黄金の瞳と純白の衣 ―我が家のTKG狂詩曲―

音無 雪

第1話 「こげまるくん」の降臨

我が家のキッチンは、最新の設備が整ったオール電化仕様でございます。フラットなIHクッキングヒーターは掃除もしやすく、スタイリッシュ。しかし、本日はあえてその文明の利器を沈黙させ、パントリーの奥から一台の相棒を引っ張り出してまいりました。


アウトドア用のカセットコンロ、その名も『こげまるくん』。


無骨な黒のボディに、風を遮る堅牢な風防を備えたこの逸品は、災害時の備えとして常備しているものでございますが、実力はプロ仕様と言っても過言ではありません。屋外の強風下でも火が消えないタフさと、繊細なとろ火から「これでお肉を焼いたら最高だろうな」と思わせる猛火までを自在に操る火力調整。先日はスモークチップを用いた燻製づくりでも見事な働きを見せてくれました。道具というものは、いざという時に使えなければ意味がございません。こうして定期的に「実戦」で動かしてあげることこそ、真の防災意識というものでございます。


さて、その『こげまるくん』の背中、鎮座しておりますのは、年季の入った黒光りする土鍋でございます。


コトコト、あるいはふつふつ。 重厚な蓋の隙間から、白い蒸気が細い糸のように立ち上り、キッチンに芳醇な香りを振りまいています。土鍋の中で躍っているのは、先日お客様から手土産として頂いた、最高級の新米。


その名を、『龍の瞳』と申します。


まず驚かされるのは、その見た目。普通のお米と見比べれば一目瞭然、粒の大きさが一回り、いえ、一・五倍はあるでしょうか。水晶のような透明感の中に、命の力が凝縮されているような、そんな圧倒的な存在感を放つお米でございます。


「龍の瞳はね、その粒の大きさが命なの。でも、大きい分だけデリケートで割れやすいのよ。研ぐときも、手のひらでギュッギュッなんて乱暴な真似は厳禁。赤ちゃんの肌を撫でるように、やさしく、慈しむように洗わないと、炊きあがりの食感が台無しになってしまうわ」


キッチンに立つ私の隣で、慣れた手つきでレクチャーをしてくださるのは、私の親友、爆乳姫子さんでございます。

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