この世界だと最弱職と言われる魔物使いだけど召喚勇者が魔物使いになると少し違うようです ~え? 少しではない? まあ、そのへんは誤差だろ?~

相生蒼尉

第1話 どうやらいきなり追放系のストーリーらしいから泣けてくる



「……むぅ、最後の一人は『魔物使い』か」

「うむ。こんなことになるとは……全てがうまくいくとは限らんものだな……」


「……あの、『魔物使い』だと何かダメなんでしょうか?」

「あ、いや……まあ、そうなるのだが……」


 ボクの疑問に魔術師っぽい人が言葉を濁す。嫌な予感しかしない。


 突然の異世界召喚。


 高校生のボクはたまたま廊下にいた数人の生徒と一緒に、なんだかよく分からない魔法陣に引きずり込まれて異世界にやってきた。


 ここにいる魔術師っぽい人たちにいろいろと水晶みたいなのを触るように言われて、他の人たちが『勇者』とか、『賢者』とか、『聖騎士』とか、そういう感じでやったぞ大成功だ的な大騒ぎになった後で――。


「……我らの間では最弱職と言われておる」


 ――なぜかボクだけが最弱職の『魔物使い』になってしまった。


 その結果、この場の空気もなんか感じが悪い。


 おかしい。ボクのラノベ知識だと『魔物使い』はそれなりにいいジョブなのに。

 ゲームでもテイマーとかは一部で人気があるのに!?


「あいつ、『魔物使い』だってよ」

「最弱職とか言われてんじゃん」

「え、マジか。ちょっと憧れてたのに『魔物使い』って。なんかカッケーじゃんか。でも最弱職なんだ? なんで?」


「……考えてもらえば分かるが、我らの世界では戦うことによって強くなる」

「レベルアップってヤツか」

「……そのレベルアップというのが何かは分からんが『魔物使い』は従えた魔物を戦わせることになる」


「ま、そーだろ」

「ドラゴンとか?」


 そうだ。

 ドラゴンとか、そういう魔物をテイムすれば――。


「いや。そもそも『魔物使い』が従えられる魔物は最弱に近いスライムやゴブリンなのだよ」

「え? そーなの?」

「弱そうじゃん」


「その通り。だが弱い魔物を使って倒せるのは弱い魔物だけ。ゆえに……『魔物使い』が強くなることはないのだ……」

「マジか……ヤベぇな」

「異世界で弱いままとか地獄じゃね?」


 ――そんな、バカな。


 ボクを抜きにして他の人たちと魔術師のじいさんが話してる。

 というか、魔術師の人たち、ボクには全然興味がないらしい。


 会話はそのままボク抜きで進む。


「さらには……」

「まだあんのかよ!?」

「ある……『魔物使い』は魔物を引き寄せるというか、魔物に好まれるというか、テイムできた場合はともかく、それができなかった時には……ただただ危険を呼ぶだけなのでな……」

「うわー悲惨じゃね?」

「こりゃ死んだな……」


 ……勝手に殺さないでくれ。


 でも、この世界の『魔物使い』がそういうものだったならボクは既に詰んでない?


「でもよぅ、さすがにかわいそーじゃね?」

「だな? なあ、おっさん。誘拐みてーなマネしたんだからよ、せめてちょっとくらい金をやるとか、それくらいはしてやれよな」


 おう。意外と親切なヤツでちょっとびっくりだ。

 名前も知らないけど、一応、金の心配くらいはしてくれるらしい。


「……ふむ。『勇者』殿の言葉は確かにそうかもしれぬ。その方、どうだ? 金貨を10枚……いや。金貨30枚で解放してやろう」


 いきなり追放系の巻き込まれ召喚!?

 解放って!? なんか違うし!?


 お金もらってここに住むんじゃないの!?


 いや、だいたいラノベだと追放のその先には圧倒的な無双と完全なるざまあが待ってるんだけど!?


 でもこの世界だと『魔物使い』って最弱なんだろ!?

 どう考えても無双は無理だよな!?


「王都のできるだけ外壁よりも離れたところで……住むところもしばらくは用意しよう。外に出なければ魔物を呼び寄せることもないのでな。『魔物使い』になった者はだいたいそのあたりでひっそり暮らしておるか……どこかで死んでおる……」


 不吉すぎるだろ!? 脅しかよ!?


「あの、ここでずっと養ってもらうとかは……」

「働きもせずにか? 流石にそれは無理な話だな……」


 ボクの要望は即座に否定された。


「まあまあ、おっさん。金貨50枚くらいは出せるんじゃね?」

「むぅ、それは……できなくはないが……」

「なら50枚でどうにかしてやってくれよ。よく知らないヤツだけど」

「ふむ。『勇者』殿がそこまで言うのであれば……よく知らぬ者にも慈悲の心を持つなど流石は『勇者』というところか」


 うぅ差別というか、区別というか……『勇者』の要望は聞き入れるのかよ……。

 せめて金貨100枚とかにしてくれればいいのに!?


「だってよ。よかったな、50枚で」

「そーそー、感謝しろよー」

「がんばれよ~」


 ボクとは別に友達でも何でもない、互いに名前も知らない相手だ。

 微妙に手を貸してはくれたから、そこには感謝しとこう。


 ……でも、このままだと死ぬかもしれない。まあ、王都の中で暮らせば魔物には襲われないって話ではあるけど!?


 いや、でも「がんばれよ~」とか、そんな軽いノリかよ!?

 30枚から50枚に増やしてくれた分はマジで感謝してるけどな!


「……せ、せめて」

「なんじゃ?」

「今夜くらいはここに泊めて下さいよぉぉぉぉぉっ!?」


 ボクの渾身の叫び。

 みっともなく泣きながらの叫びだ。恥とか知らない。そこはどうでもいい。


 これには流石に魔術師の人たちも……折れてくれた。

 それで今夜だけは泊めてもらえることになった。泣き叫んだ価値はある。


 こうしてボク……平沢えにしは、明日の朝にここ、王城から追い出されることが決まった。





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