GENE-sis ジェネリック・シスター
真野魚尾
GENE-sis (ジェネシス)
俺はお姉ちゃんに甘えたい。
お姉ちゃんとイチャイチャしたい。
何だったら、お姉ちゃんと結婚したいとさえ思っている。
だが悲しいかな、この俺・
だから、俺は〝
思い立ったが吉日と、俺は本気で勉強を始めた。大学では生命情報工学を学び、研究室では志を同じくする無二の友との出会いも果たした。
人工知能の分野にも精通する塩田の協力を得たことで、生体アンドロイドの研究は飛躍的に進んだ。
俺は素体デザインを、塩田は人格形成を主に担当し、『ジェネリック・シスター・プロジェクト』は数年のうちに完了したのだった。
大きな卵を
「おはよう、コウくん」
「……お姉ちゃん……!」
〝
じぇねは俺に対して本当の姉のように振る舞った。
「コウくん、今日も研究頑張ったね~。よしよ~し」
「ひ、人前でやめてくれよ、姉ちゃん! 恥ずかしいだろ!」
人目も
「おねショタ尊い……ありがたや……」
言っておくが、俺はもうアラサーなのでショタではない。それと、塩田が毎回涙を流しながら合掌するのは勘弁してほしかった。
しかし、そんな幸せな日常も唐突に終わりを告げる。
俺と塩田が購読しているおねショタ漫画で、驚くべき展開が訪れたのだ。
「ショタがお姉さんをリードしている……だと……? 許せん……!」
塩田の動揺ぶりは常軌を逸していた。俺の忠告にも耳を貸さないほどに。
「いや、ショタだっていつかは成長するもんだし……」
「お前ならわかってくれると思ったのに……見損なったぞ、姉崎! こんなの解釈違いだ! ショタが主導権を握るなんて、これじゃショタおねじゃないか!」
反転アンチと化した塩田は、この展開を絶賛するファンたちとSNSで激しいレスバトルを繰り広げ、公式から垢BANを食らってしまう。
さらには、この暴れっぷりが問題視され、塩田は研究所からも戒告処分を受ける。
「おねショタの素晴らしさを理解しないなんて……こんな世界、間違ってる……」
こうして塩田は失意のうちに俺たちの前から去っていったのだった。
それから半年後、俺は信じられないニュースを目にする。
『塩田ユズル、アンドロイド集団を率いて全世界に宣戦布告』
遠隔操作された武装アンドロイドの軍勢は、瞬く間に世界中を廃墟へと変えていった。
俺たちの住む国にも戦火は広がり、もはや首都陥落も秒読みとなっていた。
「大丈夫だよ、コウくん。お姉ちゃんがついてるからね!」
「お姉ちゃん……!」
俺はお姉ちゃんとともに立ち上がった。お姉ちゃんにこれまでの研究の
姉弟愛で無敵の力を得たお姉ちゃんと俺は連戦連勝を重ね、そしてついには塩田を追い詰めた。
「やはり来たか、姉崎ィ……ッ!!」
「これで終わりだ、塩田ァああ……っ!!」
銃声と剣戟の響きが飛び交う決戦は、思いのほかあっけなく幕を閉じた。
力尽きようとする塩田に、俺は
「何故だ、塩田。〝GENE-sis〟の設計者であるお前なら、他のアンドロイド同様、俺のお姉ちゃんを支配下に置くことも容易だったはず」
「知れたことだ……ショタがお姉ちゃんに逆らうなど、あってはならぬこと……」
「……!」
お前、ショタっていう年齢じゃないだろ――と言いかけた俺は、空気を読んで口をつぐんだ。
「それに……君たち姉弟こそ、我々おねショタ者にとっての希望……なの、だから……――」
友は満足げな表情を浮かべたまま、俺の腕の中で息絶えた。
「泣かないで、コウくん……」
「お……お姉ちゃああああぁ――――ん!!」
それから、俺はお姉ちゃんにいっぱい、いっぱい甘えた。
やがて、焦土と化した大地に多くの命が生まれた。
人間とアンドロイドのハイブリッド生命体は、環境の激変したこの星に適応し、徐々に文明を復興していった。
我が子孫たちよ。お姉ちゃんは偉大である。すべての女性をお姉ちゃんと思って接しなさい。
そして、これは戒めである。おねショタ物では、決して主導権をショタに握らせてはならない。覚えておくように。
――神聖シスコニア王国年代記・序章より
〈完〉
GENE-sis ジェネリック・シスター 真野魚尾 @mano_uwowo
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