共依存で狂気的な僕らには、愛に溢れたバッドエンドさえあればいい
夜桜月乃
紛れもなく幸せなのだから
私にとって生きるとは、不快感を前面に出したような題材の映画を見続けるようなものだった。
他人から不快な視線を向けられ、不快な思惑を見せられ、不快としか言いようがない接近をされるのを、逃げたい気持ちを抑圧しながら本音を隠して表向きは普通にしながら耐え続けるだけ。いつしかその行為が他人事のように感じられるようになって、私という主人公が敵を作らないように心掛けながら潰れそうになっていく様を眺めるぼくが存在していた。
私は人間不信というやつだ。恵まれた外見を持って生まれて、良くも悪くも目立っていた。恵まれた外見を有しているというのは一見すると良いことのように思えるけど、私にはオマケが付いていた。
私が持っている異能は≪共感覚的知覚≫という、精神感応やら透視やら未来予知みたいなことができるものだった。だから、わかってしまうんだ。下心や欲望、悪意といった人の嫌な部分が、遍く。私がこんな風になってしまったのも、必然のことと言えるのだろう。
そんな私の前に、寧々が現れた。
寧々は元気で明るい良い子だ。だけれど、周りとはどこか一線を引いている子だった。彼女は、可愛い女の子が好きだったんだ。
彼女はぼくに対する悪意なんてなくて、純粋にぼくのことを見てくれた。可愛い、好き、守りたい、傍に居たいっていう、真っ直ぐな思いをぼくに向けてくれた。他の男みたいに気持ち悪い目で私を見ないし、他の女みたいにアクセサリーにしようだなんて考えを持っていなかった。
彼女はぼくに対して一目惚れだよ笑って言った。ぼくには彼女を疑うなんてことはできなかった。
ぼくにとって彼女とは、接していて苦にならない希望であって、ぼくだけが彼女を満たすことができる唯一の存在なんだと理解した。
彼女にとってぼくは自分の想いを受け止めてくれる大好きな人であって、自分が守ってあげなくてはならない存在なんだと理解した。
お互いに、自分がいなければこの子は駄目になってしまうかもしれない、自分が傍にいてあげなくてはならない、いてあげたいと思っていた。そして、一緒にいなければきっと自らも滅んでしまうという自覚もあった。そんな、脅迫的観念にも近しい考えを持ってしまっていた。
ぼくもまた、彼女のことが好きになっていた。
だけどそれは彼女が私を、ぼくを安心させてくれるからだ。もしぼくにその必要がなくなってしまったら?ぼくが、私が、寧々以外にも心を許してしまったら。私は彼女のことを好きなままでいられるのだろうか。
反対に、もし彼女がぼくから離れてしまうことがあったら、耐えられるのだろうか。
いいや、ぼくには彼女が必要で、彼女にはぼくが必要なんだ。この関係は、何者にも引き裂かせてはいけない。
狂気とも言える愛で結ばれたぼくらの進む先には、共依存的なバッドエンドさえあればいい。
それがぼくらにとっての真実であり、それは紛れもなく幸せなのだから。
共依存で狂気的な僕らには、愛に溢れたバッドエンドさえあればいい 夜桜月乃 @tkn_yzkr
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