牛丼少女

苑崎頁

牛丼少女

私の名前は牛久もう子! 十五歳!


牛みたいな苗字にモウー!な名前で子どもの時は嫌になってしまうけれど、今では気に入っている。


なぜかって?

それは私が牛丼が大好きだから!


高校生になってから、お小遣いもらって全部を牛丼に捧げてしまっています!


親にはそんなに牛丼食べるなと怒られるけれど、どうにも止まらない!


牛丼ばかり食べていたら、なんか私のお肉もかなりゆるふわになってきて、ぽっちゃりになってきたけれど気にしない!


だってそこに牛丼がある限り食べなければならないから……。


ある日の休み、私はスマホで何気なくネットニュースを見ていたら、なんと牛丼チェーン店の牛丼が安くなるというニュースを大発見した!


物価高な昨今、高くなったというニュースかと思ったら、なんと安くなるというから驚き!

しかも並盛だけでなく特盛も安くなるというから二度驚いた。


私はスマホでそのチェーン店を検索して近くの店舗を探して街を散策した。


ほどなくして、牛丼チェーン店は見つかった。

安くなったニュースを見たのか、店の前にはそれなりの行列が出来ている。

行列は苦手だけれど、しょうがない。

私はその行列の最後列に並んだ。


二十人ぐらい並んでいたけれど、三十分ぐらいしたら、ついにお店に入ることができた。ラッキー!


見慣れた感じのどこにでもある牛丼チェーン店の店内。

いらっしゃいませ!と店員さんが元気よく挨拶してくれた。

空いてるお席にどうぞ!と言われたので、空いてる席に着いた。


ご注文は?と店員さんに言われ、私は特盛で!と答えた。

汁だくでお願いしますと付けこたえた。

やはり、ここは特盛を食べたい。

この時代に珍しく注文のタブレット端末はなかった。

私はトッピングも頼みたかったけれど、お小遣いが少ないのでやめておいた。


ほどなくして、美味しそうな匂いとともに牛丼特盛がやってきた。

牛丼特盛お待ち!の声とともに私の前に牛丼特盛が置かれる。


アツアツの牛肉が湯気が立っている。

ダメ元で汁だくを頼んだけれど、本当に汁がいっぱいで汁の中を牛肉さんたちが泳いでいるようだった。

牛肉の下のご飯にも汁がだくだくと入っていて、白いご飯ではなくなっていた。


私はいただきますと小声で呟いて、箸を持って牛肉とご飯が均等になるように口の中にかきこんだ。

邪道かもしれないが、私は紅しょうがを乗せない。

牛肉の味が曇ってしまいそうだからだ。


汁だくでちゅるちゅるな牛肉と炊きたてのご飯が私の口内に入ってくる。

この時の至福がたまらない!

急に秋になって肌寒くなった私の体内に牛丼くんというアツアツの愛しい君が侵入してくる。


汁でだくだくになったジューシな牛肉とご飯のハーモニーが私の口内を駆け巡り、体内に入っていく。

いつも食べなれている牛丼のはずなのに、私の舌はあまりの美味しさに悶絶する。


そうそう!こういうのでいいんだよ!

噛み砕かれた牛肉くんは私の体内でエネルギーに変わりカロリーとして消化される。

私の胃袋は宇宙で牛丼はエントロピーだ!

あまりの牛丼の美味しさで私は訳の分からない言動が脳内でスパークする……。


そんな感じで牛丼くんとランデブーしてたら、あっという間に平らげてしまった。

ごちそうさまでした。

私はそう呟いてお金を支払って店を出た。




店を出たのであったけれど、牛丼を食べている時、向かいの席に座っている少女がちらちらと私の方を見ているのに気がついた。


向かいの席に座っていた少女は、休日には珍しく制服を着た美少女だった。

そもそも牛丼チェーン店に学生の女の子がいること自体珍しいのかもしれなかった。

と言っている私自体、花も恥じらう女子高生なんだけどね。

え?ただの牛丼好きな女子高生だって?

牛も恥らわないって?モウー?誰そんなこと言うの!


まぁ、そんなことは置いとくとして、向かいの席にいた制服の少女は、じっと私の方を見つめてきていたのであった。

私はいつも牛丼にひたむきに向き合って食べるため、人の視線など気にしない質だったけれど、そんな私でも気付くぐらいネットリとした視線を少女は送ってきていたのであった。


あの少女はなんだったのだろう?

私の顔に何かついていたのだろうか?

そんなことを考えて帰途についていると、私の背後をヒタヒタという足音が聞こえてきていることに気付いた。






「あの、あなた肉好きなの?」

背後から、そんな声が聞こえた。

振り返ると、先程の少女が立っている。


少女はやはり休日では珍しいセーラー服を着ていて、髪は黒髪で長く、身体は細かった。

私とは正反対の体格で羨ましいと思った。


「あなた肉好き?私は大好き」


少女は先程と同じような問いかけをして、自分も肉が好きだと言った。


「私は牛肉が好きなだけです」


私はそう答えた。


「牛肉いいよね。私はどんな肉でも好き」


少女は夢を見るような瞳をして、嬉しそうに肉好きをアピールした。


いきなり初対面で肉好き好きアピールされても困ってしまう。

この少女はなかなか変な人なのかな?

私は疑わしい目で少女を見た。


「今の時代ってなかなか食べられない肉があるんだよね」


少女はねっとりとした視線で私の身体を見てきた……。


私は薄気味悪くなり、無視して帰ろうと思った。

でも、少女の瞳を見ていると吸い込まれそうになり、私は視線を外せなくなる。


「うちさ、味わえるんだよね。その肉」


少女は値踏みするように私の身体をいまだに見続けている……。


「うちに来なよ。美味しいよ。たぶん」


少女はそう言うと、舌なめずりした。


普通ならこんな提案されても絶対ついて行かないのだけれど、私はうなづいていた。


頭の中が霧に包まれているようになり、正常な判断が出来ない。


「うちはこっちだよ。着いてきて」


少女はそう言うとヒタヒタと歩いて行く。

私は無言でその少女に着いて行った。

多分私はその少女に魅了されてしまった。





何分歩いたか分からないぐらい歩いた。


「うち、ここだよ」


少女は先に歩いていたが振り返り言った。

少女の家は茅葺き屋根の古い家だった。

私の地元にこんな古い家ないはずだけど?

不思議に思っていたけれど……。

少女は先に家に入って行くので後に続く。


引き戸を開けて家の中に入る。

土間で靴を脱いで入ると囲炉裏があった。


「まずお風呂入ろうか?」


少女はそう言ってお風呂に私を案内した。

まず、身を清めて綺麗にしないとね。

少女はそう言って私の服を脱がす。

私はその行為を当たり前のように受け入れ、なすがままなのであった。


私は生まれたままの姿になった。

最近、たるんできたお腹が恥ずかしい。

私の悩みはそれだけでなくて胸もすごい大きい事であった。

大きいので肩はこるし、人の視線が注がれとても恥ずかしい。

こんな胸、無くなればいいと思っていた。


少女も当たり前のように服を脱ぎ、生まれたままの姿になった。

少女の肌はとても白くて、やはり身体は華奢だった。

私は心底、少女の身体が羨ましかった。


私は少女に支えられてお風呂場に入った。

そこは檜の浴槽がありとても立派だった。

少女は私に掛け湯して身体を洗い出した。

海藻を乾かしたスポンジに塩入石鹸を染み込ませて泡まみれにして私の身体を洗う。

丹念に私の身体を洗う少女。

特に私の大きな胸を細い指で支えて、揉み込むように洗うのであった……。


もしかしてこの少女は私に惚れて、家に連れ込んでこんなことをしているの?

そう‪思う私であったけれど分からない。

少女は上半身を洗い、今度は私の下半身を洗い出した。

私は臀部もとても大きい。

少女は私を立ち上がらせ、私のおしりを丹念に洗った。

丹念というか、また揉み込むように洗う。

洗い方はなぜか塩もみされているみたい。

髪の毛もよく洗ってもらった。


浴槽に入るのかと思いきや、私は少女に支えられてお風呂を出たのであった。

水分をよく拭き取られて乾かしてくれた。

塩がまだ身体に付いていて気持ち悪い。

その事を言おうと思ったけれど、頭がぼーっとして何も言えなかった。


その後、私は裸のまま囲炉裏端まで連れてこられた。

私はいつの間にか、木の板の上に寝かされていた。

なんだかまな板の上の鯉になった気分。

誰だ!今まな板の上の牛って言ったのは!


「痛みは消すからお肉食べさせて」


少女はそう言うとお箸を持ってきて、とつぜん私の胸に突き刺した。

私の胸に箸は刺さっているけれど、痛みはない。

少女は私の胸の肉を箸でつまみ上げ、持ち上げた。

私の胸の肉は白いプリンみたいに、ぷるぷる震えている。

少女はその肉を口に入れ咀嚼している。


「人間の肉は中々食べれないの。美味!」


少女は私の肉を食べて恍惚な表情を浮かべている。私の肉そんなに美味しいのかな?

そもそも美味しい肉を食べさせてくれるのかと思いきや、少女が私を食べている。

なんだか、ひどく騙されたと思う私。

そんなことを思っていたら気絶した……。




気がついたら、私は牛丼チェーン店の側で立ち尽くしていた。

服もちゃんと着ていて、少女もいない。

果たして夢を見ていたのか?

そうだ!夢に違いない……。

私は家に帰ろうと思った。

でも、胸に違和感がある……。

あれ程大きかった胸が小さくなっている。

私の胸は少女に食べられたのかな?

でも痛くないし、小さくなった。

私はラッキー!と思い、家に帰ったのだ。

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牛丼少女 苑崎頁 @sonozakiruka

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