それでも、彼女は祈った
氷華雪碧
第1話、懺悔
「聖女セラフィナ様、私は許されない罪を犯しました。」
夜の神殿は、懺悔する私の声が響くほど静かでした。
私はセラフィナ様の前に跪いたまま、額を石に触れさせていました。
言葉にすれば壊れてしまいそうで、でも話さなければならないことは自分自身が一番よく分かっています。
「エリシア、私に話を聞かせてくれますか?」
穏やかで優しい声。
当代の聖女、セラフィナ様はどんな罪人のためにもその方が救われるように祈られる、慈悲そのものと言われていらっしゃる方。
私は自分が犯した罪を、理由も言い訳も添えずに告げることにしました。
救えたはずの命を救えなかったのではなく、救わなかったことを。
告白が終わっても、セラフィナ様は私を咎めませんでした。
沈黙の中で、ただ一度、私だけのために静かに祈りを捧げて下さいました。
祈りが終わり、また少しお話を聞いていただいてからセラフィナ様は私におっしゃいました。
「それでも――あなたは、祈りたいのですね。」
それは私の罪に対する裁きでは勿論ありません。
私の意思の確認です。
ですが私にとっては別の意味をもっていました。
「はい」
私は俯いたまま、けれど迷いなく答えました。
その瞬間でした、全てが始まったのは。
それでも、彼女は祈った 氷華雪碧 @nikomalu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。それでも、彼女は祈ったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。