍団はオーク狩りを頑張ってる。
本来ならグリーンウルフだけだとオークはまず倒せない。
ところがジャイアントビー、グリーンウルフ、ブラックベアーの組み合わせだとこれがうまくいく。
ジャイアントビーが頭上から麻痺毒で牽制して足元を疎かにさせ、その足元と腕なんかにグリーンウルフが噛みついたところで動きを封じて、ブラックベアーの打撃力でガツンと破壊する。
そうやって少しずつ単独行動するオークの数を減らしながら、オークの集落も潰していく予定だ。
本能でボクに近づいてくるからどうしようもないっていうのと、オークの肉は美味しいというのがある。
王都の方へ追いやってオークという食べ物を増やしたくないという狙いもある。
そうやって確保した食料は空軍補給部隊となってるフクロフクロウがキープしてくれてる。
普通の『魔物使い』ならまず乗り越えられないオークとの戦闘があっさりとできるボクはやっぱりチートが入ってると思う。
「たぶん、見えるようになってないだけでレベルアップはあるんだよな」
「レベルアップという概念はご主人さまに教えられてよく分かったのじゃ。分かりやすい成長の概念なのじゃ」
「テイムした魔物の送還と召喚とかもできるようになったし、『魔物使い』としてのスキルみたいなのもたぶん、あるはず」
「あれは……まさに別世界の感覚なのじゃぁ……」
送還と召喚を覚えたと認識した時、ボクはまずミカゲで実験させてもらった。
ミカゲによると送還された先は不思議な空間で、お腹もすかない(ミカゲの場合は精力を必要としないという意味で)し、時間の流れもまったく気にならない場所だったそうな。
そこから召喚されたら小さな魔法陣に落とされてボクの隣に立ってたらしい。
ミカゲによると送還と召喚にも魔力の動きを感じるらしいので、ボクが魔力を消費してるんだろうと思う。
でもこの送還と召喚を利用すれば……その気になったら王都で魔物テロなんかも引き起こせる訳で、かなり有効な手段でもある。テロなんかはやらないけど。
ボクがその場に乗り込むことになるし、そんな危険はちょっと嫌だから。
それよりも……ジャイアントビーとロングテールモンキーによる第三の嫌がらせの準備もできてる。
既に訓練を繰り返して、空挺団は組織されつつあるからな……。
「王都で騒ぎが起きても、ボクが疑われる要素はない。動物的暗視能力ってすごいよね」
「そんな嫌がらせに嬉々として目を輝かせるご主人さまは素敵なのじゃ……あぁ。今すぐ抱かれたいのじゃ……」
そう言いながらボクにくっついてくるミカゲ。
最初は戸惑いもあったけど……ある程度エッチなことに慣れた今ではミカゲの温もりがボクを支えてくれてるんじゃないかって思うくらい、ミカゲには助けられてる。
ミカゲを偶然テイムできてなかったらそもそも死んでたと思うし、死ななかったとしても頭がおかしくなってたかもしれない。
そういうことを考えると……召喚された他の人たちにハニトラの女の子が送り込まれてたのって、ハニトラってだけじゃない理由もあったのかも、しれない……。
……ボクにはハニトラはなかったけどな!?
数日後、訓練は十分やった上で、ボクは夜中の王都に空挺団を投入した。
月明りの下をジャイアントビーが飛ぶ。
ジャイアントビー2匹でロングテールモンキー1匹を運び、王都の中へ投下する作戦だ。
合計100匹のロングテールモンキーが王都の闇にまぎれる。
目的は金品を盗むこと。
あと、場合によっては食料も盗むように指示は出してる。
回収はフクロフクロウ部隊が待機してる。
盗品をフクロフクロウに預けたら、ロングテールモンキーはジャイアントビーと合流して脱出。
盗まれたという騒ぎが起きれば、衛兵なんかが忙しくなるだろう。しかも、同時に何カ所も、だ。
それによる王都の混乱も狙う。
怪盗ロングテールモンキーは証拠も残さず、多くの家から貴重品や食料を盗み出すからな。
王都民は身近な人間を疑って……疑心暗鬼に陥るはず。
だから何ってくらいの嫌がらせだけど、これはボクが別の国へと旅する時の食料だったり、移動した後の換金用の資産だったりする訳なので。
まあ、王城への侵入は危険そうだからロングテールモンキーにはやらせないけど、庶民に被害が出ればあとは噂で王家への不満を高めていけばいい。
ちなみに、最終的には王城にミカゲが侵入していろいろと高価な物も盗んでくる予定ではある。
ミカゲは有能だから心配してない。
元々、ボクに襲いかかった時もあそこまで侵入してたんだし、王城で捕まるようなことはない。
「さあ、夜空の大怪盗作戦、開始だ……」
「……ご主人さま。作戦名はもう少しなんとかならんかったのじゃ?」
ボクの体をまさぐりながらのミカゲのツッコミをボクは無視するのだった。
あ!? 無視したからってそっちに指をツッ込むのはやめて!?
あああっ!?
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