俺と悪魔

haru

第1話

俺には悪魔が憑いている。

名前は、知らない。

どこで憑かれたのか、とんと見当がつかない。

何か薄暗いジメジメとした路地裏で「ニーチャン、ニーチャン」と呼びかけられたが、無視をして通り過ぎた記憶……。

だが……いる!


「ヘックション!」

「お? 風邪か?」

こいつは常にこの調子で、何か軽い。


「風邪ではないと思うんだが、鼻がムズムズするんだよ」

「くしゃみ先生かよ」

「何だよそれ」

「お前、教師なんだろう? 先生じゃないか」

「いや、まあ、そうだけど」

「しかし、お前が先生と呼ばれるようになるとはなぁ」

悪魔は遠くを見つめて言ったが、今日が初対面だ。

「温かくするといい。コーヒーでも入れたらどうだ?」

俺はコーヒーを淹れに、キッチンへ向かった。

「悪いな、吾輩はブラックで」

――こいつ、やりやがったな。


俺はコーヒーを二つ、テーブルに置いた。

「ところでお前、誰なんだよ」

「吾輩は悪魔である」

「名前は?」

「まだない」

「どういうこと?」

「吾輩が名乗るのは……お前の元を去るときだよ」

「去ってくれてもいいんだが」

「まあ、そう言うな。吾輩はお前を気に入ってるんだ」

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