第8話

悪魔はコンビニ袋から新しいビールを取り出し、勝手に開けた。

そして話を続ける。


「もう一つは……そうだな、ちょうどコイツらみたいな奴らだ」

悪魔は親指でテレビを指差した。


「このお笑いの?」

「そう、叶った願いに潰されるタイプだ」

「潰される……って?」

「考えてみろ。今まで努力してきた夢が一気に叶う。努力しなくても叶ってしまう。

 ……今までの努力が全く無意味だったと思い知らされるわけだ」

「そんな……」

「そして、吾輩なしでは叶えられなかったと知る。

 コイツらも賞レースに勝ち残ることはないだろう。才能がないんだよ」

「あんなに笑っていたのに……?」

「言ったろう。吾輩は観測者だ。

 叶わぬ夢に必死にしがみつくさま、笑わずに見ていられると思うか?」

「いや、叶うかもしれないだろ?」

「無理だな。人間は平等じゃない。そして、吾輩に頼った時点で、それを自分でもよく分かっているんだよ」

「ひでぇ……」

「それは、努力を重ねていればいるほど、夢を真剣に叶えたいと思っていればいるほど、脆く崩れる。

 そう、おぼろ豆腐のようにな」

「例えが微妙すぎるわ」


テレビでは先ほどのコンビが悔し涙を流していた。

軽口で返したが、俺は初めてこいつを怖いと感じた。

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