落ち葉が舞う頃に

@IZMNK

第一章 戦線離脱

あれは、まだ幼かったころの記憶だ。

僕達の故郷で君と緑から赤と黄色に染まった景色を見た、それはとても美しかった。

あの景色をまた君と見られたのなら。


第一章


ある日の昼。

山岳の中で自然界では聞こえない音がする。鳥も虫すらも逃げていった。


バババッ


機関銃の音が耳を裂く。

僕の名前は伊達 晃(ダテ アキラ)、第七分隊の副分隊長だ。

今は盆地にある敵の補給地点に攻撃をしているところだ。

僕と他3名で攻撃している、第七分隊はその強さは僕らの祖国イズルス帝国で有名であり、上層部は僕たちに無茶を押し付けたというわけだ。

塹壕の中を警戒しながら進んでいると、

分かれ道の右からコロンと目の前に手榴弾が落ちてきた。

僕は咄嗟に隣の塹壕部屋に入った、次の瞬間手榴弾の爆発音が響き渡った。


「こっちだ!!」

敵兵が近づいてきている、

戦闘は一瞬で決めないと敵兵が続々と来てしまう。

僕は腰につけてる刀を抜き、バッと塹壕部屋から飛び出した。

前には敵兵が2人、僕は一瞬で断ち切った。


「ん?」


切った敵2人の100メートル先に一個中隊と言っても過言ではない量の敵兵が

コソコソと茂みの中に戦車隊と共に入っていくのが見えた。

どういうことなのかと様々な考えが頭をよぎる中、分隊長が走ってきて言った。


「おい!晃!敵が多すぎる撤退するぞ!」


耳を劈くような敵砲撃による轟音の中、

分隊長が言ったのを聞き、私は他の仲間に聞こえるように叫んだ、


「分かりました!シオ!退避だ!退避!」


そうすると、草むらからひょこっと出てきたシオが言った。


「まだ戦えます!副分隊長!」


まだ血気盛んな若い小銃兵シオだ。

彼はまだ戦えるというが、その身なりはボロボロになっている。


「いやダメだ。ちらっと見えたが敵の大部隊が来ていた。

  このままの交戦は危険だ一旦引くんだ。」


私は、まだ戦えるという彼には申し訳ないが退避の命令を出した。

しかし不思議だ

そもそも立地が悪すぎる。

敵陣には土嚢など隠れるものがあるがこちらは草むらや木ぐらいだ。

山岳の盆地地帯だ、いつ囲まれるかもわからない。


ピピー!


分隊長の笛、退却の合図だ。

シオと分隊長と俺は一斉に後方へ駆け出した。

しかしそんな様子を見た分隊長は反転して追っ手に応戦していた。

分隊長は部下思いな人なのだ。


しかし、敵の一人が土嚢の影から飛び出し分隊長に銃剣突撃をしてきた


「ウォー!!」


敵兵の声が響く、駄目だ、間に合わない。

その時


パンッ!


聞き覚えのあるスナイパーライフルの音だ。

分隊長に突撃していた敵兵はその場に倒れた。


そのお陰もあり自分たちは後方へ退却した。

数キロ離れれば砲弾も届かない.....はず。

歩くしかないなぁ、心の中では少し苦に思えた。


夕暮れ時。

4キロ離れた先に野営テントを立てていた。

分隊長は常にどこでも寝れるように野営テントは持ち合わせている。

一応、中肉中背のおっちゃん兵士でも不眠が一番の敵だとは知っているようだ。


「副分隊長、このオレンジの棒は立てるんですか?それとも横にするんですか?」


シオが僕に尋ねてきた。


「そのオレンジのは、テント本体に接続して、その上にこの屋根になる布を被せれば

 完璧だ。」


「はい!分かりました!」


シオは16歳という若い年の兵士だからテントを立てて入って寝るよりはいい感じの草むらを見つけて寝袋に入って寝るだけでも疲れは取れるからな、


「若いっていいな、」


気づいたら口から出ていた、その言葉にシオは笑みを見せた。


「何言ってるんですか、副分隊長もまだ19歳ですよね?副分隊長もまだ若いです!」


目を真ん丸にしてこっちを見つめるシオを見て癒やされている今日この頃。

さっきまで戦っていたというのに疲れを見せないシオの良いところだ。


「お〜い、煙が出にくい木を選んで来たぞ〜」


そう言ってドサッと燃やす用の薪を持ってきたのはヒデタダ分隊長。

自分の分隊、第7分隊の隊長。またの名を”モグラ分隊長”と呼ばれている。


「チッ....」


シオが静かに舌打ちをした。

僕には分からないがシオは分隊長をとても毛嫌いしている。


「まぁ、前線から4キロ離れているが火は遠くでもよく見えるから超弱火で、そして

 いつ敵が来てもおかしくないから火を焚くのは2時間だけにしよう。」

分隊長はやはり戦地に慣れている。

警戒は解かない、それが戦地においての憲法と言っても過言ではない。


「「はい」」


シオは毛嫌いはしているが返事や敬礼は忘れない。


「あと、白井はどこだ?」


分隊長は不思議そうに周りを見渡す。

そう、白井とは突撃兵から分隊長を守ったうちの分隊のスナイパーだ。


「...ここにいます。」


少し離れた大きな木の上から声が聞こえた。

間違えてもここは森林で木々が鬱蒼としている、

だからこそ敵の接近を許しやすい。

彼女はそれを分かっていて見張り役として見張っていたのだろう。


「お〜い!見張りありがとう、あとさっき助けてくれたよね〜」 ビシッ!!


分隊長の顔に枝がすごい勢いで落ちてきた.結構痛そうだ。

「あ痛..」と分隊長が声を漏らした。


「静かにしてください、スナイパーに長く話しかけるのはご法度ですよ。」


少々怒り気味に小さい声で言う。

確かに彼女の言う通りだ、敵から隠れて狙い撃つのに話しかけるのは敵に位置を知らせてしまっている。危険だ。


「分隊長、彼女の言う通りです。話しかけるのは辞めときましょう。」

と僕は分隊長に言った。


「ああ、分かった、すまない。」

と分隊長は謝りその場を離れた。


その間にシオが火を焚いていてくれた。

パチパチと燃える様子は小さく弱々しいがとても美しい。

時刻は23時あたりだろうか、木々の間から見える星空は綺麗だ。


簡易型の椅子に座って沸かしていたお湯でコーヒを飲む.その隣でシオがちょこんと座り僕に寄りかかってウトウトしている。

…そうだよな、まだ16だもんな、


シオと出会ったのは1年前、予備若兵として街に滞在中に敵の攻撃に遭いシオ以外の若兵は死んでしまっていた。

援軍として自分の第7分隊がついた頃には街はすでにボロボロ、道には死体が転がる地獄とかしていた、シオを見つけたとき、一人だったからか足りなかったからか、

よく覚えてないが分隊長はシオを第七分隊に入れた。という過去がある。

辛かっただろうに、周りの仲間はどんどん死んでいく地獄で....


グォ〜、グォ〜


「はぁ、」

僕は小さなため息をついた。


シオが分隊長を嫌いになった理由の一つと考えるのがこの馬鹿でかいイビキである。

分隊長のイビキは周りの仲間達の睡眠障害となっているくらいの音量だ。

シオも初めの頃は我慢できていたが、ついにブチギレてぶん殴ろうとしているのを僕が止めたという過去もあるくらい酷い。

仕方ない、シオは自分のテントに寝かせよう、テントは2つしかないからな。

僕のテントは2人用、向こう(分隊長が寝ている)は4人用だ、


….火の始末をしたあと、ぐったりしているシオを持ち上げ僕のテントに入った、

シオは暖かく、カイロのようで冬場は分隊全員で奪い合いになる。

グォーグォー

少し離れた場所からイビキが聞こえてくる。これでは敵に見つかるのも時間の問題だな、

と思いつつ自分も寝に入った。


ザッザッザッ、

足音がシオたちのテントの前で止まる。


チラッ、と中を確認する。

「いつも一緒に寝れない....」



少し薄暗かったが4時位に目が覚めた。眠い目をこすり、近くの水場へ向かう。

顔を洗い、身支度を整える。あと武器の点検だ、するとシオが起きてきた。

「ふぁー、おはようございます。」

眠りかけながら挨拶をしてきた。


「おはよう。もう少し寝てても良いんだよ?」

さすがに4時は早い気がする。


「え、まだ寝ててもいいんれすか?」


まだ疲れが残っているな、もう少し寝かしとこ。


「うん、寝ててもいいよ〜」


「あいがとうごらいます。」


とテントに戻っていった。


「おはよう。」


「うわぁ!」

突然隣から白井が現れた、あまりの唐突なことにびっくりしてしまった。


「お、おはよう、もうびっくりさせないでよ、」


正直、心のそこからびっくりした。


「あいさつだよ?そこまでびっくりするとは、」


彼女は白井椛(シライ モミジ)、僕と幼馴染だ。

昔はとても明るく騒がしい性格だったはずが、スナイパーとなってからはとても大人しく、クールになってしまった。


「分隊長はまだ寝てるの?」


彼女は不思議そうに聞いてきた。


僕はチラッとテントの方を見たが起きてる気配がない。


「あぁ、まだ寝てると思う。」


「そういえばモミジはどこで寝てたの?」


そう、幼馴染だからアキラとモミジ、名前で呼び合っている。


「私は寝なかった。ずっと見張りをしていたよ、疲れたけどこれがスナイパーだからね。」


と言う彼女は目の下にくまがこころなしかあったように見えた。


「寝ていいよ、お疲れ様、みんな起きるまでだけど俺が見張っておくから。」


スナイパーとして見張りも大切だが、コンディションやパフォーマンスも落とされると困る。


「良いの?じゃあ寝てるね、シオの方でいい?」


「良いよ〜お休み」


彼女はスタスタと歩きながらテントに入ってった、

昨日シオをテントに入れたと同時に僕も寝ちゃったからな、明日は代わる代わるやるか。


….フキフキ

よし、銃の点検及び清掃は終了。

じゃあ僕の愛刀の点検だ。

僕の装備している武器には、IZ–アサルトライフルと共に歴史的にも有名な刀鍛冶にお願いし、世界に一つだけの自分の愛刀がある。

その名も「ザクザク敵陣斬りつけ丸」!!

と名付けたかったが仲間から酷く反対を受けて諦めた。


その名も「蒼龍刀」(ソウリュウトウ)

とてつもない圧力をかけ熱しては叩き熱しては叩きを通常の何倍もしたことにより、刃毀れしにくく強い刀ができたとか、

人間はもちろん、銃ごと切断することができる。

遠距離では無力だが近接戦になったときは敵を血祭りに上げる。


「おはよう、早いな。」


と目をショボショボにした分隊長がテントから出てきた。


「分隊長、そろそろイビキをどうにかしませんか?敵の首都(780キロ先)に届くら

 い爆音過ぎて.....」


申し訳なさそうに言ってみたが、内心では少しムカついていた。

そのムカつきを抑えつつ落ち着いて話した。


「ムー、すまないな、抑えようとはしているんだ、色々対処はしてきたが全部ダメだ

 ったんだ。」


本当に対処のしようがないのだ......と、深刻そうな顔をしてはいるが、

そんな{色々な対処}を分隊長がしているのを見たことも聞いたこともない。


「そうなんですか、分かりました。今度分隊長のいびきのせいで寝れないので完全防音テントを支給してください。と本部に要請しときます。」


「えっ、やめて?」


「なぜですか?もうやばいですよ、分隊長。」


「いや、最強と謳われる第七分隊の分隊長がイビキうるさいおっちゃんだって思われ

 たくないから。」


と、ガチトーンで言い始めた。

これは本当の気持ちなんだなと思い、その話は終わった。


午前6時、ほんのり太陽が出てきて周りが明るくなった。

シオも起きてテントも片付けも終わり、出撃だ。


「副分隊長、これからどこに向かうんですか?」


シオが少し不安そうな顔をして聞いてきた。


「今から少し(4キロ)離れたヴィルリーで、離れていた仲間たちと落ち合う予定

 だ。」


といったが、ヴィルリーという街は軍隊の駐留基地になっている場所だ。

戦前は綺麗な花の都と言われていて綺麗な花が咲き誇り、ラント川という美しく大きい川があって絶好のデートスポットだった....

だが戦争は残虐だ、人も、街も変えてしまう。


「ヒヨさん達と落ち合うんですか?」


「その通りだ、シオはヴィルリーに行ったことはあるか?」


「はい!行ったことがあります!とても綺麗な場所でした。そこで食べたパンの味が

 忘れられないんです。」


目をキラキラさせてそう言ってきた。

が、残念ながら今のヴィルリーはとても戦前の面影はないのだ。

きっと、そのパン屋も.....


「もうなくなってしまったんですか......、」


「?!!!」


シオはいきなりそう言ってきたのだ。

度々そういった事があるのだ、的確に当ててくる。

ずっと気になっていたが聞けていなかった。今聞くか、


「シオ、たまに僕の思ってたりすること当ててくるけど、心読めてる?」


どうなんて聞いたら良いのかわからなかったが聞きたかったことをそのまま聞いてしまった。


「副分隊長、全部顔に出てるんです......」


「へ?」


「自分もいつそれを言おうかとずっと考えてました。副分隊長、さっきめちゃくちゃ

 複雑な顔してました。きっと、ぱっと言えないことなんだろうなと思い、言ってみ

 たら当たってた感じです。」


「そ、そうなんだ、顔に出てるか....。じゃあ今のヴィルリーについて知ってること

 全部言っても良い?混乱しないようにとかさ、あるから。」


びっくりしたが、人に分かってしまうくらい顔に出てるんだと少し複雑な気持ちになった。


「はい。良いですよ、」

少し暗い顔をしていたが仕方がない。


「まず、今のヴィルリーには昔の面影はない。あるのは固定砲台と軍事基地だ、ラン

 ト川も今は汚れ、花は戦車などの排気ガスにやられて、きれいな街よりただの軍事

 拠点となってしまった、住民は危険だということで全員手に持てるだけの荷物を持

 たされ強制疎開させられた。そのパン屋の名前、”ベーカリーのイズミ”だよな。」


「....そうです。」


「そのパン屋、僕もよく行ってた。しかし戦争が始まって憲兵に兵隊用の乾パンを作

 らせるだけ作らせてヴィルリーから追い出したと聞いてる。」


シオはとても残念がってた、しかしそれが戦争というものだろう。


「暗くなってしまいましたね、すみません。」


シオはこういう気にしなくてもいい事を気にしてしまう性格なのだ、まぁ、とても優しいからなのだろう。


「気にしなくてもいいよ、こっちから話しかけちゃったことだから。」


ちょっと申し訳ない事をしてしまったかな.....

もうすぐ見えてくるはずだ。

しかし、その先に広がる地獄を知らずに。

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