第10話 結びちゃん
私の会社には変わった子が居た。
その子は美人なんだけどいつも無表情で、時々変なことを言っていた。
私は休憩時間をよくその変わった子の一緒に過ごしていたので、必然的に話す機会も増え、彼女が言う変な事を聞く機会も増えた。
そんな中気づいたのは、彼女の言った事はだいたい当たり、それは人の縁を結ぶものだということだった。
だから私は彼女のことを【結びちゃん】と呼ぶようになった。
◆
ある日結びちゃんは言った。
「営業のあのよく絡んで来る人、鬱陶しいけどそれももう少しでなくなりそうですね」
その言葉を聞いた私は、確かにあの人はウザイけど……、と苦笑した。
そしてなぜもう少しで絡んで来なくなるのか気になって結びちゃんに聞いたけど、その返事は要領を得ないものだった。
けれど一週間後、営業のウザイ人はパッタリ結びちゃんに絡んでこなくなり、噂で受付の子と付き合い始めたと聞いた。
◆
また別の時、結びちゃんは課長と人事部の人がキスをする夢を見たと言った。
昼休憩中とはいえオフィスにはそれなりに人がいて、辺りは一時騒然とした。
休憩明けに戻って来た課長はオフィスの異様な空気を察して近くにいた社員を問い質し、結びちゃんの発言内容を聞いて唖然としていた。
結びちゃんは淡々と「すみません」と言って仕事に戻ったが、そんな雰囲気ではない周りは少しギクシャクしていた。
課長はそんな空気を変えるためだったのか、高らかに公表した。
「確かに私は人事部の人とお付き合いしてます。私の口から事実を言ったんだから変な推測や憶測をしないように! あーもう、彼にバレたって連絡しなくちゃ……!」
◆
結びちゃんは「副業に目処がついたから本業にする」と言って会社を辞めることになった。
突然の宣言に私も周りも驚いたが、退職宣言から一ヶ月、仕事はちゃんとしてくれたし引き継ぎ資料も丁寧に作ってくれた。
そしていよいよ最後の出勤日、結びちゃんはきっちり昼頃には仕事を終わらせて関係各所に挨拶回りをしていた。
そんな中、結びちゃんは最後の最後に大爆弾を投下した。
「新人の……えっと名前なんだっけ……まあいいや新人くん、彼女と仲良くね、大事にするんだよ。その子大物だから、そうすればきっと人生いい感じになるよ」
いない彼女を大事にしろと言われ、新人くんは困惑していた。
私は後からこっそりどういう事か聞いてみたのだが、どうやら新人くんには近いうちに彼女ができるらしく、その子はなんと社長の娘なんだとか。
私はあまりの衝撃にこの事を誰にも言うべきではないと判断し、黙って新人くんの恋路を気にかけていた。
するとどうだろう、半年後には新人くんに彼女ができて、その子の苗字は社長と同じだったのだ。
◆
私は何度も何度も結びちゃんの縁結びの予知夢を聞いてきた。
それは私に彼氏がいなかった時期にも被っていたので、私はいつ自分の番が回ってくるのかと少し楽しみにしていた。
けれど結びちゃんは私に私の夢の話をする事はなく、私には彼氏ができ、二年後には結婚した。
会社を辞めた結びちゃんとは今も時々連絡を取り合っているのだが、ふと気になって私の夢は見たことは無いのかと聞いてみた。
すると返事は「ない」の一言だった。
実は見たけど言わなかっただけなんじゃないかとも思ったが、そうでもないらしい。
ちょっと残念だ。
だから次は、来春産まれる予定の我が子の夢を見てもらえるよう願掛けしようと思う。
縁結びの夢を見て貰えたら、きっとそれは良縁に間違いないからね。
◆◆
【夢の媒介人】
同僚たち
【視点】
先輩(30歳)
次の更新予定
予知夢姉妹の恋占い 星水 @hoshimizu
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