吸血魂 ―猫に憑いた悪魔と血の契約を結んだ結果、生き残りゲームに巻き込まれた―
@haruyokoi4096
【プロローグ】
――四百年ほど前。
この夜の出来事が、後に一人の高校生の運命を狂わせることになる。
夜明け前、北イギリスの古城に金属音が響いた――
少女は古い螺旋階段を上りながら、左の手のひらを前に向ける。
白い肌、長い金髪、鋭い牙が覗く口元。血のように赤い瞳が、二人の男を鋭く射抜いた。
キーンッ――
鋭い金属音が石造りの螺旋階段に響いた。
老人と、鋭い牙と赤い瞳を持つ男が後退しながら階段を上っていく。
二人の前にはキラキラと美しい輝きを放つ魔法陣。
少女が二人に向けた左手の少し先に、直径1メートルほどの魔法陣の盾が展開されていた。
赤い瞳を持つ男が、ロングソードのように変化した爪を叩きつけるが、盾は微動だにしない。
「おい、てめぇ! どういう了見でわしの眷属を狙うんだ!」
老人が問い詰めるが、少女は淡々と答える。
「勘違いするな。狙っているのは貴様の眷属だけではない。全員の眷属だ、当然だろう?」
「そんな真似してタダで済むと思ってんのか? 小娘!」
少女は赤い瞳を細め、冷ややかに老人を見返した。
「私はルールに従って戦っているだけだ。文句を言われる筋合いはないだろう」
その言葉に、老人の顔が怒りで歪んだ。
男は目の前に浮かび上がった盾を、もう一度激しく打ち据える。
カァーン!
再び鋭い金属音が響く。
「ふふふ、ヴァンパイア風情が。そんな攻撃で、私の盾を砕けるとでも本気で思ったのか?」
美しい少女の冷たい笑いと嘲りが、螺旋階段に響く。
螺旋階段の窓の外では、白み始めた空が広がっていた。
「茶番はここまでだ。そろそろ終わらせようか」
冷酷な笑みを浮かべた少女が、右手のひらを顔にかざす。
そして横一閃。
彼女の指先にはヴァンパイアと同じ、ロングソードのような爪が現れた。
しかし、彼女のそれは青白い光を放ち、ヴァンパイアのものと比べ、ひときわ怪しい幻光を放っている。
少女が爪先を向けると、ヴァンパイアが盾を展開した。
「ははぁん」
少女はいやらしい笑みを浮かべ鼻で笑うと――
バリィン!
その盾を一撃で砕いた。
転倒したヴァンパイアに爪先を向けた少女は、串刺しにしようと肘を引く。
「これで、おしまいだ!」
キーーーン!
少女の爪は、突如展開された別の盾によって跳ね返された。
老人が少女に手のひらを向けて嘆願する。
「待ってくれ。こいつはわしの最後の眷属なんだ。こいつが死ねば、わしの眷属はいなくなる。そうなりゃ、また魔力が削られちまうんだよ!」
「そんなこと、知ったことではないな。ぐだぐだ言うなら、ついでに貴様も斬り伏せてやろうか!」
ヴァンパイアを背に庇うと、老人の瞳が赤く輝き始める。
「ちっくしょー! 何度も姑息な手を使いやがって!」
老人は瞬く間に50歳ほどのドワーフを思わせる偉丈夫へと変じた。
手のひらを顔にかざし横一閃。爪先が鋭く伸びる。
「ふん、やっと正体を現したか」
「ここでケリつけてやらぁ! 覚悟しやがれ」
牙を覗かせ、咆哮しながら斬りかかる。
少女は軽くかわし、蹴りを放つ。
偉丈夫は階段を上へと吹き飛ばされ、のた打ち回った。
「そんな攻撃、私に通用するものか!」
「てめぇ、わしにいったい何の怨みがあるってんだ、あァ!?」
偉丈夫が叫ぶが、少女は目を細めて――
「くくっ、ふははは。理由か? この争いに勝ち、魔力を強化するためだ。──それと」
少女の赤い瞳が妖しく細まる。
そしてヴァンパイアに鋭い視線を向け、
「お前が心底嫌いだから、だっ!」
そう言って殺気を浴びせかけた。
「ひっ」
小さく悲鳴をあげたヴァンパイアが、大きなコウモリに姿を変え上階へと飛び去る。
少女は鼻で笑うと、のた打ち回る偉丈夫の横を、ゆっくりと通り過ぎヴァンパイアを追った。
「待ちやがれ、この尼!」
偉丈夫の言葉を最後まで聞かず、少女は先へ進む。
そして、塔の最上階へ。
暗く狭い最上階の部屋。
ヴァンパイアは迎え撃つ姿勢を取っていた。
背後からは偉丈夫が階段を駆けあがる足音。
「行くぞ、下等種!」
そう言って、少女はヴァンパイアに向かって、連続的に突きを繰り出した。
ヴァンパイアは少女の突きについていけず後退する。
そして窓際に追い込むと――
「じゃぁな」
少女が冷たく言い放った。
「やめてくれぇぇぇ!」
偉丈夫の叫びが狭い部屋に響く。
同時に、少女がヴァンパイアを窓の外に蹴り飛ばした。
そこへ朝日が昇りはじめ、蹴り出されたヴァンパイアの体は青白い炎に包まれる。
そして断末魔の悲鳴があたりにこだました。
少女は振り返り、偉丈夫を見て――
「ふっ…… はは…… ぎゃっははははは!」
狂ったように笑い出した。
「ちっくしょ…… 魔力が戻りゃあ、ぜってぇ仕返ししてやらぁ! 覚悟しとけってんだ!」
「クックックッ、何言ってる。お前の宿主――爺さんの寿命はもう尽きるんだ。仕返しなんて出来るわけないだろ。今世は残念だったな」
「この借りは必ず返すぜ。次は必ずてめぇを――」
「そうだな、何百年先かわからないが、また会おう」
そう言うと、少女は螺旋階段の下に偉丈夫を蹴り落した。
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