きょう、ぼくは世界をやめなかった
山椒王尾
きょう、ぼくは世界をやめなかった
きょうの朝、ぼくは学校に行きたくなかった。
ランドセルが重いからじゃない。
算数があるからでもない。
理由は、休み時間にひとりになるのがこわいから。
クラスのみんなはサッカーの話をしてる。
ぼくはゲームは好きだけど、サッカーはよくわからない。
だから、休み時間はトイレの前の水道で、ずっと手を洗ってる。
先生は言う。
「友だちと遊びなさい」って。
でも、どうやって?
そんな日の帰り道、ぼくは公園で変なやつを見た。
ダンボールをかぶって、ブランコに立ってる。
「危ないよ」って言ったら、
そいつは言った。
「大丈夫。ここはぼくの基地だから」
名前は「ダンボ」。
本名は知らない。
ダンボは、学校に行ってないらしい。
「学校、行かなくていいの?」って聞いたら、
ダンボは笑った。
「行きたくない日は、世界をちょっと休めばいいんだよ」
その日から、ぼくは毎日公園に行った。
ダンボと話すと、なぜか胸が軽くなった。
でもある日、ダンボはいなかった。
ダンボールだけが落ちてた。
中に紙が入ってた。
きみはもう大丈夫
ひとりでも、ひとりじゃない
あしたは学校、行ってみな
次の日、ぼくは学校に行った。
休み時間、また水道に行きそうになったけど、
ちょっとだけ勇気を出して言ってみた。
「そのゲーム、ぼくも好き」
そしたら、誰かが言った。
「まじ? じゃあ一緒にやろうぜ」
世界は、まだちょっとこわい。
でもきょう、
ぼくは世界をやめなかった。
きょう、ぼくは世界をやめなかった 山椒王尾 @mumubb
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