第3話 永遠の都 3


 翌日の午近く、月祥ユエシャンが起き出すと、裏庭に人の気配がした。


 吸血鬼ウブルは昼間も活動する。強い陽光はあまり得意ではないため、夜ほど活発には動けないが、普通の人間程度には外出もできる。


 層下に降り、回廊を裏手に向かうと、庭に数人の下男、下婢が集まっていた。それに混ざって、身なりの良い背の高い青年が舞のような動きをしていた。


暁賢シャオシェン……なにをしている」

「導引ですよ、太太おくさま


 隅で見物していた瑞星ルイシンが答えた。


「導引? 気の呼吸法か。それにしては、あまり見たことがない型だが」

「はい。最近、急に流行してきた養生法で、〈 精魄道しょうはくどう〉という道教系の教団が提唱している導引術です。舞を舞うようなゆるやかな身体の動きに、独特の呼吸法を合わせて、体内に清涼な空気を取り込むのです。それにより血の流れが整い、不老長寿に効果が高いのだとか」

「詳しいな」

「街中で案内書きが配布されているんですよ。〈精魄道〉の信徒が配っているのを見かけました」

「ふぅん。……で、なぜ、おまえがそこにいる」

「いやあ、面白そうだと思って混ぜてもらったが、結構疲れるぞ」


 暁賢は少し息を上げながら、下僕たちの列から抜けてきた。


「なんにでも首を突っ込むのだな。閑人め」

「探求心に溢れていると言ってくれ」

「どうでもいいが、朝餉が済んだらとっとと帰ってくれ。廟客ひもがいると噂が立ったらかなわない」

「そうするよ」


 暁賢の返答を背中に聞いて、月祥は自房に戻った。





 その日、西市の北端の側溝から、若い女の遺体が発見された。

 刑部の吏員が収容し、死因を確認したところ、遺体からは血液が抜き取られた痕跡があったという。

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