Marry Xmas 〜サンタからの最高の贈り物〜
🥮ドラヤキとりんご🍎 \ENW\KKG
merry Xmas!!
ふぉっふぉっふぉ。今年もこの季節がやってきた。 私の名前は……まぁ、世界中の子供たちが知っている通りだ。
今、私は高度3,000メートル、トナカイたちの鼻息が白く凍る空の上にいる。ソリの重みは、出発した時に比べればずいぶん軽くなった。袋の中身が減るにつれ、私の腰の痛みが増していくのは毎年のことだが、これも一種の「勲章」だと思って楽しんでいるよ。
最近の子どもたちが欲しがるものは、昔とはずいぶん変わった。 かつては手彫りの木馬や、色鮮やかな積み木が袋から溢れていたものだが、今は薄い板のような通信機械や、実体のない「ゲームのシリアルコード」なんてものまである。
「時代の流れですな、サンタさん」
先頭を走るルドルフ(赤鼻の彼だ)が、器用に首を振って私に話しかけてくる。確かにその通りだ。だが、どれほど中身が変わっても、プレゼントを包む「期待」という名の空気の匂いだけは、数千年前から少しも変わっちゃいない。
さて、今夜の最後の一軒だ。 場所は、街外れの小さな古いアパート。煙突なんて洒落たものはないから、いつものように換気扇の隙間から「魔法」で失礼させてもらう。
寝室では、小さな少年が深い眠りについていた。 枕元には、手書きの汚い字で書かれた手紙と、一枚のクッキー、そして少し冷めたミルクが置いてある。私は袋に手を伸ばしたが、ふと、少年の手紙が目に入った。
「サンタさんへ。おもちゃはいりません。そのかわりに、毎日遅くまで働いているお母さんが、明日の朝、ゆっくり寝ていられるようにしてください」
私は、思わず袋を握りしめたまま立ち尽くしてしまった。 ふぉっふぉ……。これは困った。私の袋には、おもちゃやゲームはいくらでも入っているが、「時間」や「休息」というプレゼントは、あいにく持ち合わせていない。
私はしばし考え、ソリに積んでいた予備の「魔法の粉」を少しだけ使うことにした。 これは本来、トナカイたちが空を飛ぶためのものだが、少しだけアレンジすれば、人間に最高に深く、心地よい眠りをもたらすことができる。
まずお母さんの寝室へいく。
疲れ切って服のまま眠っているお母さんに、そっと粉を振りかける。彼女の眉間のしわが、みるみるうちに解けていく。
少年へのギフトは彼が欲しがっていたおもちゃの代わりに、私は彼のお気に入りの絵本に「特別な魔法」をかけた。明日、彼がその本を開けば、お母さんへの愛おしさがもっと溢れ出すような、優しい魔法だ。
私は置いてあったミルクを飲み干し、クッキーを一口かじった。これが私の「報酬」だ。
アパートを後にし、夜明け前の空へと舞い上がる。 東の空がうっすらと白んできた。世界中の子供たちが目を覚まし、包装紙を破る音が聞こえてくるようだ。
「サンタさん、最後の一軒はプレゼントを置いてきませんでしたね?」
ルドルフが不思議そうに尋ねる。私は白い髭を撫でながら答えた。
「いや、置いたとも。あれは、目には見えないが、世界で一番温かいプレゼントだったはずだ」
サンタクロースの仕事は、ただ物を届けることじゃない。 誰かを想うその気持ちを「肯定」してあげること。それこそが、私が赤い服を着続けている本当の理由なのだから。
「さあ、帰ろう。冷えた体に、温かいココアが恋しい時間だ」
空にはまだ、クリスマスの奇跡の余韻がキラキラと輝いていた。
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