第3話 仲の良い二人
とある町の片隅にある【ホシユメ】というカフェには時々顔を出す。
その店は妹が経営している店で、客はそんなに多くなくてとても落ち着いていて居心地がいいのだ。
その日、私は特に用事があるわけでもなかったけれど有休を使って贅沢な休日を過ごしていた。
カフェオレのカップを片手に、のんびり働く妹を眺める。
私もこんな働き方がしたい、と思うが店の経営なんて出来る気がしない。
具体的に何をしているかは知らないけど、なんか難しそうだ。
そんなことを考えているとカランカランとドアベルが鳴った。
妹はチラリと音の方へ視線を向け、分かるか分からないかギリギリの笑顔を作って会釈をした。
入ってきたのはそこそこ容姿の良い若い夫婦だった。
お? 私以外にも贅沢な有休の使い方を知ってる人がいるとは。
「平日昼間っから夫婦でカフェとは、仲が良いですこと」
「お客さんいるんだからそういうこと言わないで」
「ごめんごめん」
本人たちには聞こえないように茶化すと妹に注意された。
確かに今のは私が悪い。反省反省。
私はひとしきりのんびりした後キッチンに入り溜まっている数人分の食器を洗って買い物に出かけた。
当初はウィンドウショッピングのつもりだったが結局いつものようにたくさんの服やアクセサリーを買ってしまった。
けれど実に充実した一日になったのでこれはこれで良し、だ。
財布の中は……まあ、うん……。
◆
次の日、私の目覚めはあまり良いものではなかった。
理由は気分の悪い夢を見たからだった。
その夢とはあの仲の良さそうな夫婦かボロボロになりながら戦い、結局別々の道を歩むものだった。
私はいつものように出勤前に妹のカフェに立ち寄って開店準備をしている妹に今朝の夢のことを愚痴った。
吐き出したことでいくらか気分は楽になり、仕事は普段通りにこなすことが出来たと思う。
◆
二週間後、休日に妹のカフェでいつものように寛いでいるとある夫婦が店に入ってきた。
夫婦が離婚する夢のことなどすっかり忘れていた私は、夫婦でカフェなんて仲の良いことで、と考えていた。
しかし店内BGMの隙間から聞こえてくる二人の会話はどうも穏やかではなかった。
「浮気してるでしょ」
という奥さんの一言から始まって
「もう信じられないの、離婚してちょうだい」
と続き
「証拠はあるのか?」
という旦那さんの問いに
「探偵を雇ったの」
と紙の束のようなものがめくられる音が聞こえた。
おいおい、こんなところで離婚話しか?
「お姉ちゃんが見た夢の通りになったね」
「夢? ……あーそういえば随分前に見たあの。あれの人たちか」
「今回は夢見てから長かったね」
「いつ見たっけ?」
「お姉ちゃんが忘れるぐらい前」
「喧嘩売ってる?」
「二週間ぐらい前」
「やっぱり喧嘩売ってるな」
暗に馬鹿と言われているようでちょっと癪に障る。
私は妹と軽口をたたいて夫婦の会話が耳に入らないようにした。
正直野次馬魂が騒いでちょっと気になりはするが、盗み聞きしていい話ではないことぐらいは分かるからな。
◆◆
【夢の媒介人】
常連客の夫婦(27歳)
【視点】
長女
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