歌で異世界を救う

山椒王尾

歌で異世界を救う

普通の大学生、田中浩太(21歳)は、ギターが趣味のただの青年だった。ある日、バイト帰りに交通事故に遭い、目覚めると異世界の森の中。

「勇者様! お待ちしておりました! 魔王を倒してください!」

現れたのは、金髪のエルフの少女、リリア。彼女は王国から召喚された勇者を迎えに来たという。

浩太のステータスを確認すると……

【名前:田中浩太】

【職業:吟遊詩人(地球転生者)】

【スキル:無限楽曲知識(地球の歌全部歌える)、歌声強化(感情を伝播)、ギター召喚、聴衆魅了】

【戦闘力:3(歌以外は弱い)】

剣も魔法もダメ。戦うなんて無理ゲーだ。

「え、歌で魔王倒せって……?」

リリアはため息をついたが、仕方なく浩太を連れて王国へ。

この世界は魔王軍の脅威で荒れていた。魔物が暴れ、人々は恐怖に震え、士気は最低。戦士たちは強いが、心が折れかけている。

浩太は気づいた。

「戦うんじゃない。歌で、心を動かすんだ!」

最初は小さな村の酒場から。浩太は召喚したアコースティックギターを弾き、地球の名曲を歌い始めた。まずは「Pret」を。

村人たちは最初怪訝な顔をしていたが、歌声が響くと……涙を流し始めた。

「この歌……失った家族を思い出す……でも、希望が湧いてくる!」

魔物すら、酒場の外で聞き惚れて攻撃を忘れた。

浩太のライブはたちまち評判に。冒険者たちが集まり、歌を聞くだけで戦意が上がるようになった。スキル「聴衆魅了」で、歌はバフ効果を発揮。疲れた戦士たちは回復し、弱い村人も勇気を出して立ち上がった。

やがて、魔王城へ。魔王は冷徹で、部下たちを恐怖で支配。皆、歌など知らず、喜びを忘れていた。

浩太は城の広間に乗り込み、コンサートを提案。

「剣じゃなく、歌で勝負だ! お前の軍勢が、俺の歌を聞いてまだ戦う気があるか、試してみろ!」

魔王は嘲笑ったが、部下たちの好奇心に負け、了承。

浩太はステージに立ち、まずは優しいバラード「ハナミ」を歌う。魔物たちが静かに聞き入る。

次にアップテンポの「残響」で盛り上げ、最後に「架橋」を全力で。

歌声が城に響き渡る。オークたちは涙を流し、ゴブリンたちは踊り出し、ドラゴンさえ翼を広げて感動。

「この……温かさは何だ……俺たち、ただ怖がって生きてきただけだった……」

部下たちが次々と浩太側に。魔王は一人残され、歌を聞いて自身も心が揺らぐ。

「くっ……このメロディー、反則だ……俺の孤独が、溶けていく……」

魔王はギターを手に取り、浩太とセッションを始めた。結局、魔王は改心。城でライブハウスを開くことになった。

世界は平和に。浩太は異世界一の吟遊詩人として、歌で人々を繋いだ。

「戦う必要なんて、なかった。歌があれば十分だ」

リリアは微笑んで言った。

「あなたは、本物の勇者ね」

こうして、歌で異世界を救った男の物語は終わった。

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歌で異世界を救う 山椒王尾 @mumubb

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