七つの箱
閒中
七つの箱
今日はクリスマス。
僕は自宅にある大きなアドベントカレンダーの前にいた。
本当はアドベントカレンダーってクリスマスの四週間前から使うらしいけど、僕のアドベントカレンダーは大き過ぎるからクリスマスの一週間前からしか開けられないんだ。
僕はこの一週間を思い出す。
このアドベントカレンダーにあるプレゼントを一つずつ開封するのが何よりも楽しみだった。
12月19日。
最初のプレゼントを開けた。
少し小さめの箱には仔犬の剥製が入っていた。
いつか近所で見て可愛いと思っていた犬だ。
やったぁ!
12月20日。
次のプレゼントの箱を開けた。
小さな女の子の剥製が入っていた。
誰だっけ、公園で声をかけたんだっけ。
まぁ良いや、可愛いな、嬉しいな。
12月21日。
次のプレゼントの箱を開けた。
女の子より少し大きい小学生くらいの男の子の剥製が入っていた。
将来は男前になりそうな格好良い子だ。
そういえばまだ夏服のままだったから、後で着替えさせよう。
12月22日。
次のプレゼントの箱を開けた。
僕より年上のお姉さんの剥製が入っていた。
結構前に手に入れたから可哀想に、髪の毛がボサボサだ。
後でちゃんと櫛で梳かしてあげるね。
12月23日。
次のプレゼントの箱を開けた。
お姉さんと同い年くらいのお兄さんの剥製が入っていた。
僕を守ってくれそうな、大きくて優しそうな顔をしたお兄さんだ。
本当に優しかったんだ、すぐに僕について来てくれたから。
12月24日。
クリスマスイヴ。
僕はワクワクしながら次のプレゼントの箱を開けた。
誰かのお父さんの剥製が入っていた。
仕事ができて、でもきっと子どもたちには優しい。
そういうお父さんにしよう。
12月25日。
遂に今日はクリスマス。
僕は最後の箱を開けた。
そこには、僕の本当のお母さんが入っていた。
お母さんは最近剥製にしたばかりだからとっても綺麗だ。まるで生きているみたい。
僕の為にこのアドベントカレンダーを作ってくれた、優しいお母さんだ。
最後の箱に自分が入るとは思ってなかったみたいだけど。
僕はサンタさんに『家族』をお願いしたんだ。
まぁ、殆どお母さんが用意してくれたんだけど、遂に願いが叶ったんだ。
お父さん、お母さん、お兄さんにお姉さん、妹も弟も、それにペットだっている。
僕に素敵な『家族』ができた!
今日はピザもケーキもチキンもあるよ。
『家族』ができたお祝いに沢山用意したから、いっぱい食べてね。
僕は部屋を暗くしてケーキのローソクに火を灯す。
みんなのガラス玉でできた目にクリスマスツリーの明かりとローソクの火が映って、とっても綺麗だ。
みんなイスに座ったね?
じゃあ乾杯、メリークリスマス!
〈終〉
七つの箱 閒中 @_manaka_
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