落ちこぼれ(嘘)とヒミツを抱えた少女達:百合ハーレムを目論む女の子達がわちゃわちゃするお話
青羽真
プロローグ
辺境の農村で暮らす普通の女の子「ユイ」は、15歳の健康診断で多くの魔力を有している事が判明した。そして魔術の才能を見込まれて王都にある魔術学園に編入する事になった。しかし――
「う、うーん。すみません、特に何も感じないです……」
「これでもダメなのね。はぁ、固有魔術に目覚めないと、魔術師として生きていくのは難しいわよ」
「は、はい……」
ユイは言葉を選ばずに言うと「落ちこぼれ」だった。
普通の魔術師であれば、自分だけが使える奥義「固有魔術」に目覚める。しかも学園に通う者の多くは歴史ある魔術師家系の生まれであり、凄まじく強力な固有魔術を駆使して活躍している。
しかしユイは固有魔術に目覚めておらず、またその兆候すら無い――と本人は言っている。よって彼女は貧弱な汎用魔術しか扱えず、周りとの差は開くばかりであった。
このまま固有魔術に目覚めなければ、魔術師にもなれない、他の職に就けるような技術もない、中途半端な状態になってしまう。
ユイは様々な方法で固有魔術を手に入れようと努力しているが、今のところ解決の糸口は見えていない。
◆
「うーん。今日もダメだったなあー」
ユイは残念そうに溜息を吐いた。けれど、それほど落ち込んではいなかった。なぜなら、彼女には真摯に励ましてくれる優しい友人達がいるからだ。
「お疲れさま、ユイちゃん。わっ、すごい汗! 拭いてあげるね」
「えへへ、メメちゃんありがと」
冷やしたタオルをユイに掛けたのはメメ。
瞳はラピスラズリのように綺麗な青色で、彼女の清楚で清々しい性格を表しているようだ。ユイが「綺麗だなあ」と思ってじっと見つめると、恥ずかしそうに顔を赤らめて視線を逸らした。
紺青色のロングヘアは程良くウェーブがかかっており、純真無垢で朗らかな印象を受ける。背はユイと同じくらい、つまり160 cm前後だろうか。
メメはユイにとって心の支えになっている。ユイが学園に編入して間もない頃。右も左も分からず困っていたユイにメメが声を掛けたのだ。
『あなたが編入生ね? 私はメメ、よろしくね! 貴族とか豪族とか凄そうな人が多くて萎縮しちゃうかもだけど、一緒に乗り越えようね!』
メメも辺境で生まれた普通の女の子であり、だからユイの不安に共感できたのだろうか。それ以降、二人はとても仲良くなった。
「じゃ~ん! 運動後に飲むと良い栄養ドリンクを作ったの! どうぞ~」
「ありがと、いただくね。わあっ、これすっごく美味しいよ!」
自作栄養ドリンクを渡したのはカナ。
背は168 cmとユイよりも高身長で、大人びた印象を受ける。髪型は肩に触れるくらいのセミロングで、彼女の魅力をぐっと引き立てている。第一印象は「頼りがいのあるお姉さん」という感じ。
しかし、カナの振る舞いや話し方はどこか幼さを含んでいる。様々な事に興味を持って取り組む様子は、まるで好奇心旺盛な子供のよう。「お茶目なお姉ちゃん」と表現するのが良いだろうか。
特にポーションの研究開発を得意としており、「ポーションの申し子」という二つ名で呼ばれている。
「お口にあったようで良かった~♪」
「さすが『ポーションの申し子』だね!」
「えへへ、ありがと♪ メメちゃんも飲む?」
「ぜひ! うんっ、美味しい!」
三人で仲良く話していると、「なにしてるのー?!」という元気な声が迫ってきた。
たたたっと駆け寄ってきた少女はソラ。笑顔が良く似合う可愛らしい小柄な女の子だ。くりくりしたおめめ、もっちもちのほっぺ、しっぽのようなポニーテール。まるで子犬のような愛らしさがある。
そんな彼女は独特な衣装を身に着けていた。純白のフリル、桃色のレース、赤色のリボン、瞬く星をモチーフにしたスパンコール。華やかで可愛らしい衣装で着飾った彼女は、まるでアイドルのように輝いていた。
一見すると学園には似つかわしくない見た目だが、これが彼女にとっての正装である。彼女は「魔法少女」と呼ばれている傭兵団に所属しており、アイドル衣装が彼女たちの制服なのである。
特に彼女は多くのミッションで活躍しており、「正義の魔法少女」という二つ名で呼ばれている。
「あっ、ソラちゃん! わわわっ」
「ふぎゅー!」
元気いっぱいで人懐っこい彼女は、飛び込むようにユイに抱き着いた。
ユイに抱き着いたソラは、まるでワンちゃんのようにほっぺをスリスリしてユイに甘えた。
「えへへ。もうっ、ソラちゃんったら」
「ソラちゃん、こっちにおいでー。冷たいタオルだよ」
「ふにゅー。ねえねえカナちゃん、そのジュース、ソラも飲みたい!」
「もちろんだよ~。どうぞ」
「ありがとう!」
そうこうしていると、「ソラさ~ん! はあ、はあ、はあ。待って下さい~!」と疲れてそうな声が。
へなへなと近づいてきた女の子はリース。外見も内面も衣装も固有魔術も「聖女」としか言いようがない、美しく魅力的な少女だ。
琥珀色の綺麗な瞳は、彼女が見た全てを祝福しているようにさえ思える。それは彼女の優しき心を表現しているのだろうか。
腰くらいまで届く長い髪は、高級な絹糸のようにスベスベで銀色に輝いて見える。それは彼女の清らかで美しい性格を体現しているようである。
「今日もソラの子守り?」「リースちゃん大丈夫?」「お疲れ様~」
「ソラは子供じゃないよ?! 同級生、同級生!」
「大丈夫……です。いえ、正直ヘトヘトなので、休ませてください……」
隠せない程に疲労困憊だったリースは、ユイとソラを抱きしめるようにもたれかかった。
「「っ!」」
リースに抱き着かれたユイとソラはびくりと体を震わせた。む、む、胸が当たってる……!
リースの胸の大きさは5人の中でダントツでトップ。ぷるんぷるんで、ぽよんぽよんだ。モッチモチな双丘の感触を字義通り肌で感じたユイとソラは、顔を真っ赤にした。
個性豊かな友人達、だがみんなに共通する事がある。
それはユイを心の底から大切に思っているという事。
固有魔術を使えない落ちこぼれ。それでも仲間たちに支えられながら、ユイは楽しく学園生活を送っている。
◆
しかし、友人達には狙いがあった。
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