Prince×Prince

Lee saja

episode1 運命

俺の名前は、神宮寺 蓮司。日本有数の財閥「神宮寺グループ」の次期当主って肩書きが一応ある。だけどそんなもん、高校の教室じゃ意味ない。いや、意味がありすぎて逆に面倒なんだ。

金目当て、権力目当て、変な噂目当て。

人間関係?お断りだ。

だから俺は、群れない。誰ともつるまない。この男子校・魁星(かいせい)高校でも、そうやって静かに、目立たず生きてきた。

…なのに。

「Hi!I'm Theo Asahikawa. Nice to meet you!」

今、教室に入ってきた転校生が、すべてをぶち壊そうとしている。

逆にあの転校生とやらをぶち壊してやりたい…。

(テオ)「朝姫川(あさひかわ)テオって言います。父が日本人。母はアメリカ人の日米ハーフです!日本語はバッチリだから大丈夫だよ!あと、人と話すのが好き!よろしくねっ!」

…こいつ陽キャだ。しかも完全体の。

見た目は映画の主演級。髪は柔らかいブラウンで、瞳はまさかのアクアブルー。笑うと口角がキュッと上がって、なぜか教室の照明が明るくなった気がする。

ーーてか、ここ男子校だぞ!?誰もキュンとすんな!!

…あ、周りの連中がすでにざわついてる。

(男子生徒A)「なんか…プリンスっぽくね?」

(男子生徒B)「モデルかな?」

(男子生徒C)「マジでかっけぇ…」

もうダメだ。クラスが一瞬でテオワールドに染まりかけてる。こっちは静かに生きていたいってのに。

(テオ)「ーーあ、そこの席、空いてる?」

…ま、まさか。

(テオ)「君、名前は?」

目が合った。いや、目を合わせに来た。

俺の”結界”を無理やり突破してきた、初の存在。

(蓮司)「…神宮寺、蓮司」

(テオ)「あ、レンジ!覚えやすいね!よろしく~」

おい、レンジってなんだ。電子レンジか俺は。

(テオ)「君さ、なんか…王子様っぽいよね」

(蓮司)「……は?」

(テオ)「立ち姿とか、空気とか。ひとりでいるけど、めっちゃ強そうっていうか。僕、そういう人好き」

(蓮司)「お前、初対面で距離感ゼロかよ」

(テオ)「うん!アメリカではこれ普通」

にっこり笑うな。太陽かよ。その顔面偏差値で笑顔振りまくの凶器なんだが?

(テオ)「僕、君と友達になりたいな」

(蓮司)「勝手に決めんな」

(テオ)「いや、もう決まってるよ」

(蓮司)「は?」

(テオ)「運命ってやつ。僕、わかるんだよね。最初に”この人だ”って思ったら、だいたい間違いないの」

断言すんな。こっちの心の準備ゼロなんだが?

だけどーーなぜか、その言葉が胸に引っかかって離れなかった。

”この人だ”って。

こんなふうに俺を見てくる奴、今までいなかった。


静かな世界に、突如現れた異物。

眩しくて、騒がしくて、うざったくて

ーーけど、どこか…。


…やばい。俺、多分こいつに巻き込まれる。


っていうか、もう巻き込まれてる気がする。

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Prince×Prince Lee saja @leesaja

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